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2026.07.09 Milano Cortina2026 Medalists’ Voices

自らに克った二人が見た景色
女子スノーボード界の金字塔を打ち立てた二人の友情と挑戦(村瀬心椛、深田茉莉)

スキー/スノーボード ビッグエア・スロープスタイル

女子ビッグエアで金、スロープスタイルで銅を獲得した村瀬心椛選手と、女子スロープスタイル金メダルに輝いた深田茉莉選手。「二人で表彰台に乗ろう」と誓い合った仲良しの二人組が、リヴィーニョの雪山に日の丸を掲げた。21歳と19歳が描いた挑戦に迫る。

それぞれの達成、それぞれの悔しさ

――今大会、村瀬選手は金メダルと銅メダル、そして深田選手は金メダルを獲得となりました。村瀬選手から、まずは率直なお気持ちをお聞かせください。

<村瀬> 4年前の北京2022冬季オリンピックでは、ビッグエアで銅メダルを獲得できたのですが、時間が経つにつれて「出し切れなかった」という悔しい気持ちがものすごく大きくなっていきました。この4年間、必死に努力して頑張ってきた結果、自分のやるべきことをしっかり出し切れたことが、金メダルという結果につながったのかなと思っています。ビッグエアに関しては、今までにないくらいの達成感とうれしさがあった大会でした。
 一方で、スロープスタイルは前回大会3回転んでしまい10位に終わりました。そこから今までたくさん練習をしてきたのですが、3位で終わってしまったので、この悔しい気持ちを次のオリンピックでぶつけたいと思っています。もっと修行が大事なのかなと思っています。

――これまでのご苦労を想像すると少しは休んでほしいと思う一方で、すでに4年後に気持ちが向いていることは頼もしく感じます。

<村瀬> はい、ありがとうございます(笑)。

――深田選手もオリンピック金メダリストになりましたがどのような感想をお持ちですか。

<深田> 最初のビッグエアは9位で終わってしまい、すごく悔しい思いをしました。やはりそこから学ぶことがたくさんあって、そのおかげもあってスロープスタイルでメダルがとれたのだと思います。スノーボードにはギリギリまで成長させてもらえたということと、まだまだ自分も伸びしろや成長する部分がたくさんあると感じるので、これからももっともっと自分のやりたいことや、周りの人を喜ばせられるような存在になっていきたいと思います。

――お二人とも本当にしっかりされていて頼もしいですね。

<村瀬> いえいえ(笑)。

「自分に克つ」ということ

――見ていて、ものすごくプレッシャーがかかるだろうという中で、みなさんとても難しい技を決めてピタッと着地します。オリンピックの舞台でそれを実現できる精神力やハートの強さは、お二人それぞれどのように育んできたものなのでしょうか。

<村瀬> 昔から「負けず嫌い」というのがすごく強く、今でもそれは続いてはいるのですが、昔は本当に人に勝つことばかりを考えていました。「この人に勝たないと」「この人に勝つにはこれが必要だからこれをやらないと」と、他の選手のことばかり考えていた時期があったんです。でも今は、人それぞれみなさん本気で頑張っています。自分自身に勝たないと大会で自分の本当の滑りを出し切れないと思うようになりました。最近は自分にプレッシャーをかけずに、他人に勝とうとも思わずに、自分の滑りだけに集中して「自分に克つ」ということを意識しながら大会に臨んでいます。

――深田選手はいかがですか。

<深田> 私はずっと同じように上がってきたわけではなくて、山あり谷ありでその差が本当に激しくて、なかなか安定することができないタイプでした。オリンピックのビッグエアでは、自分の滑りのことを考え過ぎてしまって、逆に緊張してしまってうまくいかないなと気づきました。そこで、スロープスタイルではその部分を改善して、考え過ぎないようにして、今まで自分がやってきたことを信じてやろうと変えてみたら、うまくいったんです。マインドの持ち方を変えたことが良かったのかなと思っています。

