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シドニー2000


水泳・競泳 SWIMMING

見どころ

日本水泳界は今年、かつてない激震に見舞われた。4月15日から20日まで東京辰巳国際水泳場で行われたシドニーオリンピック代表選考会を兼ねた競泳の日本選手権で、31人が代表となった。その後、英スピード社の「高速水着」レーザー・レーサー(LR)着用問題が起き、選手やコーチ、水着メーカーにとどまらずに社会的に大きな関心を呼んだ。

代表選考に際し、日本水連は2005年から2007年までの年間世界ランキングを基に、1カ国2人ずつを選んで独自のランキングを作成し、メダル獲得レベルを「S」、決勝進出レベルを「I」、準決勝進出レベルを「II」とした派遣標準記録を設定。選考会の決勝で2位以上となり、IIを突破した選手を自動的に代表とする一発選考とした。標準記録「II」は国際水連が設定した2人エントリーの場合の標準記録より高く、選考会前の時点で自由形の男女計6種目が日本記録を上回る厳しい設定だった。選考会では、オリンピック2大会連続2冠獲得を目指す北島康介(日本コカ・コーラ)が男子200m平泳ぎで5年ぶりに日本新記録を出すなど活躍したが、日本新は計8と思ったほどタイムは伸びず、日本代表の鈴木陽二ヘッドコーチは「オリンピックは厳しい戦いとなる」と苦戦を予想した。代表は男子16、女子15と計31人でシドニーオリンピックから11人増え、オリンピックでは1964年東京大会の39人に次ぐ2番目の多さとなった。初出場は23人に上った。

選考会終了後、4月末の第1次合宿で事件は起きた。選手がLRを練習でテストしたところ、タイムの伸びが著しかった。男子800mリレーのメンバー、松本尚人(フリースタイル)のものを借りて泳ぐと、サイズが合わない場合でもタイム大きく伸び、北島を指導する平井伯昌コーチは「水着が一番心配。メダルの数が確実に変わる」と危機感をあらわにした。

日本水連は、競泳日本代表への水着や物品の提供契約を結ぶアシックス、デサント、ミズノを「オフィシャルサプライヤー」(OS)とし、オリンピック代表選手はこの3社製品から水着を選ぶ規定だ。ミズノは昨年5月末でスピード社とのライセンス契約を終了し、日本国内の販売はゴールドウインが扱うことになり、日本代表はスピード水着を着られなくなっていた。日本水連は5月7日、OS 3社に対してLRに対抗できる水着を5月30日までに開発するよう要望することを決定。「日本選手はスピード水着を着られないためにオリンピックでメダルが取れないのか」などの声が高まった。

その後、日本水連は6月6日〜8日のジャパン・オープンなどでLRやOS 3社の改良品を試した結果、選手の希望を基に6月10日に水着問題の結論を出すことを決定。ジャパン・オープンでは、驚愕の結果が出た。初日、男子200mバタフライでミズノ所属の松田丈志が1分54秒42の日本新記録を出すと、100m平泳ぎで59秒44をマークした北島まで、LRを着た選手5人が日本新を出し、一般紙までが1面トップで扱うほどのニュースとなった。最終日の男子200m平泳ぎでは、LRを着た北島がライバルのブレンダン・ハンセン(米国)の記録を一気に0秒99も更新する2分7秒51の驚異的な世界新記録を出した。3日間で日本新が17生まれ、うちLRを着た選手が16をたたき出した。選手は鍛錬の時期で、調整せずに出た大会での記録ラッシュは極めて異例で、LR効果が明確となった。北島が「素晴らしい水着」と言うなど選手は絶賛。これを受けて、日本水連は10日、シドニーオリンピックではOS 3社製品に限らず、スピード製品を含めて水着の選択を選手の自由とすることを決めた。11日、ミズノと契約している北島は、オリンピックではLRを着用する意向を表明した。

初めて日本国内で世界新記録を出した北島は「日本は腐ってないよと言いたい。みんなが世界に近づいた一瞬を感じた」とオリンピックへの手応えを語った。北島や松田のほか、男子200m背泳ぎの入江陵介(近大)女子背泳ぎの中村礼子(東京SC)や伊藤華英(セントラルスポーツ)、同200mバタフライの中西悠子(枚方SS)らにメダル獲得の期待が懸かり、金3、銀1、銅4で計8個のメダルを獲得した前回に並ぶ成績を目指す。

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