17歳10カ月での銅メダル獲得は、日本フィギュアスケート女子として史上最年少の快挙だった。憧れの浅田真央さんと同様「トリプルアクセル」を武器にショート・フリーでともに着氷してみせた。挑戦者として挑み、栄光をつかんだ中井亜美選手の本音を聞いた。
――銅メダル獲得、おめでとうございます。
<中井> ありがとうございます。
――本当に素晴らしい演技でしたね。そして、オリンピックのメダリストとなりました。初めてのオリンピックの舞台を、そして、手にしたメダルの重さをどのように感じていますか。
<中井> オリンピアンになるだけでもうれしかったのに、こうやってメダルを首からかけられているという事実がすごくうれしいです。シニアデビューシーズンだったので、正直なところ不安なことだらけでした。「本当に自分がオリンピックに行けるのかな」というように思ってしまう時期もあったのですが、自分を信じて頑張ってきたからこそ、今こういう結果を手にできたのかなと思います。
――団体戦には出場されていないので、女子シングルのショートプログラムがオリンピック最初のステージということになりました。冒頭のトリプルアクセルも着氷に成功して、本当に完璧な演技でしたよね。あまり緊張しない性格とおっしゃっていますが、世界選手権やグランプリファイナルなど他の大会と比較して、オリンピックの特別感などはありませんでしたか。
<中井> 逆に「オリンピックだからこそ楽しもう」という気持ちの方が強かったです。自分は失うものが何もないですし、今大会は挑戦者として挑めていたので、本当にいつも通りの自分が出せたかなと思います。
――ミラノのリンクを滑っていて、どのようなことを感じていたのでしょうか。
<中井> 演技中の歓声もすごく聞こえました。他のカテゴリーを見ていた時に、ミスしてしまった選手を観客のみなさんが励ましているのを生で体感できて、本当に感動しました。「会場のみなさんがすごく温かいな」というのはすごく感じました。
――トリプルアクセルにすごくこだわってこられたと思いますが、ショートプログラムもフリースケーティングも見事に着氷しましたね。ご自身の出来栄えとしてはいかがでしたか。
<中井> 緊張感もなくいつも通りの自分が出せていたので、そのおかげで自信を持ってトリプルアクセルを両方とも跳ぶことができたことはすごく良かったと思います。練習でもしっかり成功できていたので、最後は「自分を信じるだけ」と思っていました。今、こうやって結果につながっていることが本当にうれしいです。
――もともとあまり緊張しないタイプなのでしょうか。それとも今回は緊張や重圧をうまく楽しさに変えることができたのでしょうか。
<中井> たしかに、試合によって変わります。グランプリファイナルは結構緊張しましたし、全日本選手権もオリンピックがかかっている試合ということで、オリンピック本番より緊張していました。ものすごく緊張した時に、それを乗り越えるというのは自分の中でも課題として残るところです。ただ、今回は最初から最後まで楽しむことができて、本当にいい形で試合を終えることができたかなと思っています。
――フリーを滑り終えた瞬間の、顔に指を当てて首を傾げる仕草には、心をわしづかみにされた人も多かったはずです(笑)。どのような心境であのアクションになったのでしょうか。
<中井> あの瞬間は「惜しかったな」という気持ちが大きかったんです。トリプルアクセルもきれいに着氷できたのに、その後、ほんのわずかな失敗があって、それがちょっと悔しかったなと思いました。それと同時に、「メダルも微妙かな」という気持ちもありました。
――私たちスタッフ同士の中でも、「中井選手の写真はどれを見てもめちゃくちゃ笑顔がすてき」という話で盛り上がっていました。笑顔の秘訣やこだわりなどはありますか。
<中井> 笑顔を届けることによって、元気が出たりすることが多いと思うので、自分の演技を見て少しでも元気をお届けできたらいいなと思っていますし、自分自身、本当にスケートが好きで今やっているので、それがちゃんと表に伝わっているのが、うれしいです。
――キス・アンド・クライ(演技を終えた選手とコーチがリンク脇で得点発表を待つスペース)で得点が発表された直後、意味がよくわからなかったのか少し間がありましたよね。そしてその後、アリサ・リュウ選手と思い切り抱き合うシーンが印象的でしたが、あの時はご自身としてはどのような感じだったのでしょうか。
<中井> どこに最終順位が出るのかが分からなかったんです。最終結果もその時点では出ていなくて、本当に何が何だかわからない状態でした。フリースケーティングの順位の「9」と書いてあるのが見えて、そこで「9位に落ちちゃったのかな」と思ったんですよね。ですが、その横にもう1個数字が書いてあって、そこに「3」という数字が書かれているのを見て、「へ?」と。そこで、アリサ選手に「私、3位?」と聞いたら「3位だよ」と言ってくれて、そこでやっと分かりました。アリサ選手は、自分が優勝したにもかかわらず、私のことをすごく褒めてくださって、自分のことのように喜んでくれたことも本当にうれしかったです。
