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TEAM JAPAN DIARY

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2011/02/18

ワールドカップ・ジャンプ札幌大会、今季新ルールで開催

文・折山淑美

1月15〜16日に札幌・大倉山ジャンプ競技場で開催されたワールドカップ・ジャンプ札幌大会。この大会は、今季のワールドカップから採用されている、ジャンプ時の風の影響やスタート位置を得点に反映するルールの下で行われた。

その中でも成績に影響するのはウインドファクターだ。HS(ヒルサイズ)134mの大倉山では秒速1mにつき11.7点を基準として、ジャンプに有利な向かい風はマイナス、不利な追い風はプラスされるというもの。ランディングバーン横の5カ所に設置された風向・風速計で測った数値の平均値で得点が計算されるが、大倉山の場合は、風が巻いてランディングバーンの右側と左側で風の強弱や方向が違うこともある特有の条件下になるため、運に左右されることが多い。

大会前のワールドカップランキング日本勢最上位は伊東大貴選手の16位と、若干出遅れている日本チーム。この大会には、ワールドカップランキングTOP4までは出場したものの、5〜10位が欠場しており、上位に食い込める可能性のある大会だった。しかし風に苦しめられる結果となった。

■葛西紀明選手、次の大会につながる14位

Pkg111160508 14位になった葛西選手(フォート・キシモト)

2日間を通してまずまずの結果を出したのは葛西紀明選手だった。初日の1本目は追い風になったが、「その中でもいいジャンプができた」と、115.5mを飛んで10位につけた。2本目は「弱い向かい風になり、気持ちが攻め過ぎた」と言い109mに止まったが、合計11位につけた。向かい風基調となった2日目。1本目は、飛距離を伸ばすために重要なK点付近の風が無い条件ながら118mを記録。しかしランディングバーン上部の風は強かったためにウインドファクターはマイナス17.2点で、12位につける。2本目は、K点付近の向かい風を活かせず111mにとどまり、最終的に14位となった。

「1本目のジャンプは風に左右されたとは思ってなかったけど、ビデオを見たコーチがすごく良かったと言ってくれました。調子は上がって来ていたし、このメンバーなら一桁順位も行けると思っていたから、10〜15番くらいをチョロチョロしていたのは歯がゆいですね。まだ踏み切りでパワーが抜けている感じもするけど、それも少しずつ当たり出しているから、このまま飛び続ければいい方向へいくと思います」

こう話す葛西選手は昨年、夏シーズンの開幕前に右足の内側靱帯を痛めて出遅れた。それで逆に、調子が良かった昨季の日記を読み返すなどジャンプを見直す時間が取れたという。11月末からの冬シーズンには、年明けから徐々に調子を上げていけばいいという気持ちで、余裕を持って入れた。その思惑通り調子は上向いてきている。「1月21日からのポーランドのワールドカップで、上位選手が揃った中で自分の位置を確かめたい」と意欲を見せた。

Pkg111160379 意欲を語る葛西選手(フォート・キシモト)

■伊東大貴選手は不調のなか2日目1本目で7位、栃本翔平選手は「悔しい」13位

その葛西選手とは反対に、少し調子が落ちてきて苦しんでいたのが伊東大貴選手だ。伊東選手は昨年夏のサマーグランプリでは3勝して総合優勝を果たした。冬シーズンも開幕からの6試合中5試合で一桁順位になり、年末までは予選免除となるワールドカップランキング10位以内につけていた。だが疲労が出始めた年明けからは徐々に調子を崩していて、札幌大会初日は踏み切りのタイミングが合わずに18位となった。

それでも2日目は、1本目に123mを飛んで7位につける底力を見せた。2本目はこの日の試合の全選手中唯一、追い風の条件で飛ぶという不運に見舞われて23位まで順位を落としたが、疲労さえ抜ければ10位以内は狙える力があることは見せることはできたといえるだろう。

Pkg111160218 2日目に底力を見せた伊東選手(フォート・キシモト)

この2日間で最も悔しい思いをしたのが、期待の若手でもある栃本翔平選手だった。大会前までのワールドカップランキングは、伊東選手に次ぐ日本人2位の25位につけていた。年明けからはジャンプが少し狂っていたが、1月5日に日本へ戻って来てからはそれも修正でき始めていた。それでもまだ運を呼び込めるまでにはなっていなかった。

初日は1本目で7位につける健闘を見せたが、2本目は追い風に叩かれて15位に。2日目は1本目に128mを飛んで4位につけたものの、2本目は向かい風が弱い時にスタートしてしまう不運で飛距離を伸ばせず、順位を13位まで落としてしまった。

だがジャンプは「内容的には特別悪いことはなかった」と言い、徐々にまとまってきている。「1本目から順位を落とすのは悔しいですね。でも条件さえよければ、メンバーが揃った中でも10位前後は狙えるという手応えも感じてきました」と、前向きな言葉も口にするようになった。

Pkg111150280 悔しい結果となった栃本選手(フォート・キシモト)

同じワールドカップ組の竹内択選手も、風に苦しめられながらも初日は14位に入り「今のままやっていけば順位も徐々によくなって来るはず」と少しずつ手応えを感じ始めてきている。

直近のワールドカップを3試合欠場して札幌大会に臨んだ日本チームは、「ここで結果を出したい」という気持ちもあり、それが逆に足を引っ張ったともいえる。斉藤千春ヘッドコーチは「国内の試合と違って極端に助走スピードが遅くなって難しい上に、ウインドファクターでヨーロッパのジャンプ台ではあり得ないようなマイナス30点台が出るという、大倉山特有の条件も厳しかった。だがその中でもワールドカップ組5人は2日間とも2本目まで進み、ワールドカップポイントを獲得できたのは収穫だった」という。また伊東・葛西選手に次ぐ存在として期待される栃本選手の調子が、良くなって来たのも明るい材料だと話した。

ただ全体的に見れば、追い風だった初日は、ワールドカップ組以外全員が1本目で41位以下に沈み2本目に進めなかったが、2日目は、5名のワールドカップ組以外にも船木和喜選手と伊藤謙司郎選手が30位以内に入ってポイントを獲得できた。

国内の試合は向かい風が多いが、海外ではほとんどの試合が追い風の中で行われる。本大会は、その経験値の差が出た。今後は、日本チームのレベルアップのため、次世代の選手やトップ選手を追う他の選手にも多くの経験を積ませることも必要なのだろう。

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