コラム/インタビュー

アスリートメッセージ

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それぞれの種目を追求し、総合力を競う近代五種の面白さが
改めてわかるようになってきた。

競技の特性上、使う筋肉は種目ごとに違う。射撃は静止することが必要な競技であり、フェンシングは身体を半身に構えて戦う。水泳と陸上は全身運動だが、重力のかかり具合も使い方も違う。馬術では自分の身体のバランスをとりながら、なおかつ馬をコントロールしなくてはいけない。すべてを満遍なくこなせるようになるには、時間も努力も必要だ。

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「5種目に味をしめ、1種目だと物足りなく感じるようになった」

「2002年はアジア競技大会に出たけど、あの頃は近代五種がなんたるかもわかってなかったですね。あの時は本当に『アッ、連れていってもらえたんだ』みたいな感覚でしたから。2004年のアジア選手権では6位でオリンピック出場権を獲得できなかったけど、その時もこの競技に対する気持ちはまだまだだったんでしょうね。最後のランニングが2位スタートだったけど、後ろの選手に2000mを超えてから逆転され、そこからガタガタになってしまいましたから。やっぱりオリンピックへいきたいという気持ちはあったけど、実際に出ることができても戦えなかったでしょうね。多分自信がなかったというか、そこまでのレベルじゃなかったし、近代五種という競技の魅力も知らなかったと思うんです」

だが、その時の悔しさだけは心の中に染みついた。そんな思いが結果として結実したのが、昨年12月の全日本選手権で斎藤英之(警視庁)の4連覇を阻んで初制覇したことだ。それまでも他の大会では何度か優勝はしていたが、「こうすれば勝てる」というものが半信半疑の状態だった。だが、コンディションをキッチリと整えて臨んだ全日本の優勝は自信となり、試合へ向けての気持ちの持っていき方も明確に見えるようになった。それとともに、それぞれの特性を持つ種目を追求し、その総合力を競い合う近代五種の面白さも、改めてわかるようになってきた。

「近代五種は、1種目でトップに立ったからといって優勝できるわけじゃないんです。その後ズルズル行けばダメだし、逆に最初がどん尻からのスタートでも、最後のランニングでトップでゴールすれば優勝なんですね。順位の変動が激しい競技だからこそ面白いんです。だから今は、水泳でオリンピックへ出場できたら、という思いはないですね。5種類の競技をやる特性というか、それに味をしめちゃうと、1種目だけじゃ物足りないような気持ちになってしまって。逆に1種目だけを追求しろと言われたら、萎えちゃいそうな気がするんです。その点でも、近代五種を選んだことに後悔はないですね」

複数の種目をやり遂げる満足感。その感覚は、総合競技が持つ特殊なものかもしれない。

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2007年5月、近代五種のアジア・オセアニア選手権での馬術競技
(写真提供:アフロスポーツ)

16年ぶりのオリンピック出場権を獲得したことで、村上は背中に背負うものが今までと違ってきた気がするという。日の丸を背負うという意識が強くなってきた。出るからには入賞したい、入賞するならメダルを獲りたい、という思いが強くなってきた。

「決して高望みではなく、自分が持っている実力を5種目全部で出し切れば、決してメダルが獲れないことはないと思うんです。世界へ行けばメダル圏内は5600〜5700点。最低でも5500点は超えなければいけないと思うんです。アジア・オセアニア選手権では僕は5460点だったけど、馬術を最低でも満点にすればそれだけでも170点多くなりますからね。後は陸上を、死ぬ気で走るだけだと思うんです。今は種目ごとに課題はいくつかあるけど、それを修正して、本当に細かい所まで仕上げていって、完璧な状態で北京へ臨みたいですね」

オリンピックは様々な競技の存在を多くの人に知ってもらえるチャンスでもある。現在は自衛隊と警視庁でしかやってない近代五種の面白さを伝えて、多くの人にトライしてもらえるようにするためにも、村上は北京で結果を出したいと思うのだ。それはこの競技で日の丸を背負うものが果すべき務めだと。

(2007.9.28)


インタビュー風景
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村上佳宏(むらかみ よしひろ)

1976年11月28日静岡県生まれ。30歳。静岡市出身、自衛隊体育学校所属。
2006年全日本選手権優勝。 2007年アジア・オセアニア選手権で5位(5460点)、北京オリンピック出場権を獲得、規定により代表に内定。
近代五種競技への日本選手の出場は、バルセロナ大会以来16年ぶりとなる。



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