コラム/インタビュー

アスリートメッセージ

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レスリングは必ずしも力が強い奴が勝つわけではない。

3歳からレスリングを始めた笹本だが、最初はさほど熱中するわけでもなかった。父親の同僚がレスリングの木口道場を開いていたのが縁で、連れて行かれたのだ。その頃の印象はコーチが怖かったことと練習がきつかったことだ。両親も「練習へいけ」と口うるさく言わないため、楽しむ程度で続けていただけ。小学校の高学年から中3までは途中で辞めてさえいた。

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インタビュー風景。取材は日本体育大学の練習場で行われた。

「中学は野球をやってたけど、弱いチームだったから早々と負けて暇になったんです。その時丁度、弟が木口に通ってたから『俺も一緒に行こうかな』という感じで再開したんです。逆にそれが良かったと思うんです。強制されなかったからけっこう楽しくやれて」

進学した高校は神奈川県の強豪・向上高校だった。練習は厳しかったが、嫌になることはなかった。それ以来レスリング漬けの生活になり、学校の練習が休みの日には木口道場へ通うほど熱中した。
「試合は負けてましたよ。でも、最初はムチャクチャにやられた人に、練習をして少しずつ追いついてが行けるのが嬉しくて…。その人には結局、高校時代には勝てなかったけど、やってれば結果は良くなっていくかな、って言うのがあったから。本当に僕は人に恵まれているんですよ。これまで嫌になった人はいませんから」

優勝したいとか、タイトルを獲りたいというのではなく、身近なライバルに勝ちたいという思い。それが笹本を駆り立てていたのだ。

彼がグレコローマンを選んだのは先輩からの一言だった。高校時代から肩を亜脱臼して外れやすくなっていたため、肩回りの筋肉を付けようとしていた時に、グレコをやった方が筋肉がつくのではとアドバイスされたのだ。そのうち、リハビリの為に始めたグレコが面白く思えてきたのだ。

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練習風景。後輩と組み合う。

「フリースタイルは脚を引っかけたりとか、攻撃パターンが一杯あるんです。でもグレコは上半身しか触れないという制約があるからポイントを取るのが難しい。そこをどうやればいいのかというのを考えるようになってからは楽しさが倍増しましたね。技とかタイミングをいろいろ考えて、それが掛かれば嬉しいし」

全身を攻撃できるフリースタイルは、闘争本能だけで戦える面もある。しかし下半身を触ってはいけないという制約があるグレコローマンは、野生になって戦いながらもどこかで理性を保っていなければいけない種目でもある。地味ではあるが、奥は深い。

「レスリングはすごい力があっても技術でやられてしまったりと、必ずしも力が強い奴が勝つわけでもないんです。だから、形はないと思うんですね。世界チャンピオンになったとしても、チャンピオンのレスリングが必ずしも強いというわけじゃないですから。そう考えたらいろいろできて…。これって言う形がないことが、レスリングの魅力じゃないですかね。僕は大学でグレコを始めたけど、その時と比べると今のレスリングは全然違うと思いますよ。いろいろやって少しずつ変わってるんで、シドニーやアテネの時とも変わってきてるはずですね」


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