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TEAM JAPAN DIARY

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2010年6月

2010/06/29

内村航平選手と鶴見虹子選手、世界選手権連続メダル獲得へ向けて発進! 〜第49回NHK杯

文:折山淑美

10月の世界体操競技選手権の代表決定選考会も兼ねたNHK杯が、6月12日(土)から東京・国立代々木競技場で開催された。

2日間の大会では昨年の世界選手権男子個人総合金メダリストの内村航平選手(北京オリンピック/団体総合・個人総合で銀メダル、男子種目別ゆかで5位入賞)と、女子個人総合銅メダリストの鶴見虹子選手(北京オリンピック/団体総合で5位入賞、種目別平均台で8位入賞)が安定した力をみせた。

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優勝した内村選手(左)と鶴見選手(提供:アフロスポーツ)

今年5月8〜9日に行われた全日本選手権2日間の合計得点の2分の1を持ち点として戦われたこの大会はともに、2番手を1点以上離して臨んだ。
内村選手は初日、最初に得意のゆかで着地を決めて15.600を獲得して差を広げると、続くあん馬とつり輪では14点台の得点に止まったが、跳馬からの3種目は15点台をならべてトップに立ち、総合得点で2位との差を3.363点まで広げた。

そして2日目も、大量リードで気が緩んでもおかしくない状況ながら、2種目目で本人が「Dスコア(演技価値点:演技の難しさなど構成内容を評価)が6.00点だから、本当に細かくやってミスを無くさなければ15点台を出すのは難しい」と言うあん馬で、15.050点をマーク。
さらに今年から力技を入れてDスコアを高くしているつり輪でも15.225点を出し、全6種目とも15点台でまとめるレベルの高さをみせた。

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ゆかの演技を得意とする内村選手 (提供:アフロスポーツ)

この大会内村選手は、不安要素を無くし、余裕を持った調整で臨むという課題があった。
昨年に比べてDスコアを上げて臨んだ全日本選手権(2010年5月8〜9日開催)は、初日の鉄棒で2回落下して4位発進というまさかの状況になった。
2日目も失点は最小限に抑えたもののあん馬で落下。その後は流れを立てなおして逆転優勝をしたが、「昨年の構成と比較してDスコアを1.5上げていた、その数字はE難度(勝ち点0.5)を3つ分増やした計算になるから、今思えばずいぶん背伸びをしていた」と反省したからだ。

そのためにNHK杯へ向けては、全日本の構成からあん馬と平行棒のDスコアを落とし、余裕を持っての調整、演技をできるようにしていたのだ。

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内村選手は2位と5.138点の大差で、2年連続2度目の優勝(提供:アフロスポーツ)

「2種目のDスコアを落としただけで気持の余裕もできたし、練習でも疲れを残さなかった。体力的には最後までいい演技ができたから問題はないと思います。2日間を通じて大きなミスがなかったので、あとは細かいミスがでないようにしていくだけだと思う」

内村選手は今回の構成で今年一杯は戦っていくと言う。2日間の得点は92・200点と92・275点で、ともに昨年の世界選手権優勝時の得点を上回るものだった。
今年の世界選手権に向けては、93点台を目標にすると話す。

「今回よりもいい演技をしないと93点には乗らないと思いますが、点数を意識するのではなく、ミス無くやるという事が世界選手権では自分の武器になると思います」と自信を深めている。

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世界選手権では団体の優勝、個人総合ではミスない演技が目標と語る内村選手(提供:アフロスポーツ)

一方、鶴見選手は手首の再手術や肩痛の影響で、今年はまだ演技構成を高められていない。

そのためにユルチェンコ1回ひねりで臨んだ最初の跳馬では出遅れたが、その後は得意な段違い平行棒と平均台で15点台を出し、合計でもミスをした若手選手たちには2点以上の差をつけて初日を終えた。
2日目の彼女はまさに自分との戦いだった。「正直言うと今日は緊張感もあまりなくて。だから逆に、失敗しないようにという気持で体を緊張させるのが大変でした」と苦笑。結局トップではあったが初日を0.475点下回る57.650点で演技を終えた。

