大会

第20回オリンピック競技大会(2006/トリノ)

スケート・フィギュアスケート

見どころ

監督 吉岡伸彦

男女シングルの競技は、ショートプログラム(SP)とフリースケーティングの2つの競技部分からなっています。

SPの滑走順は出場する選手全員の自由抽選によって決定され、フリーの滑走順はSPの成績により、上位に入った選手がより後半に滑るよう6人ずつグループ分けした上で抽選されます。このため、SPを終わった時点で、フリーを最終グループで滑る上位の6名に入っていることがメダル獲得のためには重要な要件となってきます。

SPは、ジャンプ3つ、スピン3つ、ステップ2つの8つの必須要素からなり、滑走時間は男女とも2分50秒以内。フリーの滑走時間は男子4分30秒、女子が4分で、±10秒の幅が認められています。

ソルトレークシティシーズン以降、こうしたフィギュア・スケート競技の基本内容に大きな変化はありません。大きく変わったのは先シーズンより本格的に新しいシステムが導入された、採点方法です。

従来までは技術点、芸術点ともに6.0点満点、6点からの減点法、同じ試合に出場した選手との比較となる相対評価で採点されていたシステムが、現在では、ジャンプやスピン、ステップといったエレメント(要素)をひとつひとつを細かく採点し、その合計点を出す総要素点(Technical Elements Score=TES)と、「スケート技術」「要素のつなぎ」「演技力」「振り付け」「音楽の表現」の5項目を各10点満点で採点する総構成点(Program Components Score=PCS)の合計得点(TES+PCS)で競うシステムへと移行されました。

この新しいシステムのもとで競技が行われることにより、選手たちの演技にも少しずつ変化が見られるのは興味深い点です。
まず男子の4回転ジャンプや女子の3回転-3回転のコンビネーションなど、ジャンプの大技に挑みにくくなったこと。審判団に新たに加わったテクニカル・スペシャリストにより、ジャンプの回転数は厳しくチェックされ、わずか1/4回転でも不足したり転倒したりすることで大幅な減点を受けてしまうためです。

一方で、スピン、ステップ、スパイラルといったジャンプ以外の要素は、大きく進歩したといえます。ひとつひとつがジャンプ同様細かく採点されるため、多くの選手がこれまでそれほど重視しなかった要素にも目をむけ、練習を積むようになったためです。スピンでもスパイラルでも様々なポジション変化が見られ、新しい技に挑戦する選手も増えるなど、全体のレベルが上がってきている点にぜひ注目してください。

さらにこれまでの順位点方式から総合得点を競う形となったことで、SPで低い順位につけてもフリーで挽回できるという勝負の面白さも加わりました。例えばソルトレークシティー冬季オリンピックの男子シングルでは、優勝候補だったエフゲニー・プルシェンコがショートプログラムで4回転ジャンプで転倒し、4位に。この時点で彼の自力優勝の可能性はなくなりましたが、現在のシステム下ではフリーの演技次第で逆転も可能となるのです。

ジャンプは、踏切の方法でトゥ・ループ、サルコウ、ループ、フリップ、ルッツ、アクセルの6種類に分類され、難易度もこの順に高くなります。また、回転数が多いほど難しくなります。

スピンには、アップライト、シット、キャメルの3つの基本姿勢があり、ジャンプで開始するもの、足を換えるもの、姿勢を変えるもの等のバリエーションがあります。ステップ・シークェンスには、主方向による分類で、ストレート・ライン、サーキュラー、サーペンタインの3種類があります。

日本代表選手

フィギュア・スケートの日本代表チームは、ソルトレークシティー冬季オリンピックから4年間で大きな成長を遂げることができました。
まず女子シングルは長野とソルトレークシティーに出場した世代を中心に、その下の若いシニア、さらに下のジュニア世代も含め、国際大会に出場すれば必ず上位に食い込める、表彰台に上れる、といえるほどの実力をつけてきました。それもひとりふたりの選手ではなく、複数の選手が常に上位争いをするという層の厚さも、この4年間で世界中のフィギュアスケートファンが知るところとなりました。

その結果、前回より1枠増えた出場枠3を、5人の有力選手が競い合う形に。国内での壮絶な代表争いにシーズン前半は多くの注目が集まりましたが、その激戦の中から選ばれたオリンピック代表が荒川静香選手・村主章枝選手・安藤美姫選手です。

