大会







第28回オリンピック競技大会(2004/アテネ)

代表選手選考会・出場権獲得レポート

柔道
前人未到のオリンピック3連覇を狙う野村
男子は「最低でも4階級で金メダル」、女子は「全階級でメダル獲得」が目標!

男子柔道の第37回全日本選抜体重別選手権大会が、4月4日、福岡市民体育館において行われた。この大会は100kg級、100kg超級の2階級を除く5階級のオリンピック代表の最終選考会を兼ねていた。大会終了後には、昨年の大阪世界選手権、講道館杯、この冬の欧州国際大会などを含めた過去1年間トータルの成績および試合内容が評価され、「最も金メダルの可能性が高い」と思われる選手が、(財)全日本柔道連盟により代表選手として選ばれた。また、5月のアジア選手権にオリンピック出場権をかけた階級でも、代表選手が決定した。

60kg級では、前人未到のオリンピック3連覇を狙う野村忠宏(ミキハウス)が、格の違いを見せつけて3年ぶり3度目の今大会で優勝を果たし、3大会連続のオリンピック代表選手となった。

野村は2000年シドニー大会終了後、2年近くにわたって試合から遠ざかっていた。2002年10月に復帰してからも、ブランクの間に薄れてしまった試合勘が取り戻せず、国内外で勝てない試合が続いた。しかし、昨年の選抜体重別選手権で見事に復活。大阪世界選手権では3位に終わるも、強い野村が復活。技については、切れ、スピード、タイミングのどれをとっても右に出るものはいない。センスも抜群だ。「柔道人生の最後」を最高の結果で飾るべく、野村がアテネに挑む。

66kg級は、内柴正人(旭化成)が優勝し、オリンピック代表選手に選ばれた。内柴は、昨春まで60kg級で活躍していた選手。しかし、昨年の選抜体重別で減量に失敗し、失格。それを機に66kg級に変更し、以来1年間、自らのプライドと「柔道を続ける環境を与えてくれた周囲への恩に応えたい」という一心で頑張ってきた。それだけに喜びも大きく、試合後には感涙する場面も見られた。

73kg級では高松正裕(旭化成)が優勝し、代表選手となった。また81kg級では塘内将彦(旭化成)が勝利をおさめ、初のオリンピック代表選手に選ばれた。

高松は1999年の講道館杯を高校3年で制し、早くから逸材として期待されていたが、外人には強くても日本人に勝てない日々が続いていた。塘内は1999年バーミンガム世界選手権の代表に選ばれたものの1回戦負けと結果を残せず、以来、同階級の日本代表を他の選手に明け渡す苦しい日々が続いていた。

90kg級は1回戦で敗れた泉浩(明治大4年)が、この1年間の充実度と成長度が評価され、学生では唯一の代表に選ばれた。飛躍のきっかけは、昨年の全日本選手権で篠原信一選手と対戦したことだ。この試合で、「自分は形にこだわり過ぎていた。柔道を始めた頃のように楽しむという気持ちが大切」と再確認した泉は、昨年8月のユニバーシアードで優勝。続く講道館杯、パリ国際も制した。

4月29日(木)には全日本選手権が日本武道館で行われた。この大会は、柔道家日本一を決める大会として毎年注目を集めるが、今年は例年にも増して大きな盛り上がりをみせた。というのも昨年の大阪世界選手権で優勝した井上康生(綜合警備保障)、棟田泰幸(警視庁)、鈴木桂治(平成管財)という3人の世界王者が、100kg級、100kg超級の2枚しかないオリンピック切符をかけて戦いに挑んだからだ。結果は、鈴木が優勝して100kg超級オリンピック代表選手の座を勝ち取り、100kg級の代表選手には、決勝で鈴木に敗れはしたものの4月4日の全日本選抜体重別選手権の同級を制している井上が選ばれた。

鈴木のここまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。体重別選手権では大会直前に痛めた左手薬指の怪我の影響もあって、よもやの準決勝敗退。その後も、ケガは完全に回復せず、満足な練習ができないまま全日本選手権に臨まざるを得なかった。しかも、組み合わせでは、いずれも強豪揃いの厳しいブロックに組み込まれた。

しかし、鈴木は、「ライバルである井上を意識しすぎるあまり、眼の前の一戦に集中できなかった」という3週間前の全日本選抜体重別選手権の反省を生かし、まさに“一戦必勝”で勝ち上がっていった。

初戦の相手を大苦戦の末に一瞬の腕十字固めによる逆転で退けると、調子を尻上がりに上げ、棟田との直接対決となった準決勝では常に左釣り手を先に取る危なげない戦いで勝利。決勝でも4連覇を狙った井上の右釣り手を殺し、得意の左足技で攻めるという理想的な展開で昨年の雪辱を晴らした。負けた井上が「勝ちたいという気持ちが、今日は鈴木の方が勝っていた」と言うとおり、まさに、勝利への執念でつかんだ日本一の称号だった。

一方、井上も、2ヵ月近くにわたり、「怪我や体調不良など、次から次へと眼の前に立ちはだかる壁」に苦しんでいた。それでも、負けは負け。試合後、敗戦の悔しさを噛み締めながら、「一日も早く怪我を治し、アテネで金メダルを取る。それが、今の僕にとって一番輝けること」と改めてオリンピック連覇に向けた決意を語った。

女子は、4月11日の全日本女子柔道選抜体重別選手権で78kg超級を除く6階級の代表が、4月18日の全日本女子柔道選手権で78kg超級が決定した。

48kg超級は、谷亮子(トヨタ自動車)が圧倒的な強さで大会を制し、4大会連続オリンピック出場を決めた。決勝でみせたがっちりと相手を組みとめる戦い方といい、「これからは、対応力を超えた、相手の力を軟らかくこなしたりする順応性を身につけていきたい」という言葉といい、28歳になってなお、進化し続けていると言えるだろう。日本人女子選手としては史上初のオリンピック連覇も、ほぼ間違いないだろう。

78kg級では、阿武教子(警視庁)が大会12連覇という大記録を達成するともに、文句なしで3大会連続オリンピック代表に選ばれた。ただ、世界選手権4連覇中と実力では世界ナンバーワンの阿武も、過去2回のオリンピックではともに初戦敗退で終わっている。今度こそ3度目の正直で、悲願の金メダルを獲得して欲しい。

52kg級では横澤由貴(三井住友海上)、63kg級では谷本歩実(コマツ)、78kg超級では塚田真希(綜合警備保障)という大阪世界選手権に出場した選手が初の代表に選ばれ、70kg級では世界選手権連覇の上野雅恵(三井住友海上)がオリンピック2回目の出場を決めた。また57kg級では、シドニーオリンピック銅メダルの日下部基栄(福岡県警)が、海外での試合実績を評価されて代表となった。

これで、男女各7階級あわせて14人の日本代表選手および日本代表候補選手が出揃った。オリンピック金メダリスト3人、世界選手権金メダリスト5人、両大会のメダリスト4人という強力な布陣だ。

その上で、オリンピックでの目標は、男子が「最低でも4階級で金メダル」(斉藤仁監督)、女子が「全階級でメダル獲得」(吉村和郎監督)ということだ。

Text:中川和彦 Photo:AFLO SPORT

ページトップへ