コラム/インタビュー

アスリートメッセージ

スケート・スピードスケート 長島圭一郎



伸び悩んだ1本目、焦らず自分の滑り求めた2本目

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2010年バンクーバー冬季オリンピック500m、1本目は6位と出遅れる
写真提供:アフロスポーツ

2010年2月15日、バンクーバー冬季オリンピック、スピードスケート男子500mを迎える。会場の「リッチモンド・オリンピック・オーバル」は、バンクーバー市の中心街から電車で約30分の川沿いに建てられていた。

会場には日本をはじめ、各国の応援団が詰め寄せていた。さまざまな声援が飛び交う中、1回目の出番。張りつめた表情で、スタートの位置につく。電子ピストルの音が鳴り、スタートする。同走のイ・ギヒョク選手(韓国)は、ワールドカップでも複数回優勝している実力者で、金メダル候補の一人だ。そのイ選手に先着する。だが、タイムは35秒108と伸び悩んだ。

実は製氷機の故障で、予定されていた時刻から、スタート時間は遅れに遅れていた。レース直後に、長島はこう振り返っている。

「アップが不足していました。ちょっと休みすぎましたね」

思わぬトラブルが、影響を及ぼしていたのだ。結果、1本目は、6位にとどまる。首位に立ったのは、フィンランドのミカ・ポウタラで34秒863。2位に加藤選手が続いていた。

迎えた2本目。1本目は納得のいく滑りではなく、いつもの力を出せていない。それでも、焦りはなかった。

「4年間、この日のためにやってきたんだ。実力もつけて、試合で勝ち方も少しは学んだ。ただいつも通り、自分の滑りさえすればいい」

同走は地元カナダのジャミー・グレッグ。ひときわ歓声が大きくなって、スタート。最初の100mで、グレッグ選手の前に出る。電光掲示板に表示されるタイムに、今度は日本応援団から歓声が湧いた。1本目を上回るペースだ。ゴールすると、タイムは34秒875。2本の合計タイムは69秒98で、この時点でトップに躍り出た。

長島選手は、自らの滑りに満足したかのように、両手を突き上げ、ガッツポーズで喜びをあらわにした。その2つ後の組、モ・テボン(韓国)に抜かれると、2位。残すは最終組のポウタラと加藤となった。2人のレースが始まるのを、リンクで見守る。1本目と違い、両者のスピードは上がらない。先着した加藤のタイムは、35秒076で合計70秒01、ポウタラは35秒181の合計70秒044。

そのとき、長島の銀メダルが確定した。

銀メダル、笑顔の内心は「こんなものか」

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500m、2本目を終えて氷上に転がると、点に向かってガッツポーズ。次の選手にプレッシャーをかけようと思ったという
写真提供:アフロスポーツ


日の丸を渡されると、場内をまわり、観客席に手を振った。どこまでも、うれしそうだった。だが、実は内心は、表から見える姿とは異なっていた。

「こんなもんか」

そんな心境だったという。

「試合の前までは、メダルを手にしたら、どんなに気分がいいんだろうと想像していたんですよ。でも、実際にメダルを取ってみても、そんなことは無かった。大したことが無かった。だから、こんなもんか、と」

長島は、「バンクーバーでは金メダルを取る」と目標を掲げていた。その目標とは少し違ったからだろうか。

「それもあると思います。でも、よくは分からないです。そういう原因もあるとは思いますが」

はた目には会心のレースに見えた2本目も、ミスは少なくなかったと振り返る。

「スタートは普通でした。いつも、あんなもんです。良くもなく悪くもなく。それよりも、カーブであんなに膨らんだのが……。初めてですよ。うまく言っていれば、あとゼロコンマ何秒かは速かったでしょうね」

だから、2本目のゴール直後のガッツポーズもまた、喜びからではなかった。

「次に滑る選手たちにプレッシャーをかけようと思ってやりました。うまい具合に潰れてくれましたね」


悲願のメダルを胸に、内心は「こんなもんか」という気持ちも交叉していた
写真提供:アフロスポーツ

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