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2026.08.05 愛知・名古屋アジア大会特集

【特別インタビュー&Special Video】アジア大会3冠の絶対王者が挑む「連覇」と「自分超え」。自国開催の舞台で子どもたちに届ける「夢」(ソフトテニス・上松俊貴)

上松 俊貴(ソフトテニス・岡山県出身)

前回の杭州アジア大会で全3種目金メダルという偉業を成し遂げ、名実ともに世界の頂点に立ったソフトテニス界の至宝・上松俊貴。競技の枠を超えたアグレッシブなプレースタイルと、逆境さえも力に変える強靭なメンタリティを持つ彼が、3度目の大舞台となる「愛知・名古屋アジア大会」に挑む。自国開催のプレッシャーを「ワクワクする」と言い切る絶対王者に、競技の魅力、陣形の奥深さ、そしてアスリートとして未来の子どもたちへ繋ぐ想いを聞いた。

ソフトテニスの「魅力」

――ソフトテニスを始めたきっかけを教えてください。

 幼稚園のときはバドミントンをしたり、小学生のソフトボールに混じって遊んだり、とにかく運動することが好きでした。父と祖父がソフトテニスをしていた影響で小学1年生の終わり頃に始めました。同じ小学校の先輩や友達が近くでソフトテニスをしていて、友達に誘われて一緒に行ったのが初めてでした。それから自分が行きたいジュニアクラブに入って、本格的にやり始めました。

――ソフトテニスの魅力を教えてください。

 コートの大きさなどは硬式テニスと同じですが、ラケットやボールの特性というのは大きく異なります。またソフトテニスはダブルスがメインの大会が多く、多種多様な陣形がみられます。ボールの回転に関しても「ドライブ」と「カット」と言われる球種の性質があるなどいろいろな球種があり、その中でボールの打球音やスピードの差というのはソフトテニスの魅力なのかなと思います。

――ソフトテニスならではの独特な打球音やスピン、球の形も大きく変わりますよね。

 そうですね。ソフトテニスはゴムなので、打ったボールに対してボールの形がギュっと縮んでまた飛んでいき、回転がかかるといろんな変形をするので、ハードコート、クレーコート、オムニコートで跳ね方も全然違うところが魅力のひとつです。ダブルスのスピード感あふれる戦略的なお互いの動きやボールの拾い合い、そしてフィニッシュとなる「エース」を奪うボールは見ていても非常に気持ち良く、そういうところが魅力なのかなと思います。

――ソフトテニスはテクニックがいると感じますが、実際に新たに競技を始めようとするお子さんにとって、難しさやとっつきにくい印象はあるのでしょうか?

 ソフトテニスは当てただけでは飛ばず、しっかり振り切る技術やスキルが必要になりますが、ジュニアやクラブだけでなく中学校の部活にも多く、関われる分野が広いうえに、最初はボールが当たっても痛くないなどケガも少ない部分があるため、始めやすいと思います。

――観戦する時のポイントを教えてください。

 前衛と後衛というくくりが決まっているものの、今回の愛知・名古屋アジア大会に関しては、ハードコートでの実施のため、前衛・後衛関係なく、後衛が前にいってネット付近でノーバウンドで処理をしたり、スマッシュを打ったりします。それを相手が拾ったりするなかで、気づいたら急に「ダブル前衛(ダブルフォワード)」の陣形になっていたり、超至近距離戦の「ダブル前衛対ダブル前衛」や、両方下がって「ダブル前衛対ダブル後衛(ダブルバック・2バック)」の攻防戦になっていたりと、ラリー中に陣形が変化します。一連の動きのなかでいろいろなパターンを観ることができるので、誰かに注目してその動きの凄さを観るのも楽しいですが、遠くから観たときにお互いが行ったり来たりして拾い合っている様子にも注目して観てもらえたら楽しいと思います。

――「陣形」はどのタイミングで動くといった決まりはありますか?

 陣形の動きは下から回転をかけるカットサーブのあとが一番激しく、両方が前に行ったり、スイッチしたりするパターンがありますが、愛知・名古屋アジア大会の種別は「シングルス」「ミックスダブルス」「団体戦」なので、ダブルスとシングルスの両方が観られる団体戦の魅力だけでなく、ゴムボールの特性から硬式に負けないコートカバーリング力や、大きく曲がって入るような色々な球種が観られるシングルスにも注目してもらえたらと思います。

自身の強みと「超トップ」から受ける刺激

――上松選手が強みとしているプレーや、観戦する際に注目して観てほしいポイントはありますか?

