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松岡修造氏インタビュー

スポーツ文化と環境問題

はっきり言うと、環境問題をスポーツとつなげて考えられるかは、その国にスポーツ文化がどれだけ根付いているかによると思います。スポーツの盛んな国であれば、「自分がスポーツを楽しみ続けるためにどうにかしなければならない」と自分のこととして関心を抱くはずですから。

シドニーでオリンピックが開かれることになったとき、僕は「あの街でそんなビッグイベントは無理だ」と思ったんです。よく知っている街だけに、交通事情から考えて都市機能が麻痺してパニックになるだろう、と。けれど、彼らはやってのけた。市民みんなが大会期間中はマイカーでの移動を諦め、電車を利用したんです。日本では信じられないような協力体制でしょ。このぐらいスポーツ文化がみんなの生活に根付いていれば、環境問題もクリアしていくのだろうと思います。

オリンピックの未来形

これからのオリンピックは、環境問題への取り組みの度合いを示すひとつの目安になっていくのではないでしょうか。スポーツ大会を開けるだけの自然環境が確保されているか、市民の協力体制は望めるか、新設される競技場は大会後も無駄にならないか……。そういった環境への配慮が開催地を決める最大のポイントになってきましたから。 次のアテネ大会は、競技場の規模も、競技数も、参加人数も減らしてコンパクトな大会を目指すことになっています。21世紀のオリンピックを考えるうえで、この大会がひとつのモデルケースになるのではないでしょうか。 2008年の北京大会は“グリーンオリンピック”がキャッチフレーズ。中国のように工業化を過激に進めている超大国が、「オリンピックを開けるだけの自然環境を確保する」と本気で考えるようになったことにが僕はとてもうれしい。どこまでやってくれるのか、期待しています。 あれは長野大会のときだったと思います。ある博士が「このまま環境破壊が進めば、いつか宇宙か地下でオリンピックが開かれることになる」と言ったのです。 そんなSFみたいな・・・と思うでしょ。でも、このまま放置すればそれが現実になる日が遠からずきてしまう。でも、今なら止められるんです。みんなが動き出せば、ずっとこの地上でオリンピックは行える。それをひとりでも多くの人に知ってほしい。ホントの本気でそう願っています。