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2010/10/05

日本セーリング連盟が国体でチャイルドルームを設置、女性選手や役員の参加を後押し

日本セーリング連盟は、9月26日から行われている「ゆめ半島千葉国体」セーリング競技の会場にチャイルドルームを設置、小さなお子さんを抱える女性選手や役員の試合参加を支援しました。同連盟によるチャイルドルーム設置の取り組みは、2002年の国体から始まり9回目。同連盟レディース委員会の倭千鶴子さん(JOC女性スポーツ専門委員会委員)は「お子さんがいることで現役を引退する女子選手や、指導の現場から離れる女性のためにも、チャイルドルームの取り組みを他の大会や、他の競技にも広げていきたいです」と話しています。

Photo_2 多くの子供たちがチャイルドルームを利用した(写真:濱谷幸江)

 

日本セーリング連盟が、チャイルドルーム設置に向けた活動を始めたのは、1998年の「かながわ・ゆめ国体」のとき。当時、選手として脂の乗った時期ながらお子さんのいた上原洋子さん(1990年アジア大会・金メダル)をはじめとする選手たちから、「レースに子連れで参加したいのでチャイルドルームを設置してほしい」という声が沸き起こりました。しかし急に国体本部としてチャイルドルームを設置することはできず、倭さんは「私たちの自己責任でやります」として、ハーバー内のプレハブにスペースを借り、託児をしてくれるボランティアを集め試合期間中にお子さんを預かったのです。「閉会式では、女子選手が赤ちゃんを抱っこして表彰台に上がったんです。とても印象的な光景でした」と振り返る。

2001年に、女性の参加を促そうと同連盟内にレディース委員会が設置され、倭さんが委員長に任命されると、活動は本格化。2002年「よさこい高知国体」では、事前から大会本部に設置の要望書を出し、入念な準備を進めました。以来、国体のたびにチャイルドルームを設置し、今年で9回目となりました。

倭さんは、大会本部との交渉は簡単ではないといいます。「子供にもし怪我があったらどうするのか、ボランティアの保育士などの人材集めをどうするか、経費の負担はどうするか、など多くのハードルがあります。どこの都市も、最初は簡単に設置を受け入れてはくれません。しかし女性の参加のためには必要なものですし、多くの開催市が最後には納得し、理解を示し、全面協力してくれます」。最近は、子供の万一の怪我にそなえた傷害保険などもレディース委員会にて負担し、万全を計っています。

今回の千葉国体では、受付を同連盟レディース委員会が担当し、保育係として地元の保育士で幼稚園の教諭が参加。受付2人、保育係4人の計6人のボランティアが常駐する態勢で競技期間中の全4日間、チャイルドルームを運営しました。地元のお母さん方がボランティアで手伝いに入ってくれることもあり、地元参画にもつながったそうです。大会初日の9月25日には、のべ44人の子どもが利用し大盛況となりました。

Img_2005お絵かきセットや、バドミントン、すべり台など様々な遊具が用紙された

利用者は、選手関係者のお子さんだけでなく、観戦客のお子さんも対象となります。セーリング競技は炎天下や風雨の中でも行われ、子連れで観戦にくると、競技の合間に子供を休ませる場所の確保に苦労するためです。女子選手は、お子さんを祖父母などに預けても観戦に連れてきてもらうことが出来ませんでしたが、チャイルドルームが設置されたことで、自分の子供に試合姿を見せてあげられるようになりました。もちろん一般客も、お子さんを預けられる安心感から気軽に試合観戦に訪れることができ、観戦客のすそ野を広げるのにも一役買っています。

夫婦で神奈川県のコーチを務める内田みち子さん・伸一さん夫妻は、1歳9ヶ月のお子さんをチャイルドルームに預けて試合に参加。みち子さんは、昨年の国体では産後9ヶ月ながら、チャイルドルームを利用すること現役復帰を果たせました。「チャイルドルームは本当に助かっています。これがなかったら女子選手や監督は競技を続けられないですよね。今後はもっと多くの試合でもチャイルドルームが設置されると助かります」とみち子さん。

一方、保育係として参加した地元の幼稚園講師の鎌田直子さんは、「日本セーリング連盟の取り組みは、女性のスポーツ参加のためにとても大切なことですね。今は会社にも保育所がある時代です。スタッフ集めは大変だと思いますが、今後も続けていってほしいですね」と話しました。

Img_1973_2子供たちをチャイルドルームに預けたことで、女性選手や女性役員の試合参加が可能になった

Img_2106「ゆめ半島千葉国体」はチャイルドルームの設置に全面的に協力してくれたという

現在は国体のみで設置していますが、今後は各地の大会でも設置できるよう、働きかけていきたいと倭委員長は考えています。「女性のスポーツ参加のためにチャイルドルームの設置を理解してもらうのは、大変な作業。でも誰かがやらないと。幸い、日本セーリング連盟は私たちの活動にとても理解があるので、これからも設置を働きかけていきたいです」。

このチャイルドルームの取り組みは、セーリング競技に限らず、すべてのスポーツで必要なことです。この取り組みを先駆者に、各競技団体でもチャイルドルームの設置にむけた動きをスタートさせ、女性のスポーツ参加につなげていくことを願ってやみません。

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