コラム/インタビュー

アスリートメッセージ

石井選手には大きな出会いがいくつもある。まずは清風高校OBで講道館杯全日本体重別柔道選手権81kg級優勝など、数々の国際大会で優勝経験のある秋山成勲選手。そしてバルセロナオリンピック95kg超級銀メダリストの小川直也選手だ。
「秋山先輩には技を教えていただいたことはないのですが、柔道に対する気持ち、心構えなどを教わりました。とにかくどんな練習でも全力を注げ。10本練習するとしたら、10本全部できるようなペース配分ではなく、4本でバテてもいいから1本に100%の力を出せと。それが今も自分の柔道の中で生きています。
小川選手とは明治大学の出稽古で一緒に練習した時に『自分の柔道と似ている』と声をかけてもらったことがあって。柔道現役時代の小川選手のビデオを見ていると確かにそうだと思いました。自分には瞬発力はないけれども、スタミナのある小川選手のような柔道を目指そうと思いました」

そして石井選手にとって何より尊敬し、頼りにしているのが国士舘の先輩、斉藤制剛選手(旭化成)である。
「制剛先輩は自分が調子の悪い時、毎日声をかけてくれたり、ご飯に連れて行ってくれました。大学1年生の時は試合でも勝てず辛い時期でしたが、試合前にも自分の部屋に泊まりに来てくれたりしていたんですよ。制剛先輩がいたからどんなに辛くても乗り切れたのだと思いますし、9歳も年上の人と関われたことで、精神的に大人になれた気がします」

石井選手は19歳とは信じられないほどしっかりとした考えを持っている。その理由のひとつとして彼がかなりの読書家だということが考えられる。連日練習で忙しい中、電車通学の40分を使って歴史小説からアスリートが書いたエッセイまで幅広く読むそうだ。中でも他競技のアスリートが書いた本には参考になることがたくさんあるという。
「イチロー選手の『夢をつかむイチローの262のメッセージ』(ぴあ)を読んでいてハッとさせられることがありました。普段うまく行っている人が急にうまく行かなくなったら人は精神的にアカンかったのか、疲れがたまっているからだと思いがちです。でもイチロー選手は技術がだめだったからだと書いていたんです。これはシビアに響きました」

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全日本柔道選手権より
(写真提供:アフロスポーツ)

戦国武将が好きで、上杉謙信が深く信仰した毘沙門天の文字を自らの帯に入れている。
「武将たちには今にないかっこよさがあります」 という石井選手は一見古風な日本男児を思わせるが、聴く音楽はレゲエとイマドキの青年。
「特にKEN-U(東京を中心に全国で活躍する日本人シンガー)が好きです。全日本の前にも聴いていました。ウォーミングアップの時に聴くと燃えてきます」 また真っ白な道着にもこんなこだわりがある。
「道着の洗濯は自分でします。地べたに置かないし、きれいにたたみます。きれいな胴着で練習しないと身につかないと思うので」
体調管理もしっかりと行い、自炊する時も栄養を考えて調理するという。すでに石井選手は一流のアスリートとして申し分ないほどの実力と精神力を持ち合わせている。

全日本選手権優勝で少しずつ見え始めたオリンピック出場の夢。
「これからひとつひとつ勝っていくことで、それが目標へと変わって行くと思います」 おごることなく、強くなるためには練習を重ねるのみ。 石井選手に柔道の真髄を見た。

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写真提供:アフロスポーツ
石井慧(いしい さとし)

1986年12月19日生まれ、181cm、105kg。
柔道3段 大阪府出身 国士舘大学2年生 
2004年世界ジュニア柔道選手権大会-100kg級優勝、2004年〜2005年講道館杯全日本体重別選手権大会-100kg級優勝、2006年全日本柔道選手権大会優勝 2006年9月にフランスで行われるワールドカップ(国別団体戦)に出場予定。


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