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TEAM JAPAN DIARY

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2010/09/17

柔道世界選手権2010東京大会 女子は金6、銀3、銅4獲得

文:松原孝臣

各階級に各国2名のエントリーが認められた影響がもっとも大きかったのは、実は日本の女子だった。
大会を振り返ると、あらためてそう思える。
8階級、日本勢同士の対戦となったのは、48kg級、52kg級、63kg級と、実に3階級にわたった。

これらの階級の中で最初に行なわれたのは、3日目、9月11日の63kg級である。昨年ロッテルダムで行なわれた世界選手権では、上野順恵選手がオール一本勝ちで金メダル。連覇をかけて決勝に臨んだ上野選手の前に立ちはだかったのは、初戦からオール一本勝ちで勝ち上がってきた田中美衣選手だった。

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2回戦を除き全て一本で勝ち上がってきた田中選手(アフロスポーツ)

これまで何度も対戦し、互いに手の内を知る両者の戦いは、拮抗した者同士ならではの緊迫感に包まれるものとなった。隙は見せられない、ポイントは与えるわけにいかない。決め手のないまま、時間は過ぎていく。延長でも勝負はつかず、旗判定にもつれこむ。

結果は、3−0で上野選手。見事、連覇を遂げることになった。

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昨年に続く2連覇を遂げた上野選手(フォート・キシモト)

4日目に行なわれた女子の2階級、48kg級と52kg級は、日本勢が決勝の畳を独占する。
48kg級には福見友子選手、52kg級には中村美里選手と、昨年の世界選手権を制し、世界ランク1位の第一人者がいる。
当然、優勝争いの本命と見られていた。だが、両階級は国内の代表争いのほうが世界で勝つより難しい、と言われるほど、層の厚い階級である。それを裏付けるように、決勝に進んだのは、48kg級が浅見八瑠奈選手、52kg級は西田優香選手だった。「第2代表」とみなされて出場した彼女たちは、自分にも世界で戦う力があることを証明するために、強い決意をもって大会に臨んでいた。

「負けたらあとがないと思っていました」浅見選手(右)
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今年の4月に開催された全日本選抜柔道体重別選手権の決勝戦では福見選手(左)に敗れている(フォートキシモト)


「ここで負けたらロンドンオリンピックはない」西田選手(右)
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決勝で対戦し、中村選手の強さを実感したと語る(フォート・キシモト)

言葉にもそれが表れていた。
先に決勝が行なわれたのは48kg級。準決勝まですべて一本勝ちで進んだ浅見選手だったが、決勝の福見選手相手には、たやすく技をかけるわけにはいかない。序盤は組み手争い、特に釣手で福見選手がうまく先手を取る。
だが徐々に浅見選手も技を仕掛けると、福見選手に2つの指導が与えられ、浅見選手に有効のポイントが入る。そのまま試合は終了。浅見選手が初出場で優勝を果たした。

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48kg級。世界選手権連覇を狙った福見選手(左)を降し、優勝した浅見選手(右)(フォート・キシモト)

続く52kg級決勝。国内外の7大会連続優勝中の中村選手に対し、西田選手は立ち上がりから巴投げを仕掛ける。思いがけない技に、中村選手の体が浮く。
ポイントを取るまでには至らなかったが、西田選手が対策を十分に練ってきたことが分かる瞬間だった。さらに背負い投げを中心に責める西田選手。すると、中村選手に一つ目の指導が与えられる。ここから、激しい技の掛け合いが始まる。延長に入っても均衡は破れない。
旗判定の結果は、3−0で西田選手だった。

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西田選手は 得意の投げ技で北京オリンピック銅メダリストの中村選手に挑んだ(アフロスポーツ)

「1回戦のときから、決勝の相手は中村選手と思ってやってました」
 まさに執念の勝利だった。

こうして本命が敗れる展開に、全日本女子の園田隆二監督は言った。
「守ろうとする者と、後がない、と攻める立場にいる者との差が出ました」
国内でも僅差の争いを続けてきただけに、力に大きな差はない。その中で勝敗を分けたのは、たしかに、気持ちの部分だったのかもしれない。

それは初日の78kg超級で金メダルを獲得した杉本美香選手にも言える。
アテネオリンピック金メダル、北京オリンピック銀メダルと絶対の第一人者の塚田真希選手の陰に隠れていた杉本選手にとって、2名の代表枠は大きなチャンスであり、ここにかける気迫が優勝につながったのだ。杉本選手は最終日の無差別級も制し、2冠を達成した。

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78kg超級、無差別級と2階級を制した杉本選手(アフロスポーツ)

このほか、57kg級では松本薫選手が昨年5位に終わった悔しさをばねに、初優勝を果たした。ちなみに松本選手の金メダルは、日本通算100個目でもあった。

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世界柔道通算100個目のメダルは松本選手がもたらした(アフロスポーツ)

さらに70kg級で國原頼子選手、78kg級で緒方亜香里選手、78kg超級で塚田選手、無差別級で田知本愛選手が銅メダルを獲得し、5日間で獲得したメダルは、金が8階級中、実に6個、銀が3個、銅が4個。

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70kg級の國原選手(左)(フォート・キシモト)、78kg級の緒方選手(右)(アフロスポーツ)

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78kg超級の塚田選手(左)、無差別級の田知本選手(右)(アフロスポーツ)

2名のエントリーが可能になった大会で、国内の激しい争いが世界の舞台に持ち込まれたのが今回の世界選手権だった。そして日本はまざまざとレベルの高さを見せつけた。
今後、海外からのマークはさらに厳しくなる。その中で今の地位を保つためにはいっそうの切磋琢磨が求められる。
いや、きっと言われるまでもなく、敗れた第一人者たちも、勝者も、すでに次へと目を向けているはずだ。でなければ、この激しい争いの中で勝ち残れないことを知っているからだ。
 

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