コラム/インタビュー

アスリートメッセージ

アスリートメッセージ スケート・フィギュアスケート 安藤美姫



「シンプルに考えたい」迷いのない気持ち

安藤とモロゾフコーチにとって、オリンピックシーズンは、計画通り訪れた。長期目標である表現力を前年までに磨き、あとはジャンプの調整のみという、自分に負担がかからない状況を作り上げてきたのだ。

そして選んだ曲は、ショートが「レクイエム」、フリーはクレオパトラを演じるという「ROME」。どちらも意味のある選択だった。


ショートプログラムは、天に捧げるミサの曲「レクイエム」。全身でその世界を表現する
写真提供:アフロスポーツ

photo
「クレオパトラ」を演じるフリー。きらびやかな衣装が、安藤選手とクレオパトラをよりシンクロさせる
写真提供:フォート・キシモト

photo
本番のリンクでの練習。ショートプログラムは日本時間24日、フリーは26日に行われる
写真提供:フォート・キシモト

「レクイエムはニコライが持ってきた曲です。天に捧げるミサの曲。私はクリスチャンじゃないし無理かとも考えましたが、私の父のことに触れて、そしてコーチ自身もお父様を亡くされているので、そのことを話してくれて、『この曲は美姫なら表現できる』と言ってくれました。だからやってみようという気持ちになれたんです」。安藤のレクイエムは、必死に何かを追い求めるような情感あふれるレクイエムに仕上がった。その切ない表情と、あふれる情熱が見るものの心を掴む。

一方、フリーは妖艶なクレオパトラ。これはモロゾフが「男の私だけで振り付ける限界を超えたい」と、ショーの女性振付師リー・アン・ミラーに依頼。共作で仕上げた。安藤も「クレオパトラという女性のいろいろな面を表現したい」と心を震わす。

残る課題はジャンプのみ。オリンピック選考会も兼ねる前半戦は、まずオリンピック出場をいち早く決めるため、安定的に得点を出す作戦となった。そのため3回転+3回転ジャンプは、「もし1本目のジャンプの着地が微妙だった場合は、後半を2回転に切り替えて確実にクリーンに降りる」という安全策の練習を重ねる。結果として、オリンピック代表の内定をとったものの、グランプリシリーズ3戦、全日本選手権のすべてで、3回転+2回転のジャンプになってしまった。

「前半はそういう練習をしていたので気にしていません。むしろ音楽を聴きながら表現することに徹していて、それが出来たから。でもオリンピックに向けては、1本目がどんな降り方で、どんな体勢になっても、2本目に3回転をつける練習をしています。オリンピックは入れていかないと勝てないから」

韓国のキム・ヨナはほぼ確実に入れている「3+3」だが、海外勢もオリンピックまでには調子を上げてくる可能性が高い。安藤の武器は、3回転ルッツ+3回転ループと、ダブルアクセル+3回転トウループの2種類がある。両方が決まれば、ヨナと同等、他の選手からは一歩抜けることができるのだ。

すべては計画通り準備してきた。だからこそ、焦りはない。オリンピック直前は、アメリカで練習後、カナダのトロントで調整。他の女子選手より一足早い、2月14日にバンクーバー入りした。

「4年間トリノの悔しさを忘れずにやってきました。支えてくれる人たちの気持ちを音楽に乗せて、曲を感じて楽しく滑れたら、そこに自分の成長もあると思うんです。Just do it! シンプルに考えて楽しみたいですね」

悩んだ末に行き着いたのは、シンプルに考えること。すがすがしい笑顔で、バンクーバーの少し冷えた夜の空気を吸い込んだ。

インタビュー風景
安藤選手からのビデオメッセージ!!
ビデオメッセージへ

 

安藤美姫(あんどう みき)/スケート・フィギュアスケート

1987年12月18日生まれ。愛知県出身。トヨタ自動車(株)所属。
8歳からスケートを始め、2002年12月のジュニアグランプリファイナルで女子選手初の4回転ジャンプを成功。翌年の全日本選手権でも成功させ、初優勝を果たす。2006年トリノ冬季オリンピックでは15位に終わるも、2007年世界選手権で優勝。2007-2008、2008-2009シーズンは各大会で優勝はなかったが、オリンピックシーズンの今季はグランプリシリーズ第2戦ロシア杯と第4戦NHK杯で優勝。グランプリファイナルでは銀メダルを獲得した。バンクーバー冬季オリンピック、日本時間24日に行われるショートプログラムでは最終滑走の30番目に登場予定。



アスリートメッセージ一覧へ




ページトップへ