MENU ─ ニュース
2015.02.23 お知らせ

平成26年度「JOCオリンピック教室」 北区立稲付中学校で開催

平成26年度「JOCオリンピック教室」 北区立稲付中学校で開催
作戦タイムで生徒に声をかける三科先生(写真:JOC)

 日本オリンピック委員会(JOC)は1月30日、平成26年度「JOCオリンピック教室」を東京都北区の北区立稲付中学校で実施しました。

「JOCオリンピック教室」は、オリンピアン(オリンピック出場経験アスリート)が教師役となり、自身のさまざまな経験を通して感じた“オリンピックバリュー(価値)”などを生徒たちに伝える活動です。中学2年生を対象に、平成23年度から授業の一環として行われています。
 今年度はこれまでに全国16校34クラスで開催。年度末(3月)まで、計18校39クラスで実施する予定です。

 この日先生を務めたオリンピアンは、2004年アテネ、2008年北京の両大会にソフトボールで出場した三科真澄さんとロンドン大会にフェンシング(男子フルーレ団体)に出場した三宅諒選手の2人です。

 オリンピック教室に初めて参加する三科さんと三宅選手。まず1時間目は三科さんが体育館での授業「運動の時間」を行いました。三科さんの明るく元気な声掛けに、早くも生徒たちの表情は笑顔いっぱいに。準備運動の中では、ソフトボールや野球で重要な捕球姿勢のストレッチも指導し、その後のソフトボールリレーにつなげました。
 リレーは5チーム対抗戦で行われ、走者が2人1組になり、素手でのゴロ、下手投げ、上手投げでパスをし合いながら走る形式です。必死に“バトン”をつなぐ生徒たちでしたが、ボールを大きくそらしてしまう場面も。1回戦、2回戦後に設けられた「作戦タイム」では、各チームが改善策を考え、「ボールを投げる位置を変えてみました」「走る順番を変えました」など、それぞれが工夫をして次のレースに臨んでいました。
 三科さんは「話し合うことが大事だよ。それによって順位も変わります。みんなの声掛け、協調性を大事にしましょう」と、チームワークの大切さを生徒たちに伝えました。

平成26年度「JOCオリンピック教室」 北区立稲付中学校で開催
グループワーク時の机間指導(写真:JOC)
平成26年度「JOCオリンピック教室」 北区立稲付中学校で開催
三科先生との記念撮影(写真:JOC)

 2時間目は教室での「座学の時間」。授業のはじめには、オリンピックシンボル(五輪)の意味についてふれ、オリンピックは国や文化を越えてスポーツを通じた世界平和を目指していることを伝えました。その後、三科さんは自身の経験をもとに「エクセレンス(卓越性)」、「フレンドシップ(友情)」、「リスペクト(敬意)」という3つの「オリンピックバリュー(価値)」を感じた印象的な思い出のひとつとして、北京大会決勝後の出来事をあげました。ソフトボールは北京大会を最後にオリンピック競技から除外されることが決まっていましたが、自分たち日本チームは北京で優勝した喜びに浸っていたそうです。しかし、その表彰式終了後、決勝で敗れたアメリカチームの選手から「ソフトボールのオリンピック競技復活を一緒にアピールしよう」と提案がありました。試合に敗れて悔しい思いより、「みんなのために」と行動を起こしたアメリカチームに対する気持ちは、まさにオリンピックバリューを感じた瞬間だったと説明しました。続けて生徒たちに、「このクラスをより良くするために、3つのオリンピックバリューをどう生かしていくか?」をグループディスカッションの課題にあげました。各グループが「仲間を信じて絆を深める」「お互いが尊重し合って、自分ができることを精いっぱいやる」など話し合った結果を発表しました。
 最後に、「2020年オリンピック・パラリンピックが東京で開催されることが決まっています。ちょうど二十歳で迎えるみんなには、競技者として、あるいはボランティア等の支える側として、この授業をきっかけに何らかの形で携わってもらえたらうれしいです」と授業を締めくくりました。
 普段は大学で教壇に立つ三科さんは、中学生との授業を終えて、「オリンピックバリューを伝えることで、少しずつ彼、彼女たちの心が打ち解けていくのを実感できました。みんなが積極的に参加してくれたおかげで、楽しく授業をすることができました」と、ほっとした様子で感想を語りました。

