コラム/インタビュー

アスリートメッセージ

アスリートメッセージ まだ世界に通用するとは思わないけど、北京はもちろん勝ちにいくし、結果も出したい。

文:折山淑美

アテネオリンピック王者との対戦。
そして北京オリンピック出場権獲得へ。

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ナショナルトレーニングセンターにて、トレーニング中も真剣なまなざし。
(写真提供:フォート・キシモト)

スラリとした身体、傷ひとつない端正な顔。初めて会った川内将嗣は、一般的に想像するボクシング選手とはまったく違っていた。

「アマチュアボクシングというのはプロとは違って、ヘッドギアもかぶっているし全然ケガをするようなスポーツじゃないですよね。自分もよく『プロへいくの?』って聞かれるけど、たぶん自分がいっても通用しないと思うし。また逆にプロがアマチュアに来ても通用しないと思うんです。」
川内は落ちついた表情で答えた。

2007年の10月からシカゴで行われた2007年アマチュアボクシング世界選手権で、ライトウェルター級の川内は快挙を達成した。ベスト8へ進出して北京オリンピック出場権を獲得すると、そのまま準々決勝も突破して銅メダルを獲得。1978年フライ級の石井幸喜以来、29年ぶり史上2人目のメダル獲得を果たしたのだ。

日本のアマチュアボクシングは、前回のアテネオリンピックでは辞退者が出て、最後の最後で出場権を1枠だけ獲得した。それが今回は最初のオリンピックレースで出場権を獲得。しかも、1回戦ではアテネオリンピック王者のマヌト・ブンチュムノン(タイ)を破る番狂わせを起こしての快進撃だった。

「最初に組み合わせを見たときは、相当運が悪いと思いましたね。わざわざ飛行機で何時間もかけてアメリカまで行ったのに・・・・・・。1回でも多く勝ちたいと思っていたけど、いきなり金メダリストと対戦ですからね。アテネの試合をビデオで見たことがあったけど、相当強いと思っていたので。もし彼と当たったらどういうボクシングをしようかと考えてたけど、その答えが出る前に当たってしまったんですよ(苦笑)。でも逆に、負けて当たり前と思って吹っ切れたから良かったんですね。負けたって誰もが納得する相手でしたから」

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ナショナルトレーニングセンターにて、シャドーボクシング。
(写真提供:アフロスポーツ)

変な緊張感も力みもなく臨めた試合。グローブを交えてみると、予想外に自分のパンチが当たり、相手のパンチも見えていた。不思議な気持ちになっているうちに1Rが終わると1ポイントリード(4対3)していた。

「アレッ、もしかしたら・・・・・・。このままでは終わらないだろうけど、ひょっとしたらいけるかもしれないな」と思った。そうなれば何も失うものがない者の方が勢いづく。結局14対9で王者を下したのだ。

「もし世界選手権が初めての海外遠征だったら、絶対に負けていましたね。その前の4月にタイで行われた第29回キングスカップ国際トーナメントで海外へ行かせてもらって、初めて外国選手と戦えていたことが良かったと思います。その時は2回勝って準々決勝で負けたけど、相手のボクシングは日本とはまったく違いましたから。構え方もいろいろあれば、パンチの打ち方も足の使い方もいろいろある。全部が知らないことで、すごく面白かったんです」

日本のスタイルはガードを上げて構え、足を止めて打ち合うパターンが多い。だがアマチュアボクシングは、有効打のポイントを獲得し合うルール。軽いパンチでも当てればポイントを獲得できるため、外国選手は足を使ってのヒット・アンド・ウェイ戦法を徹底してくる。さらには、ルールの盲点ギリギリのところをついてくるいやらしさもある。そんなボクシングを知るとともに、タイ人選手とも試合をしていたことが、世界選手権の1回戦で活きたのだ。

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