かつて日本スポーツクラブやレスリング界の発展に携わり、日本における「クラッシュ(Kurash)」の普及に尽力してきた日本格闘競技連盟の鎌賀事務局長。愛知・名古屋アジア大会での実施を控え、競技の起源や歴史的背景、そして大会へかける想いについて聞いた。

――「クラッシュ」という競技に携わられたきっかけについて教えてください。
八田一朗さん(元日本レスリング協会会長)が昭和45年に設立したスポーツ施設でスポーツインストラクターをしていました。施設にはレスリングやサンボのクラスがあり、そのお手伝いをしていました。日本サンボ連盟の事務局長時代、ウズベキスタン発祥の「クラッシュ」という競技に出会い、国際クラッシュ協会の設立総会に出席したことが始まりです。その後、2009年に日本レスリング協会の傘下として「日本格闘競技連盟」が設立された際、クラッシュやサンボなどを統括し、日本オリンピック委員会を介して国際大会へ選手を派遣するルートの整備に携わってきました。
――初めて観戦する方に向けた、競技の魅力や見どころを教えてください。
クラッシュの一番の魅力は「投げ技のみ」という点です。寝技などの細かい攻防がなく、投げの豪快さで勝敗が決まるため、観客にとっても非常に分かりやすいのが特徴です。
また、シルクロード沿いの国々に伝わる民族格闘技の1つであり、元々は五穀豊穣の祈願や、子どもの誕生・結婚式といったお祝い事の余興(勝利者に羊が贈られるなど)として親しまれてきた深い歴史的・文化的背景もあります。
――TEAM JAPANの強みはどこにありますか?
TEAM JAPANの選手は柔道経験者が多く、力任せにならず相手を「崩して投げる」という技術的な丁寧さやスピード感に優れています。海外選手の圧倒的なパワーに対して、そうした技術やスピードでどう挑むかが大きな見どころになります。

――普及活動をする中で感じた手応えはありますか?
過去に出場した大阪商業大学や埼玉大学、九州学院高校の柔道の選手がメダルを獲得してくれたことです。全日本クラスでなくても構わないので3番手や4番手の選手が興味を持って、出場してくれれば非常にありがたいです。他国の選手が柔道や相撲をやるように、類似するスポーツに取り組むことで、何か芽生える部分もあると思います。そこで得られたものを競技に活かしてくれればいいのかなと思います。
――国内での普及を進める上での課題についてお聞かせください。
日本国内では認知度がまだ低く、練習や大会を行うための専用施設・場所を確保することが難しいという課題があります。また、現在は専業のクラッシュ選手がおらず全員が柔道などをメインとする兼任選手であるため、選手層を確保する上で柔道界や各所属団体との調整や理解を得る点にもハードルが存在するのが現状です。
――海外での活動における苦労や、今回の愛知・名古屋アジア大会への期待はいかがでしょうか?
非オリンピック競技であるため国からの強化費が出にくく、遠征費など資金確保の面で非常に苦しい状況があります。そのため選手が頻繁に海外遠征へ行ける環境にないこと、試合スケジュールの変更など海外特有の不確定要素に対する現場での調整力も求められます。
だからこそ、今回の愛知・名古屋アジア大会は非常に大きなチャンスです。国際舞台で海外の強豪と戦う経験が選手の成長に繋がりますし、国内での認知度向上や新たな選手層の開拓に向けた大きなきっかけになると期待しています。

――最後に、今後の展望と出場する選手たちへのメッセージをお願いします。
愛知・名古屋アジア大会などを通じてクラッシュの魅力を発信し、国際大会への出場を目指す若い選手が挑戦できる環境を広げていきたいと考えています。
選手たちには「あの時こうしておけばよかった」という悔いだけは絶対に残さない戦いをしてほしいですね。一生懸命やって負けるのは仕方ないですが、後悔して負けるような試合は良くないと思っているので、全力で立ち向かってほしいです。
鎌賀 秀夫(かまが ひでお)
スポーツ会館のスタッフとしてさまざまなスポーツや格闘技の拠点・環境整備に携わる。サンボやクラッシュなど多種多様な組技系競技に造詣が深く、日本サンボ連盟事務局長などを歴任。1998年9月にウズベキスタンで開催された国際クラッシュ協会の設立総会を契機に日本国内での「クラッシュ」立ち上げに尽力。その後、日本レスリング協会傘下の「日本格闘競技連盟」の設立および運営に携わり、非オリンピック格闘競技の国際大会派遣や国内普及・選手育成・環境整備活動に長年尽力している。
注記載
※本インタビューは2026年7月29日に行われたものです。