HOMEニュース平成26年度「スポーツ団体マネジメントセミナー」を開催 ガバナンス力強化へ

ニュース

平成26年度「スポーツ団体マネジメントセミナー」を開催 ガバナンス力強化へ

カテゴリ:その他活動
2015.03.20
平成26年度「スポーツ団体マネジメントセミナー」を開催 ガバナンス力強化へ
約130人を集めた今年度のセミナーは3部構成で行われた(写真:アフロスポーツ)
平成26年度「スポーツ団体マネジメントセミナー」を開催 ガバナンス力強化へ
青木副会長はガバナンスの重要性を訴えた(写真:アフロスポーツ)

 日本オリンピック委員会(JOC)は16日、味の素ナショナルトレーニングセンターで「スポーツ団体マネジメントセミナー」を開催しました。このセミナーは国民の求める社会的価値観に応え、より支持されるスポーツ団体としての組織力の強化を図ることを目的に行われるもので、昨年に引き続きデロイトトーマツコンサルティング株式会社などの協力のもと、JOC役職員、加盟団体関係者ら約130人が参加しました。

 冒頭、青木剛JOC副会長兼専務理事があいさつを行い、「平成20年12月の新公益法人制度の施行以来、われわれスポーツ界もほとんどの団体が公益法人および社団への移行申請が完了し、公益活動を展開しているところです。他方、スポーツ界において内閣府から勧告を受けるなど、新制度において法人運営の適正確保に課題があることを真摯に受け止めなければならないと思います。われわれスポーツ団体は、スポーツ基本計画の第三章にあります『スポーツ団体のガバナンス強化と透明性の向上』に向けた取り組みをオリンピック・パラリンピックの開催国として、今まで以上に推進していけたらと思います」と述べ、公益財団法人におけるガバナンスの重要性を説明しました。


平成26年度「スポーツ団体マネジメントセミナー」を開催 ガバナンス力強化へ
野審議官が競技団体とのやり取りから見えた課題を提示(写真:アフロスポーツ)

 第1部は「新制度の公益法人に求められる『ガバナンス』について〜5件の勧告事案など監督をめぐる法人との“対話”からうかがえること〜」というテーマで、前内閣府公益認定等委員会事務局長の野修一総務省大臣官房審議官が基調講演を行いました。

 野審議官は、内閣府から勧告を受けた5件のスポーツ法人の事例を示しつつ、公益財団法人は社会のためのものであるという点を強調。そして、「法人の役員は法人のために役目を果たす人。決して役員が法人を所有しているわけではないということを思い返していただきたい」と訴えました。
 5件の勧告を受けるに至った原因にはスポーツ界独自の事情もあることを説明。遠征費等で財政が厳しい団体が多く、その中で資金を集められる人のワンマン経営になる傾向があること。また、法人経営とは関係がない現役選手時代の実績で経営陣が選出される傾向があること。そして、スポーツ界独特の上下関係によって、目上の人に対して異議を唱えられないという点が挙げられました。これを予防するために、客観的な目、外部の視点を入れることや、経営トップの周囲に経営判断を補える適切な人材を配置すること、専門家の意見を取り入れる場合においてもセカンドオピニオンを聞くことなどを挙げました。


平成26年度「スポーツ団体マネジメントセミナー」を開催 ガバナンス力強化へ
実務上の課題等について専門家の意見を聞くためにJOCの日比野部長が登壇(写真:アフロスポーツ)
平成26年度「スポーツ団体マネジメントセミナー」を開催 ガバナンス力強化へ
里崎ヴァイスプレジデントは競技団体をサポートする立場からコメント(写真:アフロスポーツ)

 第2部は「公益法人制度を知り、スポーツ団体のガバナンス力を強化する」というテーマでのパネルディスカッション。第1部に引き続き野審議官と、内閣府公益認定等委員会の惠小百合委員、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー株式会社スポーツビジネスグループ準備室の里崎慎ヴァイスプレジデント、コンプライアンス推進室長の日比野哲郎JOC総務部長、モデレーターとしてデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー株式会社の山田泉執行役員が登壇。会場の参加者に実務面に関する質問を行い、その結果を踏まえてパネリストがコメントをするという形式で行われました。

 1部でも触れられたスポーツ法人の公益性に関しては、日比野JOC総務部長が、2013年に就任したバレーボール協会の羽牟裕一郎会長の言葉を紹介。「『1年365日バレーのことばかり考えている人だけ集めると結局何も変わらない。病院が社会医療法人になれば個人のものでなくなるように、バレー協会だって公益財団なんだから、いつまでもバレーボーラーのための協会じゃダメ』とここまで言い切っているんですね。私は正直、当時はここまでの感覚になれなかった」と振り返りました。
 里崎ヴァイスプレジデントは、「歴史的にスポーツ団体は自分たちの競技の発展、普及が機軸にある形で活動されてきたので、共益性にフォーカスがされやすい面があります。一方で新しい公益財団制度では、開かれた公益性が重視されるというように軸足が移ってきた。そこの切り替えに苦労されている法人が多い」と指摘しました。
 その上で、野審議官は、「抽象的に国民のためと言われても…と思われるかもしれませんが、潜在的なバレーボーラーが入ってくるような法人、団体と考えるのはひとつの視点だと思います。今いる役員、今やっているアスリートのためではなく、テレビでバレーボールを見ている若い子どもたちがバレーボールをやってみようとなるかどうか。そういう視点を持てるかどうかだと思います」と、公益性を備えるためには、次世代のためという視点で運営に取り組むことが有効であるとしました。


