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アスリートメッセージ

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駆け引きはフルーレ最大の魅力

2005年3月6日、中国・上海で行われたフェンシングのワールドカップ中国大会で、菅原智恵子選手が強豪国イタリアのイラリア・サルバトーリ選手に15対6で勝利し、日本の女子選手で初めてワールドカップ優勝を果たした。

菅原選手は昨年のアテネオリンピックの日本代表選手としても戦ったが、トーナメントの2回戦でイタリアの選手に敗れた。
その時の気持ちを、今では「あっさりというか、あっけなくやられてしまった」と振り返る。

ここで少しフェンシングについて、菅原選手のコメントを交えて紹介しよう。
中世ヨーロッパの騎士道に端を発するというフェンシングには、フルーレ、エペ、サーブルの3種目があり、種目によって使用する剣の形や得点となる有効面がそれぞれ異なる。

フルーレの剣の特徴はグリップで、手と指をしっかり固定できるように複雑な形をしている。
フルーレでは、首と手足を除く胴体部分に突きが命中した場合に得点となるが、フルーレの醍醐味は、むしろ攻撃する権利(攻撃権=先に攻撃した方が優先権を持つこと)のやり取りにあると菅原選手。
「フルーレの場合は、自分が権利を持っていないと相手に命中しても得点になりません。まずは権利を自分のものにするために、ワナを仕掛けて相手を陥れます。自分が仕掛けたワナに相手がまんまと落ちてくれた時は嬉しいし、反対に相手のワナにはまった時は悔しいです。この駆け引きがフルーレの魅力だと思います」

エペは頭から足まですべての面が有効命中面。剣は長く、剣を持つ手も有効面であることから鍔(ガルド)は手を被うように大きく丸い形をしている。権利のやりとりはなく「とにかく早く突くこと」が得点となる。

サーブルは「突く」だけではなく「切る」も有効とされる。有効面は頭や腕を含む上半身。相手の有効面を剣先、剣身または刃で触れることで得点され、フルーレ同様に攻撃権の設定がある。
「サーブルは最もスピーディーな種目で、一瞬で勝負が決ります。フルーレ同様権利のやりとりがあるのですが、私が見ていても、早すぎてどっちが勝ったのか分からないくらいです」と菅原選手。

フェンシングの剣の先は平らなスイッチになっていて、相手を突くと赤か緑のランプが点灯する。また無効の場合は白のランプになる。選手の背中から出ているコードは剣先のスイッチの信号を電気審判器に伝えるためのもの。ワールドカップではサーブルで2000年からベスト32以上の選手は決勝まで電波を利用するコードレス審判器を使用しているが、オリンピックでも2004年のアテネ大会ではサーブルがコードレス、フルーレとエペは従来のコード付きの審判器が使用された。

フェンシングの1試合は実動3分間。敏捷性がものをいうスポーツだ。勝負に集中する選手の頭部を保護するマスクを取った瞬間、汗がとめどもなく流れ落ちる。
「試合ではスキを見せないようにします。見せたら負けですから。フェンシングは構える姿勢が中腰で、足を使うスポーツですから、前足は太くなりますね(笑)」

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