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2010/11/26

アーチェリー女子はメダルに届かず、ロンドンオリンピックに向けて誓いの涙

文・高野祐太

 

昨年の世界選手権団体で銀メダルを獲得したアーチェリー女子が、団体は準々決勝敗退、2人が決勝トーナメントに進んだ個人でもエースの松下紗耶未選手が準々決勝敗退、齋藤彩香選手が1回戦敗退に終わり、目標のメダルには届かなかった。だが、競技最終日の23日に流れ落ちた2つの涙には、ロンドンオリンピックでの活躍への誓いが込められていた。

 

■北京オリンピックの出場逃し、這い上がった松下選手

 

個人戦の決勝トーナメント2回戦以降は交互に3射を5セット行い、セットごとに勝者に2点、同点で1点ずつが与えられ、その合計点で争われるという新ルールで行われた。ロンドンオリンピックでも採用される方式での戦いは、スピーディーに展開されていく。2回戦を7—1で勝ち上がった松下選手は、国際大会にほとんど出て来ない北朝鮮選手と対戦。第1、2セットは互角だったが、第3セットで松下選手の3射目が10点満点中の7点となり、劣勢に。続く第4セットの2射目でも再び7点を出してしまい、最後は相手の10点でとどめを刺された。

 

「まっすぐ引いてまっすぐ打つ。思い切って打つことだけを考えていた。でも何でか、自分の打ちたいようには打てなかった」。肩を落として試合場を後にする。周りの慰めに、目頭が熱くなった。個人戦では初めて流した涙だった。それは、自分のためであり、応援してくれる多くの人たちのためでもあった。

 

訳がある。22歳で出場を果たしたアテネオリンピックは、思いのほか松下選手を苦しめた。オリンピック選手に対する周囲からの視線は一変し、それに見合うように「しっかりしなければと、変に意識過剰になった」。心も技術もバランスを崩していき、北京オリンピックを逃してしまう。アーチェリーを辞めることまで考えた。だが、見守ってくれる人たちの支えがあって、「どん底から這い上がってくればいい」と思えるようになった。

 

そして、エースとして戦った昨年の世界選手権での大きな成果。関政敏チームリーダーが「不死鳥のようによみがえった」と讃える復活劇だった。「今は、周りの目は全然気にならなくなりました。そこの成長は自分でも認めてあげたいし、苦しい時期があったからこそ、ここまで来れたのもあるし。感謝というか、その経験はよかった。応用力が付きました」。もう、日本を代表するアーチャーとして前進することに迷いはない。「こうやって個人戦で泣けたのは、まだ続けられる証拠。自分がそういう気持ちを持っていることを改めて気付いた大会でした」。

 Pkb10y19_0831 松下選手(PHOTO KISHIMOTO)

 

■齋藤選手は意気込みが気負いに

 

もう1人の決勝トーナメント進出者、齋藤選手は「勝てる予定だった」(松木裕二コーチ)格下相手に敗れると、思わず涙をこぼした。直前の練習では、時間を掛けずにリズム良く打っていく課題がうまく出来て「絶好調と言うくらい」だった。

 

ところが、試合が始まってみると、この大会に懸けていた意気込みが気負いになったのか、急に緊張が襲う。「周りを気にして自分に集中できなかった」。まだ日本チームのトップに立っていない自覚を持つ一方で、今大会は個人戦で金メダルを狙っていた。今夏のワールドカップで9位に入った実績も自信になっていた。このとき、3試合目に敗れたが強豪と接戦を演じることができた。まだ20歳。初めての国際総合競技大会での経験は、必ず肥やしにするつもりだ。「精神面や打ち方の向上に取り組んでいます。次の目標はロンドンオリンピックです」と力強く言った。

 Pkb10y19_0730 齋藤選手(PHOTO KISHIMOTO)

 

■アーチェリー男子

 

女子の分も、そして準々決勝で敗退した団体の分も、と臨んだ翌24日の男子個人だったが、アジアの壁は厚かった。「明日はメダルを獲りますよ」と関政敏チームリーダーが語っていたものの、天野良太選手は準々決勝で予選ラウンドを世界新で1位通過した韓国の金優鎮選手に0-6、古川高晴選手も同じく準々決勝で中国選手に2-6で負け、4強入りを逃した。天野選手が対戦した金選手が優勝だった。

 

天野選手は「相手(金選手)がうまかった。根負けした感じ。今日の準々決勝の金選手みたいに安定感を出せるようにしていきたい」、古川選手は「なかなか10点に入らなかった。予選はいい点数が出て成長していることが分かったが、トーナメントで勝てるように精神面を鍛えていきたい」とそれぞれ誓った。男子も女子同様、2年後のロンドンオリンピックをターゲットにした強化策が求められる。

 Tr2010112400711 天野選手(共同)

 Tr2010112200665 古川選手(共同)


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