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フェアプレー

スウェーデン・キエル兄弟
「人類愛の金メダル」と讃えられた海の男のフェアプレー


東京大会(1964)のヨット競技フライングダッチマン級レースは、10月12日から江ノ島のヨットハーバーで行われました。2日目までは穏やかな天候が続いていましたが、3日目の海上は瞬間風速が15メートルにも達するあいにくの荒天でした。

実際にレースがスタートすると、悪天候のために沈没・故障する艇が続出しました。しかしその中で、スウェーデンのラース・キエル、スリグ・キエルの兄弟選手が操縦するハヤマ艇は先頭グループを好調に追い上げていました。しかしそのとき、前を走るダウ/ウィンター組のオーストラリア艇が突風により大きく揺れ、ウィンター選手が海へ投げ出されてしまったのです。ダウ選手はといえば、横倒しになった艇にしがみつくのが精一杯という状況でした。

それに気付いたキエル兄弟は、レースを中断して100メートルも逆走し、ウィンターの救助にあたりました。そして、監視艇がオーストラリア組を助け上げるのを見届けてからレースを再開。結果、11位でのゴールとなりました。

翌日、この一件を報道した新聞記事には「人類愛の金メダル」という見出しが付けられていました。それに対して兄弟は、「海で遭難事故を見つけたら、何を置いても救助に向かうのは海の男として当たり前」と笑顔でコメントしたそうです。

東京オリンピックの江ノ島ヨットハーバー桟橋

東京オリンピックの江ノ島ヨットハーバー桟橋
写真提供:フォート・キシモト