 私は長身で体にも恵まれておりパワーもあるので、それを活かしたアグレッシブで攻撃的なプレーに注目してもらいたいです。遠いところまで動いて取るスピード感あふれるボレーはもちろん、得意なシングルスにおいて多種多様な球種やいろいろなカット、普通のストロークを使い分けて練る戦略も見どころです。1人でコートを守るコートカバーリング力やフィジカル的な要素を観てもらって、「すごいな」と思ってもらえたら嬉しいです。

――体格を維持するために、食事など、普段気をつけていることはありますか?

 食事は気をつけています。日本代表での測定で目標数値を出し、シーズン中もウエイトトレーニングを取り入れているので、ここ数年で筋肉量や体重を増やし、いいコンディションを維持できています。根本にある食事と睡眠はバランスを意識し、栄養価の高い食事や、十分な睡眠時間を必ず確保するよう心がけています。恵まれた体格を有利に使えるよう、食事、睡眠、トレーニング、練習量を自分で計算して数値に出し、いい状態をずっと維持できるようにしています。

――海外の選手と対峙したときに、体格差を感じますか?

 海外の選手は私より身長が大きく、パワーでも上回ることがあります。しかし、それに負けないよう入社してからの5年間、コート内でのフィジカルやスタミナを海外選手に引けを取らないくらい強化してきました。身長差は埋められませんが、それ以外の部分で差をつけて、トータル的なテクニックで試合に勝つことが一番の目標です。自分に何が足りないかを監督やコーチ、トレーナーに相談しながら進めることで、課題が見えてきて真っ直ぐ取り組むことができます。そうやって支えてくださるチームや日本代表のスタッフ、トレーナーさんがいてくれることは、非常にありがたいなと思っています。

支えを力に変えるデュアルキャリア

――実際に仕事をしながら選手としても活動するデュアルキャリアについて、チームメイトとの関係性、両立の難しさについて教えてください。

 同じ会社に私含め3人の代表がいます。大会が近づくにつれ、練習頻度や内容が濃くなり選手それぞれの気持ちの高ぶりもおのずと出てきます。色々な緊張感も中和しながらみんなで高め合えたらなと思っています。所属企業のソフトテニス部は、間違いなく日本一もしくは世界一と言える最高の環境です。私は会社の看板を背負って練習だけをしていればいいという問題ではないと感じています。大学を卒業して大人になったときに、業務にも携わっていれば社会人としての学びも非常に多く、引退後のセカンドキャリアにも良い影響を与えるため、現在は最高の環境で人として大きく成長させてもらっています。また、職場の人が応援に来てくださりますが、社員さんたちが私たちと一緒に頑張ってくれているからこそ、練習に集中できたり、遠征に行かせてもらえたりするのだと思います。そこに感謝をしながら、普段仕事ができる時間があれば仕事をして、少しでも恩返しできるように部として取り組んでいます。

自国開催「愛知・名古屋アジア大会」にかける思い

――過去、アジア大会に出場されていますが、自国開催の愛知・名古屋アジア大会にかける思いをお聞かせください。

 自身3度目の出場となりますが、金メダルが獲れず悔しい思いをしたジャカルタ・パレンバンアジア大会を経て、杭州アジア大会では全3種別で金メダルを獲得し、自分がここまでやれるのだという自信をつけて自身を大きく変えることができました。今年は日本の愛知・名古屋で開催されるということで、プレッシャーなども感じるかもしれませんが、2大会連続での3つの金メダル獲得という私にしか狙えないタイトルに向けて、自分の記録を超えたいなという気持ちや、目標にしていた大会でどれだけ自分の色やプレーを出せるかというワクワクする楽しみな気持ちでいっぱいです。私にしか味わえないものに対して存分に自分をアピールできるように頑張りたいと思います。

――自国開催での記録への挑戦やご自身の目標があるなかで、緊張やプレッシャーはあまり感じないタイプですか?

 もちろん感じる部分はありますが、それは私だけが変に呪われたようにかかっているわけではなく、どの国のどの競技の選手もそういうプレッシャーのなかで戦って勝っているので、そのなかで勝つことができたらより嬉しさも感じられて自信にもなります。過去の自分を超えるという嬉しさはその舞台でしか乗り越えられない部分だからこそ、挑戦することが非常に楽しいですし、アスリートである限り自分が勝ち続けるためにはそういう挑戦が必要だなと思っています。

応援の力

――アジア大会での功績も踏まえて、ご家族やご友人など周りの方々からの反響はいかがでしたか?

