フィギュアスケート団体、TEAM JAPANの先陣を切って銀メダル獲得に大きく貢献した「うたまさ」こと吉田唄菜選手・森田真沙也選手ペア。オリンピック初出場でつかんだ銀メダルを胸に、二人が語るアイスダンス競技の魅力と未来への思いに迫る。
――団体銀メダル獲得、おめでとうございます。苦しんだ時期もあったかと思いますが、その中でオリンピックのチケットをつかみ、そして銀メダル獲得。表彰台の上ではどのようなことを感じていましたか。
<吉田> 昨年の9月に行われた個人戦の予選会で、オリンピックの出場枠をとることができず悔しい思いをしたのですが、そこから「もっとさらに頑張ろう」という気持ちが芽生えました。今回のオリンピックでは、私たちが今できる最高の演技ができたと思います。TEAM JAPANのみんなで銀メダルをとれたことをうれしく思います。
<森田> 今回の団体戦は、僕たちアイスダンスのリズムダンスから始まったんですけれども、そこからTEAM JAPANの団体戦メンバー全員が本当に素晴らしい演技ばかりで、見ていてもすごく楽しかったです。応援の力を本当に間近に感じることができて、もちろん滑っていてもすごく楽しかったですし、最初から最後までずっと充実した時間だったと思います。
――SNS、LINE、メールなど、周りの方々からの反響はいかがですか。
<吉田> 本当にたくさんの方からメッセージをいただきました。まだ全然返し切れていないのですが、この後しっかり返して、みなさんに感謝の気持ちを伝えたいと思います。
<森田> 唄菜ちゃんほどは多くないとは思うのですが、僕にもちょこちょこ来ていて(笑)、それでも中学時代や、高校時代の同級生から久しぶりに連絡をもらったりしました。やはり、オリンピックは世間的にもすごく注目される大会なんだと改めて実感しています。
――今回、フィギュアスケート団体のキャプテンに森田選手が任命されました。最初にその話を聞いた時はどのような心境でしたか。
<森田> ミラノに着いた時から、日本スケート連盟の方に「真沙也は、今回いろいろなところから取材されるので心の準備をしておいてね」と言われていたんです。最初は「僕、何かしましたっけ」みたいに思っていたのですが、その後「キャプテンをお願いするよ」と繰り返し言われるようになってきて、「あ、本当に僕がキャプテンなんだ」と思うようになっていきました。最終的には、全員で多数決のような形で指差しをして決まったのですが、そこで残りの6人全員からご指名をいただくことになり、もう「やるしかないな」という気持ちになりました。
――初めてのオリンピックで、キャプテンという重責。プレッシャーに感じることはなかったのでしょうか。
<森田> いえ、それが本当になかったんです。それこそ、三浦(璃来)選手・木原(龍一)選手組や坂本(花織)選手、鍵山(優真)選手は、過去に団体戦を経験されていらっしゃいますし、オリンピックがどういう舞台かも分かっていらっしゃいます。そして、佐藤(駿)選手は同い年ということもあり、僕が気にすることは何もなく話せたり接したりできていたので、最初から最後までプレッシャーは全くありませんでした。キャプテンらしいことはできなかったと思うのですが、一応やり切りました。
――吉田選手は6年前、2020年の新型コロナウイルス感染症が拡大する直前に、ローザンヌ冬季ユースオリンピックに出場されていました。今回は、まさに本当のオリンピックの舞台、当時の感覚と何か違いを感じたところはありましたか。
<吉田> 6年前のユースオリンピックに出場した時に、「本物のオリンピックに出たい」という強い気持ちが芽生えたので、その思いがかなってここに来られたことが本当にうれしかったです。緊張感や楽しみ方は6年前の時と一緒の感覚で、すごく楽しめた試合でした。TEAM JAPANのみんなで団体戦のメダルを狙いにいくということにすごく燃えましたし、そして実際にみんなで実現できたことを本当にうれしく思います。
――団体は、リズムダンスのお二人がトップバッターとしてチームを勢いづける滑りになりましたね。鍵山選手や佐藤選手が涙していた様子は非常に印象的でしたが、お二人はトップバッターの重圧や緊張感をどのように乗り越えていったのか教えてください。
<吉田> TEAM JAPANのトップバッターという緊張感は少しだけあったのですが、チームのみんながすごく応援してくれていましたし、「みんなで頑張ろう」という気持ちもすごく強かったです。会場の雰囲気も本当に良くて、演技が始まってすぐにみなさんが手拍子で盛り上げてくださったので、緊張感はすぐに吹き飛んで、最初から最後まで楽しみながら滑ることができました。
