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2013.02.07 その他活動

2012年度「スポーツジャーナリストセミナー」を開催

2012年度「スポーツジャーナリストセミナー」を開催
2012年度「スポーツジャーナリストセミナー」

 日本オリンピック委員会(JOC)は1月31日、都内で日本スポーツ記者協会とともに2012年度「スポーツジャーナリストセミナー」を開催しました。本セミナーはオリンピック・ムーブメントの一環として、報道と競技団体の相互理解の場とすることを主旨に行われています。15回目となる今回は「オリンピック取材、報道の課題と展望」をテーマに、過去のオリンピック大会時の事例から取材する側、される側双方の問題を明らかにし、より良いシステムの構築を目指し、国内スポーツジャーナリストやJOC加盟団体・関係者など約90人が参加しました。
 冒頭、JOCの市原則之専務理事はセミナーの概要を説明し、「競技団体とメディアという立場の違うみなさんが、オリンピックを中心としたスポーツ報道について意見を交換することで有意義なセミナーになることを願います」とあいさつしました。

2012年度「スポーツジャーナリストセミナー」を開催
現役選手として取材を受ける選手の心境を語った船木さん
2012年度「スポーツジャーナリストセミナー」を開催
3大会連続で冬季大会に出場した勅使川原さん

■「取材を受ける」アスリートの思い
 第1部では、「ソチオリンピック冬季大会に向けた報道態勢について」と題し、スキー・ジャンプで1998年の長野オリンピックでは金メダル2個、銀メダル1個を獲得した船木和喜さんとスケート・ショートトラックで長野・ソルトレークシティ・トリノと3大会連続でオリンピックに出場した勅使川原郁恵さんをゲストに迎え、藤原庸介JOC理事兼事業・広報専門副部会長と、竹内浩同部会員がコーディネーターとして登壇しました。

 まず、オリンピックと国際大会の違いについて聞かれた船木さんは「長野のときは、コーチから指示がない状況でメディア対応をするのが嫌でした」と当時の正直な思いを語り、競技予定が残っている段階で取材を受けることについて「長野のときは先輩の原田(雅彦)さんが代表して話してくれたので楽でした」とのエピソードを披露しました。
 続いて、勅使川原さんはレース後の取材に応じる心境について「勝ったときに取材に来てくれるのはもちろんうれしいですが、負けたときもメディアに対して話したいことがたくさんありました。そのときは自分からメディアに声をかけて話を聞いてもらいました」と、選手の意外な思いを語りました。
 このほかにも、「各種目の代表チームにそれぞれ広報担当者が必要か」という話題で船木さんは「チームは人数も限られており、代表レベルの選手は自分で自分をコーチングできるので、監督やコーチにメディア対応もしてもらいたいです」と考えを述べる場面もありました。

2012年度「スポーツジャーナリストセミナー」を開催
ロンドンでは柔道の取材に携わった時事通信社・富沢次長
2012年度「スポーツジャーナリストセミナー」を開催
ロンドンで水泳の取材を担当した産経新聞社・青山記者

■広報担当とメディアが考えるオリンピック報道のあり方
 第2部では、「ロンドンオリンピック大会の報道について」と題してパネルディスカッションが行われました。ロンドンオリンピックの際にメディア対応を行った日本水泳連盟競泳委員の小倉大地雄さんと、全日本柔道連盟強化委員会統括ディレクターの木村昌彦さん、ロンドンでは柔道の取材を行った時事通信社の富沢高行次長、水泳の取材に携わった産経新聞社の青山綾里記者、そしてコーディネーターとしてロンドンでは日本代表選手団のプレスアタッシェとしてメディア対応の指揮を執った竹内浩JOC事業・広報専門部会員が登壇しました。

これまでシドニー・アテネ・ロンドンと3大会でメディア対応を行った木村さんは、「シドニー・アテネに比べて、ロンドンでは『ともに勝つ』という雰囲気が薄くなってきたように感じました」と、選手とメディアの関係希薄化に対して今後は戦略的な広報が必要であるという意見を述べました。
 続いて、小倉さんが「競泳はロンドン入りして練習をした際に、どこでどうやって取材してもらうか調整するのが大変で、プールサイドやスタンドを転々としながら取材を受けたこともありました」とエピソードを紹介すると、青山さんは「小倉さんがメディア対応の役割を担ってくれたことで、取材の際の細かい段取りの打ち合わせができました。取材陣の要望に対し、迅速に対応してくれたことに関して感謝しています」と語りました。

2012年度「スポーツジャーナリストセミナー」を開催
ともにロンドンでメディア対応を行った日本水泳連盟・小倉さん(左)と全日本柔道連盟・木村さん(右)

 議論が盛り上がったのは、会場でメディアが選手の取材を行うことができるミックスゾーンと呼ばれる場所の話題。「IOC(国際オリンピック委員会)は最近の大会で記者会見よりもミックスゾーンの取材を重視している」と竹内部会員が切りだすと、富沢さんは「柔道の会場ではミックスゾーンが観客席に近く、声がかなり聞き取りづらかった」と述べました。青山さんも「メディアが特定の選手に集中して、選手とメディアを隔てる柵が倒れ、あわや選手に怪我を負わせる可能性もありました」と話し、ミックスゾーンに関する問題点が出る一方、「臨場感のある選手のコメントが取れるようになりました」というメリットも明らかになりました。

 また、ロンドンオリンピックからIOCが奨励した選手のSNS利用について、小倉さんは「選手にはマイナスの発言を控えるように指示を出しました。また、水泳連盟としてもYouTubeを使ったインタビュー動画を掲載するなどの活用をしています」と取り組みを紹介。富沢さんは「選手がソーシャルメディアで発信する情報は重要で、去就に関する話題も発信していてチェックは欠かせません」としながらも、「SNSなどで発表された情報をそのまま載せると、妙な記事になってしまいます」と語り、メディアのあり方が問われかねないという危機感もにじませていました。

 競技団体が行うメディア対応のトレーニングについても話は及び、木村さんは「柔道では自己紹介などの練習やアナウンサーによるインタビュー練習などを受けさせました。選手は取材の場で的確な言葉が出てこないので、そういった初歩から取り組ませています」と紹介。小倉さんは「水泳連盟ではそのようなトレーニングは特にしていません。大切なのは公開練習や大会の現場で取材を多く受けて、経験を積むことだと思います」と話し、2人ともメディア対応スキルの向上は必要という考えを示しました。

 最後に日本スポーツ記者協会会長の読売新聞社東京本社川島健司運動部長が「選手とメディアがお互いをリスペクトすることで報道に関するトラブルは減るでしょう。そして、アスリートファーストで報道することで選手の足を引っ張ることは絶対避けなければいないと感じました」と総括し、セミナーを締めくくりました。

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