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山田博子

インタビュー

日本ラグビーフットボール協会 理事

山田博子さん

きっかけ・理由

スポーツエージェント就職と国際大会でのボランティア通訳

全日本野球連盟理事になったきっかけ

語学力を生かした仕事に就きたいと思い、スポーツエージェント会社に就職し、たまたまメジャーリーグ担当になりました。退職後、2004年の富山で開催された女子野球の国際大会でボランティア通訳を担当しました。女子野球を中心に活動していましたが、語学の力を生かして世界大学野球大会やU-18アジア大会のボランティア通訳を担当して評価され、IFのスタッフとしても従事していたことから、NFから理事のお話をいただきました。2017年6月から全日本野球協会、初の女性理事に選任されました。

理事に選ばれた理由:語学力が評価

「女子野球のほうに語学ができる人がいるらしい」となり、アマチュア野球でバイリンガルのスタッフを探すのが難しいとのことで「日本で国際大会をやるときにはお手伝いします」という感じで活動していました。世界大学野球大会や、日本高野連のU-18アジア大会で語学力を発揮したことで、NFから認知されたのだと思います。 女性理事がいないNFとして野球が該当しており、これは良くないという話になったときに、たまたま私がいろいろな団体のお手伝いをNFのなかでしていたので、声がかかったのかなと思います。国際大会を日本でしていたときに、IFとNFをつなぐことができる貴重な存在と思っていただいたのだと思います。NFの理事になる前にIFのスタッフとしても従事していたことから、IFの情報が取れるとか、戦略的なことで打診があったのかなと思います。

IFとのつながりがきっかけに

理事になることへの戸惑いはとてもありました。IFとはつながりがありましたが、NFには知らない人がたくさんいました。しかし、キーとなっている人たちから、国際化や今後の戦略なども踏まえて、どうしても語学ができて、国際連盟とつながっている人が必要だということで評価してもらえました。私が何か力になれるのなら、と思いました。

気づいたこと

学閥とお金の考え方

企業との違い:「教育」にもお金が必要

学閥は感じます。野球の歴史も長いので、学校のしきたりや歴史上のいろいろな問題、派閥は強くありますね。企業は利益を追求し、それを良くするためにさらに利益を追求し、それによって職員はお給料が増えてモチベーションが上がるという仕組みです。しかし、アマチュア野球界の中では、「お金を稼ぐことは悪だ」という考えが存在しています。お金を稼ぐことは悪ではなく、大切なのはお金をどのように使うかであって、それが正であれば正だと私は思っています。お金を稼ぐという行為自体が悪という考え方にはいまだに納得がいかないし、わかりません。野球の普及や教育のためにも、お金は必要です。

大変・戸惑い

IFとNFの狭間で

理事になって戸惑ったこと、大変だったこと

IFとNFの間に挟まってしまうので、その調整がとても難しいです。時間をかけて説明しなくてはいけないこともあります。IFの理事でもありNFの理事でもあるので、意見が分かれたときに、そこの妥協点を見つける作業が少ししんどいことはあります。

やりがい

こんな経験は二度とない!

理事としてのやりがい:ボランティアから常務理事へ

国際的な仕事はもともと好きでしたが、男子野球のほうも含めて国際的なところを全体として見られるというのは、すごくチャレンジングでしたが、やりがいもあると思いました。年齢的にも結構しんどいなかで、こうした経験ができるということはなかなかないので、これは人生のなかで自分のキャリアとしてもキーとなるかなと思いました。大変になることはわかっていましたが、迷いはなく、すぐにお引き受けしました。素晴らしい経験ができて、自分が成長できるかな、お役に立てるかなと思いました。

現在、IFの女子野球委員会のなかで、コミッション委員長を担当していますが、そこでは世界の女子野球人口を増やしていくということと、世界のNFに女子野球プログラムを増やしていくということをしています。それが楽しく、またどんどん増えているので、とてもやりがいを感じています。自分の結果にもつながり、IFの会長にも「おっ、こんなに増えたんだ」と驚かれています。

