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平昌に向けた研修合宿 「The Building up Team Japan 2016 for Pyeongchang」を開催

カテゴリ:オリンピック
2016.05.16
平昌に向けた研修合宿 「The Building up Team Japan 2016 for Pyeongchang」を開催
3大会目の試みとなる今回の研修には180名以上の選手、競技関係者が集まった(写真:フォート・キシモト)
平昌に向けた研修合宿 「The Building up Team Japan 2016 for Pyeongchang」を開催
松岡修造日本テニス協会強化副本部長によるオープニングセッション(写真:フォート・キシモト)

 日本オリンピック委員会(JOC)は4月29日から5月1日までの3日間、2018年平昌オリンピックに向けた合宿形式の研修会「The Building up Team Japan 2016 for Pyeongchang」を開催しました。この研修会は、国内外の転戦が多く活動拠点が幅広い冬季競技同士の連携や交流を深め、日本代表としての自覚と責任、連帯感を強めることを目的に2010年バンクーバーオリンピックから行われており、今回で3大会目。会場の味の素ナショナルトレーニングセンターには各競技のトップアスリートや指導者、国内競技連盟(NF)スタッフら約180名が集まりました。

■“松岡修造流”の前向き思考とは

 研修は、日本テニス協会の松岡修造強化副本部長のオープニングセッションからスタート。自身が手がける日めくりカレンダーの言葉を抜粋し、スライドやホワイトボードで示しながら、競技生活で直面するさまざまな出来事、事象に対する考え方を伝えました。松岡さんは、苦しくなったときやいらいらしたときにどういう思考でどういう行動をとったら良いか、結果を残している選手に共通するメンタルなどを自身の経験も踏まえながら熱く説明。会場は時折笑いに包まれながらも、自然と松岡さんの話に引き込まれていました。

■チームビルディングで交流を深める

 会場の空気が温まったところで、参加者同士の交流を深めるための「チームビルディング」へと移りました。初めに自己紹介を兼ねて、相手をどんどん変えながら自分との共通点を探してビンゴを完成させる「HUMAN BINGO(ヒューマン・ビンゴ)」を実施。その後は全員が20チームに分かれ、細長い棒を全員の指だけに乗せた状態で下に降ろす「CANE(ケーン)」、細かく決められたルールに従って指示通りの立ち位置へ動く「TRAFFIC JAM(トラフィック・ジャム)」、細長い板を組み合わせてお手本の形を完成させるまでの所要時間を競う「BOB(ボブ)」の3つのプログラムに挑戦しました。


平昌に向けた研修合宿 「The Building up Team Japan 2016 for Pyeongchang」を開催
チームビルディングで課題に挑戦する参加者たち(写真:フォート・キシモト)
平昌に向けた研修合宿 「The Building up Team Japan 2016 for Pyeongchang」を開催
金メダリストとして講義を行った高橋尚子JOC理事(左)と、鈴木大地スポーツ庁長官(右)(写真:フォート・キシモト)

 一見簡単そうに見えながら実は難しい課題とあって、参加者は四苦八苦。合間には感想を共有する時間も設けられ、各チームともにメンバー間で意見を出し合い、役割分担をしながら課題に取り組みました。特に最後の「BOB」では、記録を少しでも縮めるべくトップアスリートたちが汗だくになりながら何度も何度も挑戦。そして終盤、ついにこれまでの“世界記録”を超えたチームが現れると、この日一番の盛り上がりに。上位3チームには金銀銅のメダルが贈られました。


■金メダリストの体験談から競技生活を見つめ直す

 オリンピアンが講師役となり、それぞれの経験談からアスリートとしてのあり方を学ぶ「The学」。まずはシドニーオリンピック女子マラソン金メダリストの高橋尚子JOC理事が登壇しました。高橋理事は「ちょっとだけ頑張る、を毎日続ける」というアドバイスがその後の競技人生を大きく変えたというエピソードや、自分の支えになったという3つの言葉を紹介。持参したオリンピックの金メダルを参加者に回して触れてもらう機会も作りました。そして、モチベーションが下がったときや苦しいとき、不安になったときにどう乗り越えてきたかを語るとともに、日本代表選手として「自覚と自信、責任を持って、強いだけでなく憧れられる選手、真の一流選手を目指して下さい」とエールを送りました。