――他の国際大会との違いを感じたことはありますか。

<村瀬> 私はそれほど変わらないのかなと思っています。本当に先ほど茉莉が言ったように、「オリンピックだから」とみんな自分にプレッシャーをかけているわけでもないですし、オリンピックに出ている選手たちも、いつもワールドカップに出ている選手と変わりません。ですから私自身、本当にいつも通りの試合ができたと思います。みなさんから見たら違いはあるのかもしれないですけど、私はそんな感じはしませんでした。

<深田> 私は、オリンピックは4年に一度だからかけてきた思いが違うと、最初はやはりそこにプレッシャーを感じてしまってうまくいきませんでした。心椛ちゃんが自分らしい滑りをしているところを見て、自分も「いつも通りの自分らしさでいかないといけない」と学びました。今思うと、ビッグエアで失敗して本当に良かった。それがあったからスロープスタイルに活かせたのだと思っています。

Naoki Morita/AFLO SPORT

表彰台の上で並ぶ瞬間まで

――画面越しで、選手同士、みなさんの仲の良さのようなものが伝わってきました。もちろんライバルなのでしょうが、相手がすごい技を決めた時には素直に讃え合う姿がとても清々しいと感じました。実際は、決められると悔しい気持ちになってしまうものなのでしょうか。お二人はどのような感覚ですか。

<村瀬> 大会に何回も出てきた経験から、私は他の選手の滑りを見ないように意識しています。大会中に他の選手が何をしていて、何の技を繰り出してどのような点数を出したのかは、ほぼ分からない状態で大会に挑んでいます。「自分の滑りをすれば絶対に表彰台に乗れるだろう」という気持ちがあるので、日本人選手や海外の選手とハグしながら「頑張ろう」と話すことはありますが、他の選手が勝ったからといって「なにくそ」とは思うことはないです。ですから、他の選手の滑りを見ないように心がけています。

――先ほどおっしゃっていた、昔は他人のことを気にしていたけれど、今は「自分に克つ」ことを意識しているという変化につながっているのですね。

<村瀬> はい、そうすることで本当にゾーンに入れるんです。他の人の滑りを気にしてしまうと、気が散ってしまったり集中できなくなったりしてしまうことがあったので、経験上、このやり方が一番合っていると思っています。

――深田選手はいかがですか。

<深田> 私は他の選手の滑りを見ることもあります。誰かが決めたことで刺激を受けて「自分もやらないと」とか「自分も同じような景色を見たいな」とか思います。自分も同じ競技をやっているからこそその技がどのくらい難しくて大変なのかが分かるので、他の選手の滑りを見ていて技を決めた時に「チッ」と思うようなことはないです(笑)。

<村瀬> 私もない(笑)。

――とはいえ、スロープスタイルでは、深田選手のトップに立った後、残り6人の滑りを待つ形になりました。その時のお気持ちは、正直なところどんな感じだったのでしょうか。

<深田> もちろん、自分もメダルをとりに来ていますし、自分より後に滑る選手たちは予選でいい点数を出しているわけですので、その人たちが強いと分かっているからこそ、そわそわはしましたね。

<村瀬> そわそわするよね(笑)。

<深田> うん(笑)。

――最終的に、村瀬選手やゾイ・サドウスキー=シノット選手(ニュージーランド)を抑えて、金メダル確定となった時はどんなお気持ちだったのでしょうか。

<深田> みんなすごく良いランだったので、自分がまさか1位になるとは思わず、ビックリしました。

――お二人のランを見て「本当にすごい!」という気持ちで見ていたのでしょうか。

<深田> もう本当にすごかったです。やはりこのプレッシャーのかかる場面でしっかり決めてくるあたりも、ゾイ選手と心椛ちゃんらしくて、さすがだなと思いましたね。

Naoki Morita/AFLO SPORT

「二人で乗ろう」と誓った表彰台

――今大会、スノーボードはハーフパイプも含めて、男女ともに素晴らしいメダルラッシュとなりました。お二人はそのスノーボード界にいますが、その強さの秘訣はどこにあると感じていますか。

