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2010/05/31

期待のイケシオ、ロンドンへ向け本格発進 〜2010ランキングサーキット大会

文:折山淑美

5月9日から16日までマレーシアのクアラルンプールで行われた12カ国による国別対抗戦トマス杯・ユーバー杯では、ユーバー杯の女子が3大会6年ぶりに、トマス杯の男子は31年ぶりの銅メダルを獲得した日本バドミントン。
帰国直後の5月22日からは、日本ランキング上位(32位まで)が出場して覇を競う日本ランキングサーキット大会が、さいたま市で開催された。

この大会、最も注目されたのはトマス・ユーバー杯出場組ではなく、混合ダブルスを組んで1年になるイケシオこと、池田信太郎選手/潮田玲子選手組。潮田選手はこれまで所属していた三洋電機を今年4月末で退社し、池田選手と同じ日本ユニシス入りしてから初めての大会となった。

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ロンドンへ向けた戦いがスタートしたイケシオペア(写真提供:アフロスポーツ)

ともに北京オリンピック代表で、07年世界選手権ではそれぞれダブルスで銅メダルを獲得しているふたり。ロンドンへ向けてのペア結成は、大きな期待を持って迎えられた。
だが、その道のりは順調ではなかった、池田選手は日本リーグなどで男子ダブルスを組む必要もあった。東京へ住まいを移した潮田選手も池田選手と練習できない時は、練習場所を転々としなければならず、北京前のような追い込んだ練習をできない状況だった。

さらに昨年11月には池田選手が右手首を骨折して離脱。復帰戦だった今年4月の大阪国際でも右太股の肉離れと、なかなか軌道に乗らなかった。
それが潮田選手の移籍でやっと、混合ダブルスの練習に本格的に打ち込めるようになった。そして5月からは香港とタイに遠征。現地のナショナルチームに合流して、世界ランキング10位台の混合ダブルスのペアと試合形式の練習を積み、10数試合で勝ち越すという結果を残してきたのだ。

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4月の大阪国際は準々決勝で敗退(写真提供:アフロスポーツ)

その成果を池田選手は「試合中にどこをどう見ていればいいかなど、試合をする相手を見て勉強になった。これでわかってきたという感じで、潮田選手も余裕が出てきた」と言う。
また潮田選手も「遠征で強い相手とやって、男子の球への恐怖感もなくなってきました。レシーブでも女子ダブルスのようにとにかく上げるのではなく、攻撃的なパターンが必要なこともわかった。まだプレーのバリエーションを増やさなければいけないが、やっとミックスがわかってきた感じです」と笑顔を見せる。

ふたりの進化は試合でもハッキリと出た。22日の1回戦は22分で相手を仕留めると、その後は準々決勝まで相手を20得点以下に抑える圧勝。相手が手ごわくなった準決勝と決勝でも、27分と28分という短い試合時間でストレート勝ちしたのだ。

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今大会では順調に勝ち上がり優勝を手にした(写真提供:フォート・キシモト)

「今までは自分たちより下の相手でもなかなか波に乗れず、競り合って最後に勝つという感じでした。でも今回はビシッと勝てたから、成長しているということだと思います」と、潮田選手は笑顔を見せる。

それでもまだ課題は多い。今回対戦した相手は日本ランキング2位(日本バドミントン協会4月9日付)のイケシオに対し、準決勝は7位、決勝は6位と格下の相手だったからだ。昨年の全日本総合で完敗した平田典靖選手/前田美順選手組はトマス・ユーバー杯で男女ダブルスに出場してきたこともあり、ともに本業のダブルスのみの出場だった。

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2009年の全日本総合で優勝した平田・前田選手組(写真提供:アフロスポーツ)

日本代表チームの朴柱奉ヘッドコーチは「チームが一緒になったし、能力的にはスーパーシリーズでも本戦(32チームの1回戦)に出ることはできるが、まだベスト8には入れない。世界のトップに比べると潮田はコートスピード、池田はパワーが足りない」と評価する。

だがそれはふたりも承知のことである。5月の香港、タイ遠征で痛感したのは、海外の強いペアとの試合を積み重ねることの重要さだ。混合ダブルスを専門的にやるペアがほとんどいない日本では、満足な試合形式の練習もできない。自分たちが強くなるために、それを海外での試合や、大会前の合同練習の場に求めようという気持になっている。

決勝を終わった後、ふたりは「これからやっと始まります」とロンドンへ向けての気持を語った。オリンピック出場権争いが始まる来年の5月までに、現在43位の世界ランキングをどこまで上げておけるか。そして混合ダブルスの戦いにいかに慣れていくかが、これからのイケシオの課題だ。

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世界ランキングの上位獲得を目指す(写真提供:アフロスポーツ)

疲労も残るトマス・ユーバー杯組で、唯一気を吐いたのは女子ダブルスの末綱聡子選手/前田美順選手組だった。決勝は昨年11月の全日本総合選手権でも負け、過去3連敗中の松尾静香選手/内藤真実選手組だった。

第1ゲームは22対24で競り負けたが、第2ゲームは21対16、ファイナルゲームは21対9で逃げきって優勝を決めた。
「正直しんどかったけど、自分たちのプレーを心がけたのが良かった。1、2ゲーム目は自分たちのミスが多かったけど、ファイナルは球をしっかりコートに入れていこうと話し合い、その通りにできた」
と末綱選手は言う。

ふたりが自信を持つスタミナを、やっと発揮できたといえる。現在の世界ランキングは5位。スエマエは久しぶりに、国内でもその実力を見る結果になった。

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北京オリンピック4位のスエマエペアが優勝(写真提供:フォート・キシモト)

ユーバー杯では第1シングルとして出場した女子シングルスの第一人者の廣瀬栄理子選手は、
「4月に以前痛めた太股のケガを再発させてしまい、ユーバー杯はギリギリで間に合わせた状態でした。その後も帰って来てから時間がなかったので」と言うように、準決勝で樽野恵選手とファイナルゲームまで競り合いながら、惜しい敗戦を喫した。

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女子シングルス、日本ランキング1位(2010年4月9日付)の廣瀬選手。
本大会は3位に終わった(写真提供:フォート・キシモト)

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女子シングルスで優勝した今別府香里選手(写真左)、準優勝は樽野選手(写真右)
(写真提供:フォート・キシモト)

その廣瀬選手を準々決勝で苦しめたのが、今年4月の世界ジュニアで銀メダルを獲得した、社会人になったばかりの松友美佐紀選手だ。彼女は高橋礼華選手と組んだ女子ダブルスでも準決勝で末綱選手/前田選手組と戦い、第2ゲームは19対21と競り合う健闘を見せた。

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松友選手選手は、4月の世界ジュニアで日本選手史上2人目の快挙となる銀メダルを獲得している
(写真提供:フォート・キシモト)

その松友選手は昨年の全日本総合選手権でも、高校生ながら準決勝で廣瀬選手を相手に、負けはしたが、ファイナルゲームでは20対17と先にマッチポイントを握って「あわや大金星か」と周囲を驚かせる試合を見せていた。
この大会では廣瀬選手から第1ゲームを先取して、全日本総合の雪辱を果たすのではと思わせる接戦をした。

「去年の総合は勢いで行っただけだけど、今回は相手もわかっているので自分の中で考えて試合も組み立てていけました。負けたのは悔しいけど、去年がマグレかなと思っていたから接戦ができて自信になりました」
と笑顔を見せた。

■財団法人日本バドミントン協会
http://www.badminton.or.jp/

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