 続いて登壇したソウルオリンピック競泳・背泳ぎの金メダリスト、鈴木大地スポーツ庁長官は、過度の緊張から体調を崩し不本意な結果に終わったロサンゼルスオリンピックから、けがによるブランクを経て出場し、予選でライバルに世界記録を出されながらも本番の秘策で金メダルを勝ち取ったソウルオリンピック、直前に引退を決意し出場がかなわなかったバルセロナオリンピックまでを振り返りながら、山あり谷ありの競技生活で学んだことを共有。また、競技生活の終盤に挫折を経験したことが今の活動に生きていると明かし、最大限の努力をして得られた結果は、たとえメダルでなくても自身の糧になるという考えを示しました。


平昌に向けた研修合宿 「The Building up Team Japan 2016 for Pyeongchang」を開催
コンディショニングケア実技でバランスチェックを体験(写真:フォート・キシモト)
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メディアトレーニングでインタビューの受け方を学ぶ(写真:フォート・キシモト)

■「こころ」と「からだ」のコンディショニングケア

 2日目最初のプログラムは、中尾繁樹関西国際大学教授・特別支援教育士SVによる講演「こころの手当て、からだの手当て」が行われました。このプログラムは、ちょっとした意識や見方を変えるだけで全く違った視点で自分の心や体に気づくことができ、「どうしたら緊張がほぐれるのか」「どうすれば競技中に軌道修正できるのか」などを講義や演習によって理解・体験し、本番に強い「こころほぐし」とけがに強い「からだづくり」をテーマに実施。中尾教授の指導のもと、アスリート同士が互いに姿勢をチェックしたり、体のゆるめ方を実践するなど、人間の体の仕組みや重心について理解を深めていきました。

 また「運動は無意識で行われています。意識するとすごくぎこちなくなって上手にいきません」とアドバイスをした中尾教授。パフォーマンス向上のためにはいかに無意識の状態にもっていくかが大事であり、その方法の1つとしてのルーティーンの仕組みなどを説明しました。

 続いてハンドボールコートに移動し、吉田真JOC選手強化本部情報・医・科学専門部会医学サポート部門部門員によるコンディショニングケア実技が行われました。ここでは脳震盪の症状や回復度を診察する際に行われるバランスチェックを体験。これを用いることにより脳震盪の症状だけでなく、自身の体調や疲労度も判断できることから、吉田部門員は「特別な道具を使わなくても自分の体調を知ることができる方法として、ぜひ活用してください」と呼びかけました。


■メディア対応の実践練習からチームワーク、SNSの活用法まで

 お昼休憩の後、午後最初のプログラムとして行われたのはメディアトレーニング。日本テレビの田中毅アナウンサー、後藤晴菜アナウンサーが講師となって、インタビューで心がけること、インタビューでよくある質問など、具定例を挙げながら説明しました。さらに、アスリート全員で発声や滑舌の練習、さらに選手同士ペアになっての模擬インタビューも実践するなど、メディア対応の基本を学びました。


平昌に向けた研修合宿 「The Building up Team Japan 2016 for Pyeongchang」を開催
卓球の実技では各所で白熱した試合が繰り広げられた(写真:フォート・キシモト)
平昌に向けた研修合宿 「The Building up Team Japan 2016 for Pyeongchang」を開催
SNS講座を行ったTRENSYSの上田大介代表(左)と、国際社会を見据えた講義を行った室伏広治JOC理事(右)(写真:フォート・キシモト)

 その後選手たちは卓球場へ移動。ここではチームワークを高めるプログラムとして卓球が行われました。チームごとに分かれて、まずはラケットの上でボールをポンポンとリフティングする基礎練習から始まり、ラリー練習、ダブルス練習、シングルス練習と徐々に実践形式に移行。最初はラリーが3球も続かなかったチームもありましたが、コツをつかむと一気に上達。指導した宮崎義仁JOCアシスタントナショナルコーチが「さすがオリンピックを目指すアスリートですね」と感心する中で行われたチーム別の対抗戦でも白熱の試合が続出し、大いに盛り上がりました。