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鶴見選手は、2年連続3度目の優勝(提供:アフロスポーツ)

「去年の世界選手権のメダルは自信になっていますが、メダルをとっているから負けてはいけないという気持にもなるので、半分半分という感じですね。初日の出来はまぁまぁだったけど、今日の出来では世界選手権は戦えないと思います」
と気持を引き締める。

この大会まではDスコアを上げることはできなかったが、10月の世界選手権や11月のアジア大会へ向けてはそこを上げる事が最大の課題だ。
「できれば跳馬はユルチェンコの2回捻りにして、 段違い平行棒ではトカチェフを入れて。ゆかでも1回半捻りと2回捻りを入れていきたいと思います。それを世界選手権の前に、7月のジャパンカップや8月の全日本ジュニアでうまく調整してやってみたいですね」
と意欲を持つ。

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鶴見選手は世界選手権までにもっとDスコアを上げたいと語る(提供:アフロスポーツ)

そんなメダリストに続く存在として注目したい選手もでてきた。
男子では総合計得点で3位になり、初の日本代表入りをした植松鉱治選手だ。04年高校選抜優勝者だが、大学は「強い大学へ行くとやらされる練習になって自分で考えてできなくなる」と仙台大を選んだ変わり種。
大学4年の全日本インカレでは北京オリンピックで銀メダルを獲ってきたばかりの選手を破って個人総合優勝を果たしたが、「いいところまで行くとすぐ浮ついてしまう性格なんです」と、昨年の全日本選手権は30位、NHK杯は12位と惨敗していた。

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G難度の伸身コールマンを含めた世界トップレベルの構成で、Dスコア7.5を獲得した植松選手(提供:アフロスポーツ)

だが今年の全日本選手権では内村選手に次ぐ2位に入っていたのだ。
彼の持ち味はDスコアの高さだ。特に鉄棒は今回も、内村選手の6.70に対して7.50。初日にはダントツ首位の16.100点と、昨年の世界選手権種目別鉄棒のメダル圏内の得点を出している。
さらに今回は10日前にギックリ腰になり、他の種目ではDスコアを落として臨んでいたのだ。

「世界選手権で僕ができるとすれば、鉄棒以外はゆかと平行棒だと思います。でも体操をやる限りは個人総合も狙いたいから、ロンドンへ向けてはそこを意識します」
と言う。完成度で勝負する内村選手とDスコアで勝負する植松選手という形になれば、世界でも面白い戦いを期待できるようになる。

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植松選手は世界選手権のその先に、ロンドンオリンピックを見据えている(提供:アフロスポーツ)

一方女子では、3月に膝の手術をして出遅れていた新竹優子選手(北京オリンピック/団体総合で5位入賞)が2日間合計では111.900点で2位と調子を取り戻し、世界選手権への切符をつかんだ。

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個人総合で3位獲得の新竹選手(提供:アフロスポーツ)

また、今年の世界選手権には12月末で満16歳以上という年齢制限で出場できない、若手選手たちの活躍も目立っていた。
その筆頭が持ち点との総合計で2位になった谷口佳乃選手。また、今回は順位を落としたが5月の全日本選手権では2日間合計で113.950点を獲得し、僅差で谷口選手を抑え2位になり、ユースオリンピック代表に決まった笹田夏実選手だ。

ふたりはともに今年3月のアジアジュニアにも出場し、個人総合では谷口選手が優勝し、笹田が4位になっている。来年以降は鶴見とともに日本女子を背負う選手になるはずだ。

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本大会2位の谷口選手(左:提供フォート・キシモト)と、5位入賞の笹田選手。ともに14歳。(右:提供アフロスポーツ)

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10月にオランダ・ロッテルダムで開催される世界選手権に出場する日本代表選手(提供:フォート・キシモト)

■財団法人日本体操協会
http://www.jpn-gym.or.jp/

2010/06/27

ナショナルコーチアカデミーで橋本聖子JOC理事が「コーチング論」講義

国際競技大会で活躍できる選手を育成・指導する真のエリートコーチ養成を目指し行われている「ナショナルコーチアカデミー」で6月23日、バンクーバー冬季オリンピックで団長を務めた橋本聖子さん(JOC理事)が「コーチング論」の講義を行いました。

