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第28回オリンピック競技大会(2004/アテネ)

スペシャルコラム

気持ちの切り替え、そして人間の大きさ

沢松奈生子さん

野球の日本代表チームが銅メダルを獲得した。準決勝でまさかの敗北を喫してから1日しか経っていないとは思えないほど見事な勝利だったと思う。テレビの解説では前阪神タイガース監督の星野仙一さんが「今回のオリンピックほど気持ちの切り替えが大切だと感じた事はない。選手やスタッフはもちろん、我々応援する側も一緒になって頭の中を銅メダル獲得に向けて切り替えていかなければいけないんだ。」とおっしゃっていたが、私もまさに同感であった。確かに期待を裏切られた悔しさからなかなか立ち直れていなかった日本列島だったが、3位決定戦のフィールドに立った選手のやる気が漲った表情を見てテレビの前で「そうだ!応援する方こそ早くに気持ちを切り替えないといけない」と感じた方も多かったのではないだろうか。応援するサポーターの気持ちはそのまま選手に伝わるもの。本当は周囲が先に気持ちを切り替えなければいけないところを、フィールドにいるナインから逆に切り替えることを教えられたような気持ちだった。
オリンピック全体を振り返ってみても、金メダルを獲得した選手に対する評価が高いのは当たり前。それだけの実績を残したことはアスリートとして最大級の賞賛を受けるに値すると思うが、アテネではアスリートとしての評価以上に人としての大きさを感じさせてくれた選手が特に印象に残っている。中でも「金メダルしか考えていない」と公言していたレスリングの浜口選手が、準決勝で敗れた後も、最もショックを受けているはずの当人がキリッと気持ちを切り替えて銅メダルに向けて力を尽くす姿には頭が下がった。
柔道の井上選手も「金メダル確実」と言われていながらメダルを逸し、普通のアスリートなら人前に出るのすら嫌になる状況の中で、様々な会場を他競技の応援で歩きまわっている姿は、日本選手団の主将としての責任とはいえ、とても立派な態度だと思った。金メダリストと同じくらい、いやそれ以上に人間としての大きさを感じることができた。
負けること、自分のプレーが出来ないこと、これがアスリートにとってどれほど辛いことかは言葉では言い尽くせない。しかもそれが4年に1回のオリンピックの舞台であれば尚更である。しかし、人としての一生という長いスパンで考えるとアスリートとして一喜一憂している昨日の敗戦や今日の勝利は人生のほんの一コマに過ぎないことであり、だからこそアスリートとしての悔しさを内側できっちりと解決し、頭の中をきちんと切り替え、次への道のりを歩き出すことの大切さ、つまり負けたときこそ一人の人間としていかに行動するかがその人の度量を示しているのだと思う。
人は失敗や敗戦から多くのことを学ぶのだと言うことを、野球日本代表チームから学んだ1日だった。

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