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2015.05.13 キャリア支援

JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施

JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
今回のプレゼンに参加した選手たち。左から中川選手、小堀選手、菊池選手、藤本選手、横山選手、津川選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
青木剛JOC副会長によるあいさつ(写真:アフロスポーツ)

 公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)は4月24日、経団連会館(東京都千代田区)で、トップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」の説明会を行いました。
 アスナビは、オリンピック・パラリンピックや世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、企業の就職支援を呼びかける活動。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまでに47社/団体65名(2015年4月6日時点)の採用が決まりました。

 今回の説明会は、日本経済団体連合会(経団連)の会員企業/団体を対象に行われ、54社81人が参加。経団連向けの説明会は昨年5月の初開催以来、今回で2度目となりました。

 冒頭のあいさつに立った青木剛JOC副会長兼専務理事は、アスナビを通じた採用実績を示しながらも、いまだに環境が厳しく現役を続けることを諦めざるを得ない選手が多く存在している現状を語りました。そして「トップアスリートが国際大会などで大活躍するためには、専用の練習場や宿泊食事施設などのインフラの整備だけでなく、経済的な観点からも安心して競技に打ち込める環境が必要不可欠です。日頃のサポートが彼らの明日をつくります。そういう意味で、皆さま方も“チーム・ニッポン”の一員と私たちは思っております」と述べ、2020年東京オリンピック・パラリンピックも見据えながら、さらなる企業の支援を呼びかけました。

 続いて、福井烈JOC理事がアスナビの概要について、雇用形態や選手の支援に必要な負担費用、配属部署、PRにおける活用方法などを具体的に説明。世界のトップを目指すアスリートが企業にもたらす効果の高さを挙げ、「今日の選手たちの生の声を聞いていただいて興味を持っていただければと思います」と訴えました。

 アスリートの採用事例紹介では、松原颯選手(水泳・競泳)と横尾千里選手(7人制ラグビー)の2名が勤務している全日本空輸株式会社(ANA)の國分裕之上席執行役員・人事部長兼ANA人財大学長が登壇しました。國分部長は両選手を採用した経緯について、「アスリートとしても社会人としてもトップレベルで活躍したいという姿勢が、『努力と挑戦』を行動指針の1つとして掲げる当社が求める人財像と高い次元でマッチしていると考えた」と説明。ダイバーシティ(多様性)の象徴的な存在として社内に新しい風を吹き込んでもらい、世界のリーディングエアラインを目指す同社の社員に、世界と闘う意味を直接伝えていくことを期待していると語りました。
 また、2選手が入社後にもたらしたものとして、競技会へ応援に行くことで職場の結束が強まったこと、今まで知らなかったアスリートの一面や競技そのものに触れることで視野が広がるという点を挙げ、「今はANA単体での採用なので、グループ企業全体にも展開していきたい。また、広報や人事以外にも受け入れ口を広げたい」といった課題も示しました。

JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
ANAの國分人事部長による事例紹介(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
テコンドーの中川選手(写真:アフロスポーツ)

 ここで八田茂JOCキャリアアカデミー事業ディレクターが進行役となり、就職を希望する6名のアスリートによるプレゼンテーションが行われました。選手たちは競技に使う用具や大会で獲得したメダルなどを手に、それぞれ工夫をしながら懸命に自身の強みをアピール。また、今回はアスナビ説明会で初めて、知的障がいクラスでパラリンピック出場を目指す津川拓也選手(水泳)がプレゼンテーションに参加し、母の智江さんが代わりにスピーチを行いました。

■中川貴哉選手(テコンドー)
「2013年の東アジア大会では世界選手権2位のチャイニーズ・タイペイ選手や韓国勢など強豪がひしめく中で優勝し、今年1月には世界最大の規模を誇るUSオープンにおいても準優勝という結果を残しました。私がテコンドー男子初のメダルを獲得し、日本のオリンピックの歴史に新たな1ページを刻みたいと思います。
 私の強みは100回折れても屈しない精神です。ルールの変更に合わせて柔軟に戦い方を変えられることも、私の強みです。社内業務においても創意工夫や受難な対応力を発揮したいと思っております。応援してくださる企業がありましたら、広く社会に対し、夢に向かって果敢に挑戦するアスリート魂を伝えていきたいと思っております」

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ショートトラックの横山選手(写真:アフロスポーツ)
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ショートトラックの菊池選手(写真:アフロスポーツ)

■横山大希選手(スケート・ショートトラック)
「専属のコーチがついて指導していただくような環境には恵まれなかったので、レベルアップをするために自分のレースを自分で分析して改善し、次につなげる努力をしてきました。また他チームのコーチの指導法なども聞き比べ、自分で実践し必要なものは何か考えるなど、自分で考える力がつきました。
 今後はショートトラックの魅力をより多くの人に伝え、ショートトラック界を盛り上げていける選手になりたいと考えています。そして、応援しサポートしてくださる皆さんに『ええもん見してもろた』と言ってもらえるようなレースをしていきたいです。企業に入ってからも、企業の戦力を考えられるような存在になれればと考えております」