Hashimoto1指導者らに語りかける橋本さん

橋本さんは、スピードスケートで冬季大会に4回、自転車競技で夏季大会に3回出場したオリンピックの申し子とまで言われたトップアスリートでした。当時、尊敬していたスピードスケートの選手が強化策として自転車競技に取り組んでいたことをヒントに、両競技に取り組もうと決めたそうです。しかし筋肉の使い方が少し違うことから、股関節を痛めるなど苦労もし、「両方の競技それぞれに、どんなトレーニングが必要かを考え、理解するきっかけになった」と、トレーニング方法を試行錯誤したエピソードを紹介しました。

Aflo_fbjb005850 1988年ソウルオリンピックに向けて自転車競技に挑戦する橋本さん(提供:アフロスポーツ)

Aflo_hkja002611 1992年アルベールビル冬季オリンピックのスピードスケートで、冬季では日本女子初となる銅メダルを獲得(提供:アフロスポーツ)

また現役最後の時期は、岡崎朋美選手や田畑真紀選手の指導役としての立場も兼任していたことから、具体的な指導法へのアドバイスもありました。「名選手、名コーチにあらずではなく、名選手こそ名コーチになるべき。研ぎ澄まされた感覚を紐解いて言葉で伝えられたとき、名コーチになれる」と話し、指導者らが持つトップレベルの身体感覚をうまく伝える大切さを話しました。

またオリンピックの基本精神についての話にも触れ、「肉体を鍛え上げるだけではなく、そのレベルまで精神力をも鍛えたものが本当のオリンピアン。そして、オリンピックは感動を与えるだけでなく、感動した子供達の生き方をも変えるほどの教育的な影響力がある」と説明。そのオリンピックの基本精神を受け継ぐために、「JOCは(メダル獲得に向けた)ゴールドプランを策定しているが、それは人生をゴールドにするためのゴールドプランでなければならない」と話し、選手の人間性も育成するよう各受講者に求めました。

数々の困難を乗り越え、現在は様々な場面でリーダーとしての活躍も多い橋本さん。最後は受講者からの質問ラッシュとなりました。なかでも興味深かったのは、ストレスの発散方法。橋本さんは選手時代、陶芸を行っていたそうです。ろくろを回しながら芯を作る作業で、集中力も養うことができたとのこと。経験豊富な橋本さんの話で、充実した講義となりました。

2010/06/23

6月23日は、オリンピックデー

6月23日はオリンピックデーです。1894年6月23日に国際オリンピック委員会(IOC)が創立されオリンピックが復興したことを記念して、1948年のIOC第42次総会において、この日を世界共通のオリンピックデーに定めました。

Photo クーベルタン氏(提供:アフロスポーツ)

この近代オリンピックを復興に尽力したのは、フランスの教育家ピエール・ド・クーベルタン氏です。クーベルタン氏は、古代ギリシャ・ローマの歴史を学んで、平和や公平、勝利者への賞賛といった古代オリンピックの思想を知ります。さらにイギリスのパブリックスクール(私立の中等教育学校)を訪問した際に、青少年の教育にはスポーツが重要な役割を果たしていると痛感。肉体と精神の調和のとれた発達のためにはスポーツによる教育を確立させようと、オリンピックの復興を計画しました。

そして、1894年6月23日、アメリカやヨーロッパなど49のスポーツ組織の代表者による国際会議をパリで開催し、オリンピック競技大会の復興を提案、満場一致で採択されたのです。

クーベルタン氏は、オリンピックを国際的な規模で復興させることで、スポーツによる教育と、世界平和への貢献を目指しました。その理念を「オリンピズム」といい、オリンピック憲章にもその根本原則が示されています。

クーベルタン氏が思いをはせたオリンピック。それは、身体を動かすことの楽しさや、目標を持つことの喜び、友情の大切さなど、様々なことを伝える大会なのですね。その精神を私たちはちゃんと引き継いでいるのか、ちょっと考えてみるのにいい機会かもしれません。