 卓球の後は再び大研修室に戻り、2日目最後のプログラム「選手とソーシャルメディア」と題した講演が行われました。講師の上田大介TRENSYS代表がソーシャルメディア、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の良い点、悪い点を過去の事例を交えて説明。その上でソーシャルメディアの活用方法、その影に潜むリスク対策などを学びました。

■グローバルな視点でスポーツ、オリンピックを考える

 最終日はアテネオリンピック陸上ハンマー投の金メダリスト、室伏広治JOC理事による「The学」から始まりました。現役アスリート唯一のJOC理事を務めるほか、東京2020大会のスポーツディレクターとしても活躍をしている室伏理事は、世界のスポーツ競技団体の内訳、IOCの改革案「アジェンダ2020」が示すオリンピックの目指す姿、国際社会の中で活躍するためのコミュニケーションの重要性といったグローバルな視点と、オリンピアンとしてのあり方やスランプ脱出のためのポイントなど、競技者視点の双方から講義を展開。またドーピング問題についても時間を割き、「スポーツの世界は人の本来持つ力、生まれ持った力で戦うことを誇りにしている唯一のジャンルだからこそ厳しいルールがある」と説明。「ドーピング(薬物)は記録だけでなく、信頼、命も失います。自分の限界にチャレンジするからスポーツは面白い。私がドーピングに手を染めない理由は、自分自身を否定し、限界へのチャレンジを放棄することだからです」と述べました。


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競泳日本代表チームから、ロンドン大会主将の松田丈志選手(左)とリオデジャネイロ大会主将の金藤理絵選手(右)がゲスト参加(写真:フォート・キシモト)
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閉会あいさつを行う橋本聖子JOC選手強化本部長(写真:フォート・キシモト)

■夏季競技の最前線から 競泳チームの事例紹介

 最後の「The学」は、リオデジャネイロオリンピックの代表内定者が決まったばかりの競泳チームから、日本水泳連盟の上野広治強化本部長、平井伯昌競泳委員長と、ロンドンオリンピックで主将を務めた松田丈志選手、リオデジャネイロオリンピックの主将を務める金藤理絵選手の4名をゲストに迎え、夏季競技の事例共有が行われました。

 今大会でチーム最年長となる松田選手は「新しい世代の選手たちのパワーがすごく、ついていくのが大変」と苦笑いしながら、ロンドン大会ではチームとして「初出場の選手にいかに最高のパフォーマンスをしてもらうか」を意識したと説明。「チームの底上げ」のため、メダルの数と同様に「自己ベスト率」を重視したことを明かし、「全員が共通して持てる目標があるといい」とアドバイスしました。

 金藤選手は代表に入れなかったロンドンオリンピックの後、引退に傾く気持ちと毎年戦いながらも今シーズンに入って自己ベストを更新し、内定を勝ち取った過程を説明しました。競泳選手としてはスタートが遅く、トップに上がるまでのプロセスが他の選手と少し違うという金藤選手。「私のような選手でも日本代表になって活躍できる。誰もが可能性を持っていることを忘れずに練習に励んでください」と呼びかけました。

 すべてのプログラムを終え、最後にクロージングセッションとして橋本聖子JOC選手強化本部長が登壇。橋本本部長は3日間盛りだくさんのプログラムをこなした参加者をねぎらいつつ、「平昌オリンピックでメダルを取る」という目標を躊躇なく掲げる選手がまだ少ない様子を察すると、強いトーンで意識改革を促しました。そして約650日後に迫った本番に向け、「周り以上に自分自身がかけるプレッシャーの方がはるかに大きい。現状に満足せず、自分自身に何ができるのかを考えて120%以上の準備をして、平昌のスタートラインに立つときには余裕を持って、プレッシャーを楽しみながらゴールを目指せるところまで人間力を高めて下さい」と述べ、「平昌ではみんなで笑顔で抱き合えるように、私も使命感を持って全力で頑張っていきたいと思います」とあいさつしました。





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