平成26年度「スポーツ団体マネジメントセミナー」を開催 ガバナンス力強化へ
惠委員は他の公益法人との連携などを提案(写真:アフロスポーツ)
平成26年度「スポーツ団体マネジメントセミナー」を開催 ガバナンス力強化へ
第2部のモデレーターを務めた山田執行役員(写真:アフロスポーツ)

 そして、そういった公益性を備えた運営を行うために理事が果たすべき役割、役員会の議事録、赤字予算が認められるのかなど細部にわたった議論が行われ、第2部はまとめの段階に。野審議官は、「一番大事なことは公益目的活動を継続的、持続的に世の中との関係で説明可能な状況を常に確保しながらどうやって実施していくのか。世の中を代表をしているであろう評議委員の人たちにきちんと理解してもらう。法人内部のいろいろな意見、少しずつ違う意見を持っている人たちと向き合ってそういう人たちとの関係でガバナンスをしていけるか。そして、スポーツに参加したい青少年、応援している国民に理解してもらえるかということをよく視野に入れて運営してもらえばいいんじゃないかなと思います」と話しました。
 惠委員は、他の公益法人との連携も法人運営を向上させる上で有益としました。また、「もう一つは、第三者に自分たちを説明する機会を作ること。競争的な資金にエントリーするなど、自分たちの説明をする機会があれば、自分たちの姿はどういうものなんだろうと確認する機会にもなる」と提案しました。

 最後に日比野部長は「2020年が決まったことによってオリンピック競技団体だけではなく、JOCには一般の方からも質問がたくさん来ています。世間から注目されるこれから5年の間は自分たちを見つめ直して、高いモラルと真の公益性を持った団体に生まれ変われるチャンスと捉えております」と気を引き締めました。


平成26年度「スポーツ団体マネジメントセミナー」を開催 ガバナンス力強化へ
昨年に引き続き、達脇パートナーが講演を行った(写真:アフロスポーツ)

 第3部は「2020年に向け、ガバナンス/コンプライアンス力を強化する」というテーマで、有限責任監査法人トーマツの達脇恵子エンタープライズリスクサービスパートナーが、昨年に各団体に対して行ったアンケート調査とヒアリングの結果を紹介しながら、課題を提示した上で改善に向けた提案を行いました。

 まず達脇パートナーからは、規模が突出して大きい日本サッカー協会を除くと、規模や強化にかかる補助金の額にかかわらずどの競技団体も経理担当者の数は平均で2〜3人と大きな差がなく、規模の小さい団体ほど経理にかかる管理費の割合が高くなる傾向があることが報告されました。そして、どこの競技団体も事務処理の負担が重いと感じており、かつマニュアル化が進んでおらずに業務が属人化している現状が浮き彫りとなりました。
 さらに、リスクが高い事例として、帳簿の記入担当者と経費支払の担当者、または銀行預金の取扱者が兼務している点が挙げられました。この状態ではミスや不正の発見が難しくなるため、改善が必要であるとしました。
 一方で、こうした課題を踏まえ、意識改革や体制の変更、ルールの整理や明文化、業務の効率化などの業務改善を進めている団体もあり、それぞれの取り組みが紹介されました。

 講演中、達脇パートナーが最も訴えたのは、競技団体間の横の連携がないという点。「皆さん、異口同音にほかの団体の情報がほしいとおっしゃっていました。ですが、うちはほかとは違って特殊だからということも常に出てくる。でも業務の流れを細かく聞いていくと皆さん一緒なんです。特殊だからという考えを乗り越えていただくことが大事」と話し、「岸記念体育会館の中に隣り合わせているのに、皆さん団体間の情報共有をされていない。悩みどころ、業務の性質は似ているところがたくさんあって、お互いに参考になるところがあると思いますので、積極的にやっていただけたらいいんじゃないかと思います」と団体間の情報共有を勧めました。

 最後に、競技団体にやってもらいたいこととして、「国からの補助金を預かって事業を行うということ、さらには独立した大人の一法人であるという自立意識を持っていただきたい。それから、自立した一法人として業務の運用を今後も継続して実施していくためには、なんらかの組織的な対応が必要」という点を挙げ、「現場の方の意識だけに頼っていてはその方たちの負担が増える一方になりますので、ぜひ団体としての取り組み、仕組みづくりに着手していただきたいと思います」と、内部統制に取り組む際に必要な要素を示して、講義を締めくくりました。





ページトップへ