克服

根回しと自負

どう克服してきた/しているか

私はどちらかというとよく発言するほうですが、躊躇するような場合は、根回し的なことも日本の社会では必要ですので、キーとなる人に先に資料を持っていったりします。自分の意見や物事をうまく進めるためには、そういうこともします。駄目だと言われることもありますが、誠意を伝える努力はします。また、あまり良く思っていない人でも、私のほうから話しに行くようにはしています。

女性だから、少し治外法権のようなところがあり、アドバンテージがあるかもしれないと感じています。野球界初の女性理事というので大事にしてもらっています。IFの情報を会議で伝えても、漏れたり流れたりすることがあります。委員会にその情報を渡すと、深く受け止めてくれる可能性が高いんです。委員会に足を運ぶと、信用してくれたり、情報を持ってきてくれるというところで、ちょっと見方が変わると思い、そういう努力はしています。

IFからのダイレクトな情報を持っているという自負があるので、そこはうまく利用しています。それは結果的にNFにとっても良いことですから。それから、プレゼンテーション能力は重要です。IFのなかでプレゼンテーションができない人は厳しいです。プレゼンテーション能力は、JOCのJISLAという国際人養成アカデミーで学びました。JICAの力も大きかったですね。

選び方

向上心と社会的自立

キャリアの選び方

自信があったかどうかはわかりませんが、やりたいという興味と向上心があって、やってみて駄目だったら「ごめんなさい」と言おうと思っています。でも私は正直、自分のビジネスも会社もあるので、野球界に追放されてもご飯は食べていけるという思いがあり、それが自信になったのかもしれません。それなら飛び込んでやってみようというか、やってみたいというふうになりました。

理事が終わって、このぐらいの時期で卒業かなとなったときに、次にスタートするビジネスの準備はしています。

支援・試み

理事になるための講座や機会提供は必要

女性理事が増えるために必要な支援・試み

せっかくの女子野球ですので、優秀な女性は積極的に理事に登用し、将来的には女子野球連盟の理事の半分以上は女性にしたいと思っています。ただ、アスリート出身者の理事に対する消極さは少し感じています。ですので、理事になるための講座ではありませんが、それが大会運営などにつながっていくような、経験する機会を提供することは必要だと思っています。また、男性理事とうまくやっていくためのノウハウなども伝授していく機会が必要かもしれません。決して難しいものではなく、競技経験もなく知識もない私ができているということも、モチベーションにしてほしいと思っています。

女性はあまりタイトルやお金に興味を持ちません。自分がやりたいこと、自分が正しいと思うことをしたいという気持ちが強いので、「それをしたいんだったら、理事というポジションを上手に使いなさい」というアプローチをしたいです。「理事という肩書きを使って、上手に自分のやりたいことを目指したらどうかしら」という、「自分のしたいことをサポートしてもらえるから」というアプローチをしたほうが、理事になることについて怖がらせずに済むかなと思います。

経験を活かす

自分の強みを活かす

企業(これまで)の経験が理事の仕事に生きること

好きな仕事をするなかで、常にいろいろなものに興味を持つことを忘れないようにしています。IFの委員をしていると、いろいろな国の人とお会いしたりご飯を食べに行ったりするので、語学の特技を生かして、その国の曲を1曲歌えるようにしています。歌うと、その国の人たちに喜ばれますので。

ずっと家が自営業で、家族もみんな自営業なので、常にいろいろな人が家に来ていたせいか、人を喜ばせたいという気持ちがあるのかもしれません。自分がやりたいことを通すときには、人を巻き込まなくてはうまくいきません。人を巻き込むというのは必要なアクションで、これまでの経験が生きているのかもしれません。

メッセージ

力を入れ過ぎないこと

次に理事になる人へのアドバイス

力を入れ過ぎないこと。「いい加減」が必要かな、ということはよく思います。相手によって加減を変えたりすることの柔軟性とか。もちろん、「私はこうなんです。これがしたいんです」というのも、パワーとしてとても大事です。でも、男性理事は敵ではありません。一緒にやっていく仲間だから、思いを伝えるときほど「いい加減」でやるのがいいのかなと思います。