長野冬季オリンピック出場以来、8年ぶりのオリンピックとなる荒川選手は、ジャンプ、スケーティング、スピンやスパイラルなど各要素、表現技術などすべてにおいて世界トップレベルの実力を持つ選手に成長。2004年の世界選手権では優勝し、前世界チャンピオンという肩書きも携えてオリンピックの舞台に戻ってきました。昨シーズン後半から今シーズン前半にかけては、世界選手権9位、グランプリファイナル出場ならず、とやや調子を落としていましたが、そのなかでもハイスコアは常にキープ。昨年末の全日本選手権では本来のスケールの大きな滑りを取り戻し、久しぶりの大舞台に向け、着々と身心のコンディションを調整しつつあります。


荒川静香選手

ソルトレークシティーに続き2度目の出場となる村主選手は、荒川選手よりひとつ年上の25歳。良きライバルとして競ってきたふたりですが、荒川選手や同年輩の恩田美栄選手らよりやや劣る体力面をカバーするべく、表現面に力を入れ、独自の演技スタイルを手に入れてきました。ソルトレークシティー冬季オリンピックで5位に入賞したことをきっかけに、その叙情的な演技は世界中で多くのファンを獲得。成績の上でも2002年、2003年の世界選手権で連続して銅メダルを得、世界が認めるトップスケーターのひとりとして2度目のオリンピックを迎えます。


村主章枝選手

女子3人目は初出場となる安藤選手。飛び抜けて高いジャンプの才能を武器に2004年の世界ジュニアを制した新鋭です。世界で初めて4回転ジャンプに成功した女子選手としても知られており、多くの話題を集めたが、スケーティングや表現面などを含めた総合評価では、まだまだ荒川選手・村主選手に一歩譲ることとなるでしょう。しかし若さの勢いが爆発し、ここ2シーズン試合では見せていない4回転ジャンプの成功があれば、一発逆転も可能な位置につけていることも否定できません。


安藤美姫選手

グルノーブル冬季オリンピック以来38年ぶりとなる3選手の派遣。しかも実力・評価とも世界的に高い史上最強の3人を送り出すこととなった女子シングル。あとは各選手のコンディション、精神面を充実させ、可能ならば複数の選手が表彰台に上れるよう、チーム全体でバックアップをしていきます。

一方で男子シングルも、女子の後を追うように多くの選手が実力をつけつつあります。今シーズンのグランプリファイナルには史上最多となる2名の選手が進出し、これまでにない男子シングル飛躍のシーズンとなりました。しかし残念なことに、オリンピックへの出場枠は1。織田信成選手、本田武史選手らとの争いを経て一枚の切符を掴んだのが、世界ジュニアチャンピオンの経験もある橋大輔です。

世界のトップ選手には必須の4回転ジャンプを跳べるだけでなく、躍動的なステップワークや美しいスケーティングへの評価も高く、今シーズンのスケートアメリカでは優勝。これまでは精神的な脆さが課題となり伸び悩んできた選手ですが、国内の代表争いを戦い抜くべく、今シーズンオフより奮起。橋選手もまた、実力を最大限に発揮すればメダル圏内も夢ではないところまで来ています。


橋大輔選手

期待の集まる男女シングルに加え、今大会はアイスダンスにもぜひご注目ください。渡辺心・木戸章之組は、チームを結成して11年という、世界的に見ても長いキャリアを誇るベテラン。これまでは国内のライバルに阻まれてオリンピックや世界選手権などへの出場機会をなかなか得られずに来ました。しかしここ数年は世界でも少しずつ順位を上げ、2005年の世界選手権では16位。これは旧ソ連が分割され出場国が多くなった事情を考えれば、日本のアイスダンスカップルとしては史上最高レベルの成績です。

ふたりは、世界選手権の時点では獲得できなかった日本のアイスダンス出場枠を秋のオリンピック予選会に入賞して見事獲得。長年の努力の末に夢のオリンピック出場を果たすこととなりました。実力的には世界トップ10にも入れるダンステクニックを武器に、ベテランの味わい深さと初出場のフレッシュさを併せもつ、彼らのパフォーマンスに期待してください。


渡辺 心選手・木戸章之選手ペア








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