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東京2020大会へ向けて「平成28年度オリンピック有望選手研修会」レポート

カテゴリ:選手強化
2017.01.12
東京2020大会へ向けて「平成28年度オリンピック有望選手研修会」レポート
「平成28年度オリンピック有望選手研修会」が行われた(写真:フォート・キシモト)
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古川年正JOC理事(写真:フォート・キシモト)

 日本オリンピック委員会(JOC)は、選手強化事業ジュニア対策の一環として、JOCが認定したオリンピック有望選手およびその指導者を対象とした「平成28年度オリンピック有望選手研修会」を11月26日、27日の2日間にわたって味の素ナショナルトレーニングセンターで開催しました。

 本プログラムは他競技選手との交流を通じ、世界に通用するアスリートを育成するとともに、指導者向けプログラムを実施することで、指導者のコーチングスキルを高め、さらなる競技力向上につなげることを目指すものです。過去には水泳・競泳の北島康介選手、同じく萩野公介選手、体操の内村航平選手、卓球の福原愛選手ら後のオリンピックメダリストも参加。今回はオリンピック有望選手、指導者ら合わせて106名が参加しました。

 26日の午後からスタートした第1日目では、最初に選手強化本部副本部長を務める古川年正JOC理事が開会のあいさつに立ち、「今日、皆さんにはオリンピックの扉が開いたと思います」と激励。続けて、東日本大震災復興支援JOC「がんばれ! ニッポン!」プロジェクトの一環として実施している、11月22日開催の「オリンピックデー・フェスタ in 船越」(岩手県)に参加する予定だったものの、当日早朝に東北地方で発生した震度5弱の地震によりイベントが中止になったことを明かしました。そのことを踏まえ「震災のような災害時に笑顔と元気を届けるのがオリンピアンの仕事だと改めて思いました。ただ選手として成功するだけでなく、『人間力なくして競技力向上なし』の言葉のもと、人間的にも立派に成長していただきたい」とメッセージを送り、リオデジャネイロオリンピックで合計41個のメダルを獲得した日本代表選手団の活躍に触れ、「皆さんもメダリストになる可能性を持った選手たちです。皆さんの未来に私たちも期待しております。ぜひ頑張ってください」と期待の言葉を送りました。


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コミュニケーションを必要とする様々なゲームで交流を深めた(写真:フォート・キシモト)
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英語のプログラムには選手も苦戦気味(写真:フォート・キシモト)

■チームビルディング、英語で他競技の選手たちと交流

 古川理事によるオープニングメッセージが終わると、最初のセッションである「JOCキャリアアカデミーによるチームビルディング」がスタート。これは他競技の選手たちとの交流を深めることで、本研修会全体の効果を高めることを目的としています。

 まず前半は選手、指導者がいっしょになり、手拍子を叩いた数と同じ人数でグループを作っての自己紹介や、2人1組で手押し相撲など様々なゲームを行いました。後半では選手、指導者がそれぞれのチームビルディングを実施。選手たちはこれからの2日間で行動を共にする7つの班に分かれ、互いのコミュニケーションのみで絵の法則性を推理するゲーム、円内にバラバラに置かれている1〜30の番号札を順番にタッチする早さを競うゲームなどを行いました。最初は初対面で緊張した面持ちの選手たちでしたが、ニックネームで呼び合ったり、しっかりとコミュニケーションをとらないとクリアできないゲームを通して、すぐに意気投合。1時間半のプログラムが終わるころには各班で大きな歓声が上がるなど、大いに交流が深まっていました。

 続いて、場所を共用コートに移して「外国語講座〜体を動かしながら、英語を学ぶ〜」を実施。このプログラムでは日本語禁止のルールのもと、講師も英語で指示を出し、選手たちも英語でコミュニケーションをとりながらスポーツやゲームを行いました。
 大半の選手が「英語が苦手」と言うように、最初は簡単な掛け声の英語ですら照れや自信のなさから小さい声しか出ませんでしたが、ボールを使った運動などで体がほぐれてくるにつれて、英語のコミュニケーションにも徐々に慣れてきた様子。講師の質問にもハキハキと英語で答え、選手同士でも大きな声で英語が飛び交うようになりました。プログラムの最後に講師は「大事なのは完ぺきな英語ではなく、トライしてみようという意識」とアドバイスを送っていた通り、選手もこのプログラムを通じて英語に対する苦手意識も薄れていたようでした。

 体を動かした後は、選手たちがお待ちかねの夕食の時間。その前に、「SAKURA Dining」管理栄養士チームによる栄養セミナーが行われました。ここでは、アスリートの食事の基本である主食・主菜・副菜・汁物・果物・乳製品の6つのカテゴリーと、それぞれの役割や栄養素、陸上競技の飯塚翔太選手の食事を例にしたメニューの選び方など、クイズを交えて勉強しました。また、ここで習ったことを踏まえ、各班ごとに実際に夕食で摂るメニューを話し合って考えました。


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山縣亮太選手は「自分で答えを見つけることが必要」とメッセージ(写真:フォート・キシモト)
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オリンピアンの話に有望選手は熱心にメモを取り、耳を傾けていた(写真:フォート・キシモト)

■オリンピアンから学ぶ

 夕食の後は「メダリスト講話」として、リオデジャネイロオリンピックの陸上競技・男子4×100メートルリレーで第1走者を務め、銀メダルを獲得した山縣亮太選手が登壇。ファシリテーターの八田茂JOCキャリアアカデミー事業ディレクターが、リオデジャネイロ大会に向けての取り組みについて、オリンピックでの戦いや、これからの目標について尋ねました。山縣選手は「メダルを取るために一番大変だったのはバトンパスではなく、自分の足を速くすること」「スプリンターとして初めてウエイトトレーニングを取り入れたこと」「リレーで銀メダルを取れたことは嬉しかったが、次の4年後は個人種目で決勝に残りたいと強く思った」など、思いを語りました。