――憧れの浅田真央選手と同じトリプルアクセルを決めて、尊敬する坂本花織選手と一緒に表彰台に上がる。本当にすてきなオリンピックになりましたね。表彰台の上ではどのような気持ちになりましたか。
<中井> 「メダリストになれた」といううれしさもありましたし、「オリンピックという舞台でトリプルアクセル2本決められた」という喜びもありました。そして、花織ちゃんとオリンピックに出られるのは最初で最後だと思って臨んでいたので、こうして一緒に表彰台に上がれるというのは本当に貴重なことだと思い、すごくうれしい気持ちになりました。
――坂本選手とお話しされたこと、印象に残っているやりとりはありましたか。
<中井> 花織ちゃんがずっと頑張ってきていた様子をミラノに入ってからも見ていたので、すごく悔しそうな姿を見て自分自身も少し悲しい気持ちになりましたが、それでも自分は喜んであげようと意識していました。そのように悔しい気持ちの中で、花織ちゃんが自分のことを褒めてくださって、「初出場で3位なんて本当にすごいことだよ」と言ってくださったので、本当にうれしかったです。
――オリンピックメダリストになって、これからはさらに注目が集まると思います。さまざまな方々からのお祝いも届いていると思いますが、反響はいかがですか。
<中井> オリンピックという舞台に立ってみて、他の試合とは規模も違いますし、注目のされ方もすごいことを実感しました。ショートプログラムが終わった後は、思った以上に注目されていて本当にビックリしましたし、少しプレッシャーにも感じたのですが、それでも「いつも通り」と思っていたところは良かったと思います。
今回は、一番楽しめる年齢、立場で参加できるオリンピックだと思っていました。実際、本当によく楽しめたと思っています。次のオリンピックの時には、下から上がってくるジュニアの選手たちもたくさんいるでしょうし、より強い選手がたくさんいる中で戦っていくことになると思うのでさらなる覚悟も必要になると思いますが、頑張っていきたいと思います。
――17歳にしてこの覚悟を語れるようになるには、どんなトレーニングを積んだらいいのでしょう。
<中井> とくに何もしていないです(笑)。
――二人三脚でチャレンジしてきた中庭健介コーチとのコミュニケーションの中で、何か印象に残っている言葉はありましたか。
<中井> 試合前に「ここまで連れてきてくれて本当にありがとう」と言ってもらいました。中庭先生自身、オリンピックの出場経験がない中で、「こうやってオリンピックの舞台に連れてきてくれたことが本当にうれしい」と言ってくださったので、私も「先生と一緒に来られて良かったな」と思いました。メダルが決まった瞬間も、先生が涙を流してくださり自分のことのように喜んでくれていたので、すごくうれしかったです。
――どんなところがコーチとして信頼できるポイントなのでしょうか。
<中井> 先生が現役時代に試合や練習で感じていた気持ちと、私が感じているところが似ていたりするので、共通点としてお互いに共感し合えるのが、私にとってはいいところです。お互いに分かり合った上で練習に取り組めているので、それは良いことだと思っています。
――地元・新潟のみなさんもすごく喜んでいてくださっているようです。
<中井> 新潟で競技をしていた頃の先生たちには本当に感謝しています。こうやってスケートの世界に導いてくださったのも新潟の先生方ですごく感謝しています。毎日楽しく練習できていたからこそ、今もこうやって競技を続けられていると改めて思います。
――ありがとうございました。ますますご活躍されることを応援しています。
<中井> うれしいです。ありがとうございます。
中井亜美(なかい・あみ)/2008年4月27日生まれ。新潟県出身。テレビで浅田真央さんの演技を観たことがきっかけとなりフィギュアスケートを始める。21年に練習拠点を千葉県船橋市の「MFアカデミー」に移し中庭健介コーチに師事する。25年全日本選手権で金メダルを獲得。ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックでは自身初のオリンピック出場を果たし女子シングルで銅メダルを獲得。17歳10カ月でのオリンピックメダル獲得はバンクーバー2010冬季オリンピックで銀メダルを獲得した浅田真央さん(19歳5カ月)を上回る日本フィギュアスケート女子最年少記録となった。勇志国際高等学校在学中。TOKIOインカラミ所属。
注記載
※本インタビューは2026年2月15日に行われたものです。
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