2010/06/21

オリンピアンがハイチ大地震支援で募金呼びかけ

今年1月に起きたハイチ大地震に際し、ロンドンオリンピックを目指すハイチの選手などを支援しようと、619日に都内で行われたオリンピックコンサートの会場で、オリンピアンが募金活動を行いました。集められた義援金は、JOCと同じくオリンピックファミリーの一員であるハイチオリンピック委員会が推進するオリンピックムーブメント等の活動支援や2012年のロンドンオリンピックを目指す選手支援のために活用して欲しいというJOCの意思を沿えて、JOCからハイチオリンピック委員会に渡す予定です。

Koshikawa 長身の越川選手は観客の注目を集めました(提供:アフロスポーツ)

オリンピアンらは、「ハイチ大地震オリンピックファミリー義援募金」と書かれた募金箱を手に、コンサートの開始前や終了後、会場の廊下に立ちました。「ハイチ大地震で、練習環境を整えることができない選手がいます。ハイチの選手らへ支援をよろしくお願いいたします」などと、オリンピアン自らが声を張り上げ、募金をつのりました。

この日、募金活動に協力してくれたのは、荻原次晴さん(スキー)、川崎努さん(スケート)、小谷実可子さん(シンクロ)、佐藤寿治さん(体操)、中田久美さん(バレーボール)、吉原知子さん(バレーボール)、米倉加奈子さん(バドミントン)に加え、現役オリンピアンの山本博選手(アーチェリー)、越川優選手(バレーボール)ら9人。観客の皆さんはオリンピアン自らが支援を呼びかける姿に惹かれた様子で、募金箱の前には行列ができるほど。募金後、選手と写真を撮ったり握手をしたりする姿も見られました。

Kotani 人一倍、声を張り上げ支援をお願いした小谷さん(提供:アフロスポーツ)

Yonekurayamamoto_2 募金にご協力いただいた方に笑顔を見せる山本さん(右)、米倉さん(右から2番目)(提供:アフロスポーツ)

募金は、613日に大阪市で行われた「2010オリンピックデーラン大阪大会」の会場でも行われ、大林素子さん(バレーボール)、岡本依子さん(テコンドー)、荻原さん、末續慎吾さん(陸上競技)、田端健児さん(陸上競技)、千葉真子さん(陸上競技)、永富有紀さん(バレーボール)、根木慎志さん(車椅子バスケットボール)らのオリンピアン・パラリンピアンが支援を呼びかけました。

ハイチの選手たちには、大地震に負けることなく、ロンドンオリンピックという大きな目標に向かって努力して欲しいですね。募金にご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。

2010/06/18

ナショナルコーチアカデミーで、上村春樹JOC選手強化本部長が講義

5月31日に開講した「平成22年度ナショナルコーチアカデミー」で、上村春樹JOC選手強化本部長が「コーチング論」の講義を行いました。

Uemura2 講義する上村JOC選手強化本部長(提供:アフロスポーツ)

ナショナルコーチアカデミーは、国際競技大会で活躍できる選手を育成・指導する真のエリートコーチやスタッフを養成するのが目的です。今年度は、継続受講者を含め、正規コースに37名、外国籍コースに3名の指導者が参加。毎週3泊4日8週間にわたる講義が行われます。講義は、各専門家による「コーチング論」「マネジメント論」「スポーツ医・科学サポート論」「スポーツ情報戦略」などさまざま。

今年度の講師のトップバッターは、上村JOC選手強化本部長でした。上村本部長は、1988年ソウルオリンピックで柔道の金メダルが1個と成績が振るわず、そこから日本柔道の建て直しを図ったエピソードを紹介。1964年東京オリンピック以降、体力や体格にこだわっていた強化策を見返し、「技」を見直すことで、日本人の特性を生かした柔道を追求したそうです。

さらに、「指導者が選手に伝えたい3つのこと」として、自身の経験から導かれたモットーを伝えました。

ナショナルコーチアカデミーは、6月24日で前半を終了。8月30日から後期が始まり、9月24日の最終日まで、充実した講義と熱いディスカッションが続けられます。

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