 国際大会やアジア大会を含めて、優勝するたびに幼いときからずっと育ててくれて色々な大会に観に来てくれている家族が嬉しそうにたくさんお祝いしてくれました。それが私自身の頑張る源でもありますし、ファンの方やチームスタッフ、チーム関係者などから「おめでとう」と言ってもらえるのはこれからの励みになります。そういう方たちがいるからこそ頑張れていると強く感じています。過去の栄光にすがる気持ちは全くなく、常に新しい自分を求めて前を向いてコツコツと毎日頑張ることで、私のことを見てくださる人に何かを感じ取ってもらいたいなと思いながら、周りの人に感謝して私らしく頑張っていきたいと思っています。

――自国開催となれば海外で実施するときより応援される方々も多いと思います。応援するときの競技特有の掛け声のようなものはありますか?

 特に団体戦などでは1ポイントごとに激しく喜びます。普段からいっぱい声を出して応援してくれるファンの方たちもいらっしゃいますし、掛け声などは気にせず、自分の思うままに恥ずかしがらず楽しんで声を出して応援してもらえるのが一番だと思います。私たちも前向きな言葉を掛けられると次のプレーに向けて頑張ろうと集中してできるキッカケになるため、拍手やガッツポーズなど何でも良いのでどんどん声を出して応援してもらえたらと思います。

――たくさんの選手が「応援が後押ししてくれる」という話をたくさんされていますが、実際にそういった声掛けなどが後押ししてくれた瞬間などはありましたか?

 団体戦になるとチームに対しての応援の熱量がより大きくなります。前回の杭州アジア大会、去年のアジア選手権、その前の世界選手権でもそうでしたが、ファンや家族、チームの選手が一緒に応援してくれることが大きな力になっています。チームで戦っている以上、すべてがリードした状態で進むわけではなく、挽回しなきゃいけない場面やメンタル的・体力的にきつい部分もあります。しかし、応援席やベンチの選手が声を枯らして応援してくれるからこそ、逆境のなかでも踏ん張って勝利を掴む場面が多々あります。その一番のキッカケになったのが、杭州アジア大会でした。3冠を取るための最初の1種目目で、私自身にとっては団体戦の初優勝がかかった舞台です。シングルスで出させてもらった韓国戦ではフルセットまでもつれ込みましたが、最後まで応援の人が声を出し、ベンチでもいっぱい声を掛けてくれました。そのおかげで、逆境を楽しみながら乗り越えることができ、自分のなかで「ひとつステージを上げたな」と感じることができました。

――そのプレッシャーがかかる逆境を背負った状態でありながら、本番の舞台で楽しむことができるという感覚がすごいですし、他の人とは違いますよね。

 他の人の心境は分からないので何とも言えないのですが、私は色々なものを背負ったりする部分ももちろんあるかもしれないものの、基本的にはそれを背負うことができているのもこれまで自分が頑張って成果を上げているからこそのものだと思っています。背負っているからといって、それがマイナスになってしまうのは非常にもったいないなと思います。だからこそ、背負っているものもプラスに変えるくらい頑張りたいと思っています。実際にそうやってプラス、プラスに切り替えて頑張れており、そうすることでより背負うことができるものも増えてくると思っています。

アスリートとして子どもたちに「夢」を届けたい

――今後ソフトテニスをどのように認知してもらいたいですか?

 新しく始める小中学生に「楽しい」と思ってもらいたいです。ただ、普及活動はもちろんやりつつも、やはり現地に少しでも観に来てもらいたいです。観ることで「すごいな」と心で感じてもらい、憧れや夢を持つキッカケを作りたいなと思っています。トップの選手が世界一を目指して頑張るだけじゃなく、未来の子どもたちに夢を与える。「自分たちは夢を持ち、なおかつ子どもたちに夢を与える」という、両方の夢を届けられたらいいなと思っています。「私たちにしかできない魅力的なプレー」を観てもらい、「こうなりたい」と思ってもらえることが一番いい普及活動になるのではないかと思っています。連盟の人や会社と協力し、新規の子どもたちにどう入ってもらうかを考えていきたいです。まずは、夢を与えたいなと思います。

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■プロフィール

上松 俊貴(うえまつ としき)
1998年生まれ、岡山県出身。小学1年生からソフトテニスを始める。長身と恵まれた体格を活かしたパワー溢れるアグレッシブなプレー、卓越したコートカバーリング力を武器に頭角を現す。2018年ジャカルタ・パレンバンアジア大会に続き、自身2度目の出場となった杭州アジア大会では、男子シングルス、ミックスダブルス、男子団体の全3種目で金メダルを獲得し「3冠」を達成。名実ともに世界のトッププレイヤーとなる。現在はNTT西日本ソフトテニス部に所属し、仕事と競技を両立するデュアルキャリアを体現しながら、自国開催の愛知・名古屋アジア大会での連覇、そして未来の子どもたちへ夢を届けるための普及活動にも力を注いでいる。

注記載
※本インタビューは2026年6月2日に行われたものです。

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