――そして、フリーダンスはアメリカとの得点差が1点に迫る中で迎える形となりました。森田選手はどのような気持ちで演技に向かっていったのでしょうか。
<森田> リズムダンスからそうだったのですが、フリーダンスでは観ているみなさんに感動してもらえるような一つの大きなプログラムをつくることを目標にやってきたので、一つ一つのエレメンツにしっかり集中しながら、プレッシャーをあまり感じることなく滑ることができました。会場の雰囲気もすごく温かかったですし、応援席にも演技が終わった直後の鍵山選手も観に来てくださっていて、最初から最後まで応援が本当に心強かったです。曲調もすごく落ち着いた部分がある曲だったのですが、それも含めてずっと楽しく感じながら滑り切ることができたと思います。
――フィギュアスケートは基本的に個人競技だと思うのですが、TEAM JAPANはチームの輪を感じる本当に温かい雰囲気で、見ているこちらもワクワクする感覚がありました。お二人それぞれ、自分たちの滑り以外の部分で印象に残っていることはありますか。
<吉田> 自分たちの演技が終わってすごく楽しい気持ちでリンクの外に出たら、優真くんと花織ちゃんが待ってくれていたんです。「なんで?」と思ったのですが、それくらい本気で応援しながら観てくれていたんだなとうれしくなりました。その二人だけではなく、他のチームメイトもそうなのですが、みんなを見てTEAM JAPANの仲の良さをすごく実感していました。
<森田> 昨日の男子フリーを滑った佐藤選手です。もちろん、坂本選手も、三浦・木原組も、ショートプログラム、フリーと素晴らしかったですし、鍵山選手も最高のショートプログラムを滑っていらっしゃったんですが、佐藤選手の滑りは最初から最後まで本当に美しくて、佐藤選手らしい『火の鳥』を演じていらっしゃいました。「今シーズンのプログラムの中で一番好き」と伝えていたほど僕自身も気に入っているプログラムだったのですが、それを直接応援席から見ることができましたし、内容もすごく素晴らしかったので、本当に感動しました。
――お二人の滑りや「りくりゅう」ペアを観て、個人種目だけでなく、アイスダンスやペアに挑戦してみたいという子どもたちも増えてくるのではないかと感じます。ぜひ最後に、そんな子どもたちに対してもメッセージをいただけますか。
<吉田> 二人で滑るアイスダンスやペアは、一人で滑るシングルやジャンプのある競技とは、また全く別のものになってくると思います。二人でできた時の達成感、緊張感や喜びを分かち合えるパートナーが横にいるというのは、本当に素晴らしいと思うので、ぜひたくさんの人にこういう経験を味わってほしいと思います。
<森田> カップル競技は、競技面も含めてそれがほとんどと言われるくらい「パートナーとのコミュニケーション」が大事なスポーツです。もちろん大変な時、しんどい時、つらい時もあるのですが、その分、楽しい時の喜びは倍以上になるのが、このカップル競技の素晴らしいところかなとも感じています。みんなが充実して楽しく競技に挑めるように、自分たちがまずはもっともっと頑張っていければと思います。
――ありがとうございます。そして、本当におめでとうございました。まずはゆっくり休んでいただき、そして、ますますのご活躍を期待しています。
<二人> ありがとうございました。
吉田唄菜(よしだ・うたな)/2003年9月6日生まれ。岡山県出身。20年ローザンヌ冬季ユースオリンピックのアイスダンスに出場(パートナー:西山真瑚選手)、オリンピックに強い想いを抱く。23年6月、森田真沙也選手とカップル結成。24年、25年と全日本選手権を連覇。25年アジア冬季競技大会でも金メダルを獲得。ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックでは森田真沙也選手とのペアで自身初の冬季オリンピック出場を果たし、フィギュアスケート団体銀メダル獲得に貢献。木下アカデミー所属。
森田真沙也(もりた・まさや)/2003年11月16日生まれ。京都府出身。シングル選手として活動した後、アイスダンスに転向。23年6月、吉田唄菜選手とカップル結成すると、全日本選手権を連覇、アジア冬季競技大会で金メダル獲得を果たす。ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックではフィギュアスケート団体TEAM JAPANのキャプテンを務める。吉田唄菜選手とのペアでTEAM JAPANのトップバッターとして牽引、団体銀メダル獲得に貢献した。木下アカデミー所属。
注記載
※本インタビューは2026年2月9日に行われたものです。
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