平成26年度「JOCオリンピック教室」 北区立稲付中学校で開催
ロープフェンシングで指示を出す三宅先生(写真:JOC)

 3、4時間目は三宅選手が先生に。「運動の時間」では、準備体操、しっぽ取り鬼で体を温めた後、三宅選手をはじめナショナルチームのメンバーが、日頃から反応を強化するために実施しているトレーニングの内容を、この授業のためにアレンジした「ロープフェンシング」を実施しました。クラスをAチーム、Bチームに分け、体育館の中央に1列ずつ並び1本のはちまきを対戦する二人が指でつまみ、三宅選手の指示どおりに「引っ張る」「何もしない」「指を離す」などを瞬時に行う「ロープフェンシング」。運動量は多くないものの、判断や対応の速さも求められ、集中力が重要となります。勝った生徒は大喜び、負けた生徒は思い切り悔しそうな様子を見せていましたが、特に最後はクラス全員が注目する中、1組ずつの対戦となり、体育館は生徒たちの熱気で大いに盛り上がりました。

平成26年度「JOCオリンピック教室」 北区立稲付中学校で開催
相手を知ること、理解することの大切さを伝える(写真:JOC)
平成26年度「JOCオリンピック教室」 北区立稲付中学校で開催
三宅先生との記念撮影(写真:JOC)

「座学の時間」は、フェンシングの紹介映像を見た後、授業のはじめに、一人の生徒を教卓の前に立たせて、「いつも一緒にいる仲間の前でも、なんとなく緊張すると思うけど、オリンピックはこの何百倍の人の前で自分の力を発揮しなければいけないんだよ」と、緊張感の度合いがどれほど高いかをイメージさせました。その後は小さい頃に始めた水泳がまったく上達しなかったこと、それでも何かスポーツを続けたいと思ったときに、出会ったのがフェンシングだったことを話し、競技を始めたきっかけから、何かを継続すること、自分を理解してくれる人がいることの大切さをオリンピックバリューに合わせながら説明しました。

 その後グループワークでは、理解・共感することをテーマに「仲間の好きなもの、すごいところ」を探す課題を提案。最初はなかなか意見が出なかったものの、時間が経つにつれて「電車」、「お菓子」などさまざまなものがあがりました。お互いの意外な一面を発見したのか、1つのキーワードで会話が盛り上がっているグループも。その様子を見て三宅選手は、相手を知ることの大切さ、共感で仲間が広がった経験を話し、「自分の持っているものを大切にすると仲間ができる。オリンピックは試合も大事ですが、そこまでの過程の時間が大事。それを理解してくれる人の存在や、同じ共通項で集まった仲間もすごく大事。僕にとってはそれがフェンシングでしたが、みんなにも必ずあるはず」と語りました。
 生徒たちは「すごく心に響くことを話していただいて、部活などに生かそうと思いました」「共感できると仲間が増えるという言葉が心に残りました」と目を輝かせていました。

 三宅選手は授業を終えて、「生徒のみなさんがちゃんと聞いてくれて、僕も話さなきゃという気持ちが強くなりました。『夢は?』と聞かれると大きなものに感じてしまうけど、今日はそれを個性や好きなものに置き換えました。そういうことを言う練習になれば」と振り返りました。

平成26年度「JOCオリンピック教室」 北区立稲付中学校で開催
あきらめないこと、工夫することの大切さを伝える宮下先生(写真:JOC)
平成26年度「JOCオリンピック教室」 北区立稲付中学校で開催
宮下先生との記念撮影(写真:JOC)

 なお、前日の29日には北京大会に水泳(競泳)で出場した宮下純一さんが先生として同中学校で、2クラスの授業をおこないました。

 約1年ぶりに講師を務めた宮下さんは、今回のオリンピック教室に「オリンピアンに対して『違う世界の人』と感じる気持ちもあると思うんです。その距離感をなくしたいなと。みんな同じ人間だし、同じように中学時代を経てきています。でも、モチベーションや考え方でその先が変わってくる。それを分かってもらえれば」という気持ちで臨んだそうです。

「中学生というと、思春期なので頑張ることが恥ずかしいという子もいると思っていましたが、目的意識を持ってやってくれて、僕も一緒になって学べました」と充実した表情を見せていました。

ページをシェア

関連リンク


CATEGORIES & TAGS


お知らせ の最新ニュース

    最新ニュース一覧