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ポジティブ/アファーマティブアクション

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意味

積極的改善措置あるいは積極的格差是正措置とも言う。

女性や人種的マイノリティなどは、これまで社会的・構造的差別によって不利益を被ってきたために、単に機会の平等を保障するだけでは事実上の平等を達成するためには不十分なため、一定の範囲で特別の機会を導入し、積極的に改善措置を取るという手法。

具体的な措置の内容として主に、

①クォータ制・バリテ(性別を基準に一定の人数や比率を割り当てる)

②ゴール・アンド・タイムテーブル方式(指導的地位に就く女性等の数値に関して、達成すべき目標と達成までの期間の目安を示してその実現に努力する)、

③支援策の設定・環境整備

がある。

数値目標の設置や女性やマイノリティの積極的な任用などが当たる。

1979年の国連総会で採択された女性差別撤廃条約第4条には、事実上の男女平等を促進するためのポジティブ/アファーマティブアクションを、差別と解してはならないと明記されている。

同時に、これらの特別措置は「機会及び待遇の平等の目的が達成されたときに廃止されなければならない」とも書かれている(内閣府男女共同参画局, n.d.; 辻村, 2008)。

解説

スポーツ界のポジティブ/アファーマティブアクションは、1996年の国際オリンピック委員会(IOC)を中心に高まっている。

1996年にスイスのローザンヌで第1回世界女性スポーツ会議が開催され、「女性スポーツを促進するための行動計画を作成・実行するために、少なくとも10パーセントの女性を含む特別委員会やワーキンググループを設置する」よう国際競技連盟(IF)と国内オリンピック委員会(NOC)に勧告した。

第2回世界女性スポーツ会議

2000年に開催された第2回世界女性スポーツ会議(パリ開催)では、

①2000年の12月31日までに意思決定の立場に就く女性の割合を少なくとも10パーセントにし、この目標に達しなければ、その理由を吟味し、実行計画を起草し、必要であれば2001年まで延長する、

②2005年までには少なくとも20パーセントの女性をスポーツ組織の意思決定の立場に引き上げることが要請された(IOC, n.d.)。

「女性スポーツ専門部会」

このようなIOCの動きを受けて、JOCでも2003年から「女性スポーツ専門部会」が立ち上がり、特にJOCと国内競技連盟(NF)の女性役員登用を促進するための事業や、女性スポーツ賞の設置などをおこなっている。

国際女性スポーツワーキンググループ(IWG)

IOC以外のポジティブ/アファーマティブアクションとしては、国際女性スポーツワーキンググループ(IWG)の取り組みがある。

1994年より4年ごとに世界女性スポーツ会議を開催し、2010年の第5回会議(シドニー)では、スポーツ組織の役員に女性の割合を増やすための「シドニー・スコアボード」が作られ、2014年の第6回会議(ヘルシンキ)では、第1回会議で採択されたブライトン宣言をアップデートさせた「ブライトン・プラス・ヘルシンキ2014宣言」が採択された。

この宣言に添付された勧告文には「2020年までに意思決定の立場に40パーセントの女性を採用する」という提言が含まれている(JCRWS, n.d.)。

文献

辻村みよ子(2008)ジェンダーと人権:歴史と理論から学ぶ. 日本評論社:東京.