大会







第29回オリンピック競技大会(2008/北京)

【スペシャルコラム 第1回】 "オリンピック"という大会の難しさ

文:折山淑美

ビッグウエーブを引き起こした、内柴正人のオリンピック連覇


写真提供:アフロスポーツ
大会2日目、主役に躍り出たのは、2004年アテネ大会での金メダル獲得以来、「辞めようと思う時もあった」と言うほどの、苦しい時期を過ごしてこの大会に臨んだ内柴正人(柔道男子66kg級)だった。
「1回はチャンピオンになりたいと思っていて、アテネでそれを実現して・・・・・・。それからノラリクラリと現役を続けてきたけど、今年になってから少しずつ、もう一度オリンピックへ出られるかもしれないと思うようになったんです」
夢の舞台に再び立った彼にはプレッシャーもなかった。苦しい戦いが予想されたが、初戦の一本勝ちで勢いをつけると、準決勝でも2007年世界選手権2位のアレンシビア(キューバ)を残り6秒の巴投げで有効を取って優勢勝ち。ダルベレ(フランス)との戦いとなった決勝では、もつれ合って転がったが、そのまま腕を決めた縦四方固めで仕留めて一本勝ちした。
「最初に自分の背中がドスンと畳に落ちたから『ヤバい!』と思ったんです。でも目の前に相手の手があったから、何となくそれを取っていましたね。自分でもどういう技が決まったのかわからなかったし、主審の声も相手選手の“まいった”の合図もわからなくて、思い切り締めたんです。申し訳ないことをしましたね」と、腕の関節を痛めた相手への労りの言葉を口にする。この勝負、微妙な判定だったという声もあるが、ジックリ見直せば内柴が後ろに倒れながら技を仕掛けている、間違いない勝利だ。
強豪が別のグループに入るという組み合わせ。さらには2005年、2007年世界選手権優勝のデリル(ブラジル)や、今年の欧州選手権で3連覇を達成したケデラシバリ(グルジア)が早々と負けるという幸運にも恵まれた。

オリンピックイヤーになって復調してきたのもまた、強運の証だ。もちろん、そんな強運をシッカリと自分の元に引き寄せるのも、それだけの力があってのことだ。 アテネ大会の金メダルがフロックではなかったことを証明した内柴。初日で起こせなかったビッグウエーブを、オリンピック連覇という偉業で引き起こした。

(2008.8.13掲載)

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