■菊池萌水選手(スケート・ショートトラック)
「初出場したソチオリンピックでは世界最高峰のショートトラックを肌で感じることができましたが、ただただ世界との差を痛感するだけでした。オリンピックでメダルを取るという目標を掲げて今よりも練習量を増やし、練習の質を上げることが大切だと考えています。そのためには『セルフコントロール』と『チームワーク』の2つが必要だと思っています。
 学業とスケートを通して学んだことは、努力の幅を広げることだと思います。そして、その努力を継続する力を生かし、社会に貢献できる人に成長していきたいと思っています。採用していただける企業で、私自身が世界で戦う中で得たスポーツの楽しさを伝えながら、感謝の気持ちを忘れることなく競技に取り組んでいきたいと思っております」

JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
競泳の小堀選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
アイスホッケーの藤本選手(写真:アフロスポーツ)

■小堀勇氣選手(水泳・競泳)
「ロンドンオリンピックを経験しながらも結果が伴わず、精神的に苦しい時間を過ごしました。しかしそこで諦めたら今までの努力が無駄になると思い、数々のオリンピックメダリストを育てた平井伯昌先生に師事することにしました。平井先生に言われて生活面でも工夫をした結果、大幅に自己ベストを更新し世界選手権に出場することになりました。
 自国開催の(2020年)東京オリンピックでは金メダルを獲得しセンターポールに日の丸を掲げたいと思っています。また、社会に身を置いて競技と仕事に取り組むことで、競技者として、また人として成長したいと願っています。そしてその先にあるメダル獲得に向けて、企業の皆様と共に一歩づつ前進していきたいと思います」

■藤本那菜選手(アイスホッケー)
「ソチオリンピックでは1勝もすることができず、非常に悔しい思いをしました。世界との差を埋めるためにはいかに速く正確に動けるかということと、1試合を戦い抜く体力と集中力が必要と考え、帰国後すぐにトレーニングに励みました。その結果、世界選手権では初めてトップディビジョン残留を決めることができました。
 アイスホッケーはチーム競技です。私はチームで木の根のような、影ながらしっかりと支える存在になれるよう心掛けています。キーパーというポジション柄もありどんな場面でも常に冷静に判断し、安定感を崩さず受けとめ、周囲をサポートします。お世話になる企業でもチームワークを大切に、きれいな花を咲かせられるような、芯のある根っこになれるよう頑張ります」

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パラリンピック水泳の津川選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
特別講演を行った朝原さん(写真:アフロスポーツ)

■津川拓也選手(パラリンピック水泳・知的障がいクラス)
・津川選手の母、智江さんによるプレゼン
「知的障がいとは日常生活において物事を判断したり、適切な行動を自分で行う能力に困難を抱える障がいのことです。拓也の場合は、集団の中でも真面目に落ち着いて1日を過ごせる体力と気力を有しています。写真で示す、お手本を見せるなど視覚で理解できる指示を頂ければそれを把握し、最後までやり通すことが可能です。
 ロンドンパラリンピック100m平泳ぎで6位入賞を果たし、昨年のアジアパラでは銅メダルを獲得、現在世界ランキング4位と着実に成績を伸ばして参りました。来年のリオ、2020年の東京パラリンピックを目指すために、本格的な競技生活を維持できる環境を作るべく新たな挑戦をしたいと考えております。この子は不思議と小さい頃から良いご縁をもたらしてくれるので、今日もこの会場にいらしてくださった皆さんと、きっと良いご縁を結んでくれると期待しております」

・津川選手のコメント
「リオ、東京パラリンピックを目指して頑張ります。よろしくお願いします」

 最後に、北京オリンピックの陸上男子4×100mリレー銅メダリストで、現在は大阪ガスの近畿圏部地域活力創造チーム課長を務める朝原宣治さんが「目標達成のためのセルフマネジメント」と題した特別講演を行いました。
 朝原さんは、中学時代に所属したハンドボール部で厳しい指導体制のもと全国大会に出場したものの、「精神的に燃え尽きて」高校で陸上に転向。その後、顧問の先生の自由な指導によって自主性が生まれ、どうしたら勝てるようになるか工夫をするようになったという経験を語り、「トップになろうと思うと、自分で工夫をしながらいろいろな人とコミュニケーションを取って強くならないといけません。そういう意味でアスリートは素晴らしい人材ではないでしょうか。海外経験が多いので視野も広いと思います」と、トップアスリートの強みをアピール。「競技生活において大切なことは、会社生活でも役に立つ」とし、自身が社業に就いてからは、現役時代に考えていた思考が役立っていると述べました。
 そして、現在朝原さんが携わっている業務として、アスリートの立場から「まちの健康力の向上」という課題にアプローチするためのさまざまな活動を紹介。「(オリンピックを目指すアスリートである)自分を社員として採用することは会社も賭けだったと思います。でも、会社がその都度フォローをしてくれたおかげで、競技だけでなくいろいろな知識が身につきました。採用いただいた後も、競技だけでなく『良い社会人』になれるよう、人間力をさらに磨いてください」とアスリートにメッセージを送り、講演を締めくくりました。

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