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トリノ2006


スペシャルコラム

最高のパフォーマンスに向けて

川崎努さん

2月10日に行われた開会式の後、トリノでは絶好のオリンピック日和の晴天が続いている。一方、山岳地帯特有の冷たい風が吹き抜ける街中では、普段は陽気なイタリア人が厚手の上着に身を包み、大きな背中を小さく丸めて歩いている光景が目に付く。


写真提供:アフロスポーツ

街の中心部の雰囲気は意外に穏やかだが、お揃いのジャンパーを着たボランティアスタッフが多いので、オリンピック独特の活気が感じられる。街の人々はオリンピックを「外国人が大勢やってくるイベント」と認識していて、とても親切に接してくれる。

トリノの街で目に飛び込んでくる光景といえば、毎日いたるところで行われている工事。私が滞在しているホテルの前も例外ではなく、いまでは毎朝8時の作業音が目覚ましがわりとなっている。また、街中には工事車両や大会関係者用のシャトルバスが多く、またセキュリティーのために一部道路封鎖がされていることも交通渋滞に拍車をかけているようだ。

そんな中で過ごす毎日は、ホテルやメディアセンター、練習・本番会場を行き来する日々の繰り返し。重要な移動手段となるはずのバスや路面電車は定時に運行されておらず、時間が読めないのが悩みの種だ。食べ物に関しては、ユーロと円の関係からか若干割高なことを除けば、おいしいイタリア料理で十分満足できている。


写真提供:アフロスポーツ

競技会場内は思いのほか空席が目立つ。しかし、さまざまな国からやって来た観客が各国の国旗を左右に大きく振って声援を送るオリンピックならではの華やかな雰囲気がある。オーバル・リンゴットとパラベラのスケート会場では、オランダや韓国の声援に負けじと日本勢も大きな日の丸に「がんばれ」と文字を書き入れ、力強い声援を送っていた。私が解説をしている最中にも「がんばれー!」とはっきり聞こえるほど大きな声で声援が飛び、嬉しく思った。応援団の中には選手同士や選手の父兄や友人も多いそうで、選手たちも気合が入ることだろう。

開会式から4日が経過し、スケートでは日本期待の選手の多くが競技を終えた。 現時点ではメダルに恵まれてはいないが、選手たちは必死に頑張っている。 ここまでは「結果がすべて」のオリンピックという大舞台の難しさを痛感させられる展開だ。選手の頑張りだけではどうしようもない「競技の流れ」のなかで、“あと一歩”のところで強い向かい風が吹いてしまっている。各選手の競技自体にそれほど欠点が見当たらないだけに、一刻も早くこの沈滞ムードを打開するキッカケが欲しいところだ。すべての選手が最高のパフォーマンスに向けて1日、1時間、1分、1秒を大切に過ごして欲しいと願っている。

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