 また、山縣選手が今シーズンの好調やリオの成果につながった転機として挙げたのが「本を読む」ということ。有望選手たちに向けても「本には色んな世界のトップで戦っている人たちの勝負哲学、悩みに対するヒントがたくさん隠されています。先人、先輩たちの知恵を学ぶことができるので、皆さんもぜひ本を読んでください」と呼びかけ、将棋の羽生善治さんの著書『捨てる力』を推薦しました。

 最後に「自分の場合は4年後の目標を立てるのではなく、1年1年の目標を立てて、それを4年後に向けて積み重ねていきたい」と語った山縣選手。この1年の目標を「100メートルで9秒台を出して、世界陸上の決勝に残ること」と挙げると、未来のオリンピアン候補たちへ「今は簡単に情報を得られる時代ですが、本当に世界で活躍しようと思ったら、自分で考えて自分で答えを見つけることが必要。いつか記録が停滞したとき、今までの自分にとらわれずに新しい発想を考えられるようになれば、そこに飛躍のチャンスがあると思います」とアドバイスを送りました。

 オリンピアンから学ぶ2つめのプログラムにも、リオデジャネイロ大会で活躍したオリンピアンが登壇。陸上競技の棒高跳で7位入賞の澤野大地選手、ホッケーの小野真由美選手、林なぎさ選手、レスリング男子フリースタイル57kg級銀メダリストの樋口黎選手、同じく男子グレコローマンスタイル59kg級銀メダリストの太田忍選手、ウエイトリフティングの糸数陽一選手、ラグビーの小出深冬選手が7つの班に一人ずつ合流し、有望選手たちは“記者”となって先ほどの山縣選手の講話を参考にした質問をオリンピアンに投げかけて“取材”。そして、そこから得た言葉やエピソードを各班1〜2枚の模造紙にまとめて“記事”とし、それぞれ3分間で発表しました。

 各班ともに限られた短い時間の中でしたが、オリンピアンから様々な話を聞き出し、それぞれの班の個性、特徴が出た“記事”を発表。憧れのオリンピアンから経験や体験に基づくアドバイスを直接聞き、学んだことを自分の言葉として発表することは、東京2020大会、さらにその次のオリンピックを目指す若い選手たちにとって、大きな財産となりました。

 選手たちの発表を受けてオリンピアンがそれぞれメッセージを送り、初日のプログラムは終了。発表後はお互いに記念写真を撮り合うなど、短い時間ながら交流を楽しんでいました。


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上田大介さんは「親指をしっかりコントロールすること」の重要性を訴えた(写真:アフロスポーツ)

■SNSの活用方法、異競技トレーニング

 第2日目は、スポーツ界を中心にソーシャルメディア(SNS)の研修プログラムを手がけるTRENSYSの上田大介さんによる講演からスタート。「選手とソーシャルメディア」をテーマに、多くのアスリートが活用するSNSの良い面と悪い面、選手の立場における活用方法などを学びました。

 上田さんは、ソーシャルメディアは自分の価値を上げるものにも下げるものにもなると説明。失敗やスキャンダルなどで稼ごうとする悪意ある人たちは、アスリート自身のみならず、チームや家族など周囲をも標的にしているといい、「誰でも爆発的に注目される可能性があります。注目されてからは手遅れということを覚えておいてください」と訴えました。そして、具体的なリスク対策法や、「(スマートフォンでよく使う)親指をしっかりコントロールすること」というポイントを伝え、「今使っているSNS、そこにある言葉が将来の自分にとってうれしいことなのか。将来の自分が『ありがとうね』と言ってくれるような行動をしてほしい」と呼びかけました。

 一方で、セルフブランディングやモチベーションの向上など、ソーシャルメディアのメリットも説明。アスリートによるSNS活用の好例を紹介しながら、「観客で埋め尽くされたソーシャルメディアというそれぞれのフィールドの中を、皆さんの夢や目標に向かって縦横無尽に駆け抜けてほしい」とメッセージを送りました。


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真剣な表情で剣を使ったボール転がしに取り組む有望選手たち(写真:アフロスポーツ)
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福井烈JOC常務理事(写真:アフロスポーツ)

 講演の後は共用コートに移動し、「異競技トレーニング」で競技間の交流を図りました。選手は3グループに分かれて、フェンシング、スケート、ボクシングの3競技を交代で体験。フェンシングでは、基本の構え方や剣の扱い方を学んだ後、剣先でテニスボールを転がしながらリレーするゲーム形式のトレーニングを実施しました。細かな動作が求められ、慣れない動きに奮闘する選手の様子を見て、見学する指導者たちも和やかな雰囲気に包まれていました。
 スケートでは、トレーニングで使用するスライドボードを体験。左右のストッパーを力強く蹴るようアドバイスを受けた選手たちは、すぐにコツを覚え、ボードの上を上手に滑っていました。ボクシングでは、数名のグループに分かれてミット打ちなどを実施。選手たちは汗をぬぐいながら真剣にパンチを打ち込んでいました。

 すべてのプログラム終了後、選手強化本部副本部長を務める福井烈JOC常務理事が閉会のあいさつを行いました。福井常務理事は、『人間力なくして競技力向上なし』のスローガンを引用し、人間力とは何かを考え、高めてほしいと訴えました。そして、10月に行われたリオデジャネイロ大会のメダリストパレードにおいて、メダリストと観客が互いに感謝を伝える機会になったことに触れ、「このような素晴らしい世界に皆さんはいるんです。ぜひ皆さんの目指す頂点に立てるように、勝つだけでなく活躍する選手になってください」と激励し、2日間を締めくくりました。





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