大会







第28回オリンピック競技大会(2004/アテネ)

代表選手選考会・出場権獲得レポート

体操
体操王国復活を目指して

5月2日(日)、3日(月)の2日間にわたって行われた第43回NHK杯(第28回オリンピック体操競技日本代表決定競技会)で、男子6人、女子2人の日本代表選手が決定した。

男女とも、4月の二次予選で絞られた上位18人が、持点(二次予選の点数の2分の1)とこの大会2日間の点数を加えた総合計点で順位を決める。二次予選の段階で、昨年の世界選手権団体銅メダルメンバーである笠松昭宏(中京クラブ)と山田辰也(コナミスポーツ)がチャンスを失うなか、男子では米田功(徳洲会体操クラブ)、冨田洋之(セントラルスポーツ)、水鳥寿思(徳洲会体操クラブ)、塚原直也(朝日生命)の4選手が個人総合で上位4位に入り代表に選ばれた。

米田にとっては、やっとつかんだ日本代表団体メンバーの座だ。前回のシドニーオリンピックでは、あと一歩のところで代表から漏れた。2001年の世界選手権は、メンバーに選ばれながら世界同時多発テロの影響で日本が参加しなかった。昨年の世界選手権は、選考会となったNHK杯で失敗し、補欠に甘んじて仲間が銅メダルを獲得するのを眼の前でみた。

これらの悔しさをバネにして地道に練習に取り組んだ結果、昨年の全日本選手権初優勝。その後の二次予選もトップで通過し、今大会では2日間12回の演技全てで高得点を重ね、6年ぶりの優勝を遂げたのである。その安定感に関して、加納実監督が「何回やってもトップだろう。不安定要素がない」と語るほど。集中して練習通りの演技さえできれば、個人でも「表彰台のいちばん上に立つ姿をみんなに見せたい」という思いが叶う可能性は十分にある。

冨田は、跳馬でミスがあったものの、その他は落ちついた演技で2位に入り、世界選手権個人総合銅メダルの貫禄をみせた。世界選手権後に痛めた右肩の影響で満足のいく結果を残せない試合が続いていただけに、日本体操界にとっても一安心だ。「自分なりに技のキレや美しさをさらに高め、それをアピールしていちばん良い色のメダルを目指したい」と冨田。憧れの存在であるシェルボ(当時EUN、現ベラルーシ)が五個の金メダルを獲得し、その名を世界中に知らしめたのは、1992年のバルセロナオリンピックだ。あれから12年。今度は、冨田の番である。

3位に入った水鳥も、試練を乗り超えての代表入りだ。1999年の全日本選手権で右大腿骨を骨折。‘02年の全日本選手権では膝の前十字靭帯を損傷し、選手生活さえ危ぶまれた。それでも必死にリハビリに取り組み、その間に養った強い精神力にも支えられて、今回見事に代表の座を勝ち取った。高いレベルで安定している彼は、団体戦のトップバッターに向いたタイプと言える。

3大会連続のオリンピック出場を決めた塚原も、決して順風満帆ではなかった。1999年世界選手権で個人総合銀メダルを獲得しながら、メダルを期待されて臨んだシドニーオリンピックの惨敗を機に長いトンネルに落ち込んだのだ。2002年の全日本選手権では、個人総合29位という屈辱的な順位も経験した。

しかし、金メダリストである父・光男のアドバイスも受けながら、倒立という基礎から体操を見つめ直し、自信を取り戻した。「1回目は、出ただけ。2回目は頑張ろうという気持ちが空回りして失敗した。今回は、あまりメダルを意識せずに自分の納得いく演技をしたい」と語る塚原。今度こそ、最高の舞台で最高の成績を残してもらいたい。

残る2人には、鹿島丈博(セントラルスポーツ)と中野大輔(九州共立大4年)が入った。個人総合上位5位から8位の選手のなかで、各種目別得点の1位から3位の選手に与えられるポイント合計上位2人が選ばれるという選考システムの結果、昨年の世界選手権種目別金メダルのあん馬と鉄棒でポイントを重ねた鹿島と、ゆかと平行棒のポイントで二次予選13位から最後の最後に大逆転した中野がアテネ行きの切符を手にした。

この6人は、「現時点での最強メンバー」(加納監督)だ。つり輪を得意にしている選手がいないことは残念だが、本番と同じ器具をJISS(国立スポーツ科学センター)に設置して行う4回の合宿で課題を修正し、一人一人が着地までしっかり決められるようになれば団体での金メダルも見えてくる。

この夏、日本は、地獄からの復活を経験した男たちが中心となって、1976年モントリオールオリンピック以来18年ぶりの体操王国復活を目指す。

女子は、二次予選で1、2位だった石坂真奈美と大島杏子(ともに朝日生命体操クラブ)が逃げ切って代表を決めた。ともにゆかと跳馬を得意にし、石坂は平均台、大島は段違い平行棒をやや苦手としている。

「練習のときから失敗しないで、いいイメージで臨みたい」(石坂)、「今までの甘かった部分を見直し、自分に厳しく日々努力で最高の状態に持っていきたい」(大島)という決意を実践し、個人総合決勝に進出してもらいたい。

Text:中川和彦 Photo:AFLO SPORT

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