<村瀬> 強さの秘訣は、努力している方々がものすごく多いことだと思います。日本人はすごく真面目というか、毎日しっかり練習して、練習量や積み重ねているものも多く、やるべきことはやる人ばかりです。この4年間で、だんだんみんなが表彰台に乗れるようになってきて、そしてこの大きな舞台で揃ってとることができて、日本スノーボード界が強いということが世界中、日本中の方々に伝わり、本当にものすごくうれしいです。

――深田選手はいかがでしょうか。

<深田> 心椛ちゃんと一緒で、努力する人が多いことに加えて、夏の練習施設も充実していることが大きいと思います。海外から練習しに来る方もたくさんいますが、日本選手の練習量を見て、みんなめちゃくちゃたくさん練習をするのでびっくりされますよね。

――見ているだけでも恐怖心を感じる競技です。今大会、TEAM JAPANのテーマも「ともに、一歩踏み出す勇気を。」でしたが、お二人はスノーボードの恐怖心に対して、どのように勇気を奮ってチャレンジしてきたのでしょうか。

<村瀬> 達成した時、技が決まった時が一番うれしいので、努力したり、今まで練習したことが実ったりすれば、いくらでも挑戦できるという自信になります。これからも挑戦し続けたい気持ちはものすごく強いです。

――乗り越えた時の喜びを知っているからこそ、そこに向かってまた頑張ろうという気持ちが湧くのかもしれないですね。

<村瀬> はい、本当にその通りだと思います。

――深田選手はいかがですか。

<深田> 私も達成感がすごく好きです。いつかは絶対にやらないといけない技であれば、その技を目指すために何が必要かも分かってきますし、少しでも良いコンディションの時には絶対にやった方が良いと考えています。「あの時やっておけば良かったな」と後悔するのが一番良くないかなと思うので、少しでもできるかなと思ったらグイグイやっていった方が良いと思っています。

――最後に、あまり質問されないけれど本当はこれを伝えておきたいといったことがあれば、ぜひ教えてください。

<村瀬> 茉莉とはお互い口が止まらないくらい、本当にずっと話しているんです。本当に仲が良い。喋りやすくて、本当に気を使わなくていいというか、同じ部屋だったらずっとしゃべっているという感じです。茉莉といたらとても楽しいし、なんか「喜ばせたい」となるんです。

<深田> 心椛ちゃんも、心椛ちゃんの妹ともすごく仲が良くて、二人とも本当におしゃべりしやすいです。

<村瀬> めちゃくちゃ仲良いんです、本当に。

――そんなお二人で一緒に表彰台に上がれたのは素敵な思い出になりましたね。

<村瀬> はい、「二人で絶対乗ろう」とは言っていたんです。茉莉が「どうしよう、いけるかな」と言っていたから、ビッグエアが終わった後に「いやいや、そんな弱気になったらダメだよ。茉莉も実力あるし、表彰台に乗れるんだから一緒に乗ろう」と言っていたら本当に実現しました。それも本当に金メダルをとってすごいなと。本番でそうやって決められることがすごいなと思いました。

――本当にお二人とも素晴らしかったです。改めましておめでとうございます。

<二人> ありがとうございました。

MATSUO.K/AFLO SPORT

■プロフィール

村瀬心椛(むらせ・ここも)
2004年11月7日生まれ。岐阜県出身。4歳でスノーボードを始め、18年、X GAMESノルウェーで大会史上初となるバックサイドダブルコーク1260を決め優勝。北京2022冬季オリンピックでは女子ビッグエアで銅メダルを獲得。ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックでは、女子ビッグエアで金メダル、女子スロープスタイルで銅メダルを獲得。実妹の村瀬由徠もプロスノーボーダー。ムラサキスポーツ所属。

Naoki Morita/AFLO SPORT

深田茉莉(ふかだ・まり)
2007年1月1日生まれ。愛知県出身。中学入学後の13歳でスノーボードを始める。ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックで初のオリンピック出場を果たすと女子ビッグエアで9位、女子スロープスタイルでは金メダルを獲得。19歳48日での金メダル獲得は、冬季オリンピック日本人女子選手最年少記録となった。YAMAZEN所属。

MATSUO.K/AFLO SPORT

※本インタビューは2026年2月20日に行われたものです。

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