兄の背中を追って格闘技の世界に飛び込み、未経験からプロの舞台へと駆け上がった片山智絵。大学院での研究や会社員としての仕事と練習を両立させながら、その小柄な体躯をスピードとスタミナでカバーし、着実に実力を磨いてきた。追加種目に決定した「愛知・名古屋アジア大会」に挑む彼女に、総合格闘技の魅力、多忙な日々を支えるモチベーション、そして自国開催の舞台で「日本が一番強い」と証明するための決意を聞いた。

――競技を始めたきっかけを教えてください。
コロナ明けに運動不足を感じていたこともあり、格闘技を始めました。きっかけは3歳上の兄(片山将宏選手/総合格闘技)の影響です。兄が総合格闘技でプロデビューする時の試合を観て、面白いなと感じました。また、兄を応援する立場として自分もその競技のことをもっと知ってみたいと思ったことも、始めた理由です。
――お兄さんは片山選手にとってどのような存在ですか?
兄は、私が格闘技を始めてからプロになるまではずっと憧れの選手で、いつか同じ大会に出たいなと思える存在でした。プロになってからは、家族としてしっかり支えてくれるとともに、客観的なアドバイスをくれる頼れる存在になっています。
――そんなお兄さんと大会前にやり取りはあるのでしょうか?
試合の時は、必ず「何時からなの?」と気にかけてくれます。先日は海外での試合だったのですが、日本の時間に合わせて試合を配信等で見てくれていました。3日間の大会中も、毎日試合が終わるごとに電話をくれて、「次の対戦相手はこうだから、こう戦った方がいい」といったアドバイスを具体的に伝えてくれました。オブラートに包まずハッキリ意見を言ってくれるので、非常に参考になります。
――競技の魅力を教えてください。
総合格闘技は色々な勝ち方があって面白い、というのが一番の魅力だと感じています。打撃が強い選手もいれば、組みや寝技が強い選手もいます。例えば「打撃が強い相手に勝つには、寝技でいこう」というように、自分でパズルを組み立てるように戦い方を考えられるのが非常に面白いところです。勝ち方も、KO勝ちや打撃を重ねてのTKO勝ち、技を決めての一本勝ちなど様々です。練習の取り組み方や試合での戦い方など、色々な組み合わせを自分で作れるのが、この競技の大きな魅力だと思っています。
――片山選手の強みとしている戦い方や観戦する際のポイントを教えてください。
私はアジアの選手の中でも体が小さい方で、日本国内で見てもそこまで体が大きい方ではありません。ただ、その体の小ささをカバーするためにとにかくたくさん動いて、スピードとスタミナを活かして戦ってきました。自分の持ち味である瞬発力や、動きの多さ、展開の早さといった部分にぜひ注目して見ていただけると嬉しいです。

――大学院での研究の時間と練習を両立させる上で、苦労したことや意識していたことはありますか?
大学院の時は、自分のスケジュールの合間を縫って練習するのがまず一番大変でした。論文を書く時期は本当に机に向かいっぱなしになる中で、練習もこなさなければいけませんでした。
特に修士論文を書いていた時、私の論文の進みが遅くて、指導教員の先生から「練習を取るのか、論文を取るのか、どちらかにしなさい」と言われたことがありました。論文を書かずに単位だけで卒業することもできましたが、それだと修士号はもらえないという状況でした。しかし、私は少し頑固で欲張りなので、「いや、どっちもやりたいです!」と言いました(笑)。試合に向けた練習と修士論文の執筆を両立させたのは、本当に大変でした。ただ、じっと机に向かっている時間があるからこそ、そのぶん練習で爆発できる感覚があり、より集中して練習に身が入ると感じていました。
――日頃はどんなことでリフレッシュしていますか?
今は平日に会社員として営業職をしていて、普段からいろいろな人と話す機会が多いです。ジムに行ったら、また違った人たちといろいろな話ができるので楽しいです。元々人と話すのが好きなので、練習で上手くいかないことがあったら所属チームの方々に相談したり、家族や友人に話を聞いてもらったりしています。ストレス解消というわけではないですが、人に話すことで気持ちを整理しています。

――愛知・名古屋アジア大会に対する想いや目標を教えてください。
今回は日本で開催されるということで、私自身、日本は総合格闘技の発祥の地だと思っています。日本が生み出したこのスポーツを日本で開催できるからこそ、やはり一番歴史があるTEAM JAPANが「総合格闘技で一番強いんだ」というところをしっかり証明したいです。
――今後のキャリアに関して、考えていることはありますか?
自分自身の目標としては、もっと大きな舞台で、海外の強い選手と戦ってみたいという思いが一番にあります。これまでに経験した試合よりも、さらに大きなステージに挑戦したいです。
また個人としての目標以外では、子どもたちに格闘技を教えたいと思っています。まだ格闘技は、あまり良くないイメージを持っている方も多いと感じるので、そのようなイメージを払拭したいです。格闘技を通じて、心身ともに成長できる魅力を子どもたちにしっかり伝えていけたらなと思っています。さらに、私も格闘技未経験からプロになることができたので、女性の競技人口も増えてくれるように、私自身ももっと頑張っていきたいと思っています。
片山 智絵(かたやま ともえ)
2000年生まれ、山口県出身。プロ修斗公式戦で活躍する女子MMAファイター。2026年5月に開催された「第4回アジアMMA選手権」では、女子モダン54kg級で準優勝し、愛知・名古屋アジア大会代表への大きな前進を果たした。兄である片山将宏選手(総合格闘技)の試合をきっかけに格闘技を始める。小柄な体格をカバーするスピード、スタミナ、瞬発力を持ち味とする。追加種目として採用された「愛知・名古屋アジア大会」での活躍と「総合格闘技における日本の強さ」の証明を目指す。
注記載
※本インタビューは2026年7月13日に行われたものです。
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