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スポーツ宣言日本 〜二十一世紀におけるスポーツの使命〜

 平成23(2011)年に創立100周年を迎えた日本体育協会と日本オリンピック委員会は、同年7月に行った記念式典の席上において『スポーツ宣言日本〜二十一世紀におけるスポーツの使命〜』を発表しました。

 この宣言は、100年にわたり日本のスポーツが積み重ねてきた歩みをもとに、次の100年をどのような考え方に立ちどこへ向かって進んでいくべきかの指針を示すものです。

スポーツ宣言日本 〜二十一世紀におけるスポーツの使命〜

 スポーツは、自発的な運動の楽しみを基調とする人類共通の文化である。スポーツのこの文化的特性が十分に尊重されるとき、個人的にも社会的にもその豊かな意義と価値を望むことができる。とりわけ、現代社会におけるスポーツは、暮らしの中の楽しみとして、青少年の教育として、人々の交流を促し健康を維持増進するものとして、更には生きがいとして、多くの人々に親しまれている。スポーツは、幸福を追求し健康で文化的な生活を営む上で不可欠なものとなったのである。

 既にユネスコは、一九七八年の「体育とスポーツに関する国際憲章」において、スポーツが全ての人々の基本的な権利であることを謳っている。しかし、今もなお、様々な理由によりスポーツを享受できない人々が存在する。したがって、遍く人々がスポーツを享受し得るように努めることは、スポーツに携わる者の基本的な使命である。

 また、現代社会におけるスポーツは、それ自身が驚異的な発展を遂げたばかりでなく、極めて大きな社会的影響力をもつに至った。今やスポーツは、政治的、経済的、さらに文化的にも、人々の生き方や暮らし方に重要な影響を与えている。したがって、このスポーツの力を、主体的かつ健全に活用することは、スポーツに携わる人々の新しい責務となっている。

 この自覚に立って二十一世紀のスポーツを展望するとき、これまでスポーツが果たしてきた役割に加えて、スポーツの発展を人類社会が直面するグローバルな課題の解決に貢献するよう導くことは、まさに日本のスポーツが誇れる未来へ向かう第一歩となる。

 このことに鑑み、二十一世紀における新しいスポーツの使命を、スポーツと関わりの深い三つのグローバルな課題に集約し、以下のように宣言する。

  •  スポーツは、運動の喜びを分かち合い、感動を共有し、人々のつながりを深める。人と人との絆を培うこのスポーツの力は、共に地域に生きる喜びを広げ、地域生活を豊かで味わい深いものにする。
     二十一世紀のスポーツは、人種や思想、信条等の異なる多様な人々が集い暮らす地域において、遍く人々がこうしたスポーツを差別なく享受し得るよう努めることによって、公正で福祉豊かな地域生活の創造に寄与する。

  •  スポーツは、身体活動の喜びに根ざし、個々人の身体的諸能力を自在に活用する楽しみを広げ深める。この素朴な身体的経験は、人間に内在する共感の能力を育み、環境や他者を理解し、響き合う豊かな可能性を有している。
     二十一世紀のスポーツは、高度に情報化する現代社会において、このような身体的諸能力の洗練を通じて、自然と文明の融和を導き、環境と共生の時代を生きるライフスタイルの創造に寄与する。

  •  スポーツは、その基本的な価値を、自己の尊厳を相手の尊重に委ねるフェアプレーに負う。この相互尊敬を基調とするスポーツは、自己を他者に向けて偽りなく開き、他者を率直に受容する真の親善と友好の基盤を培う。
     二十一世紀のスポーツは、多様な価値が存在する複雑な世界にあって、積極的な平和主義の立場から、スポーツにおけるフェアプレーの精神を広め深めることを通じて、平和と友好に満ちた世界を築くことに寄与する。

 現代社会におけるスポーツは、オリンピック競技大会等の各種の国際競技会において示されるように、人類が一つであることを確認し得る絶好の機会である。したがって、スポーツが、多様な機会に、グローバル課題の解決の重要性を表明することは極めて重要である。

 しかし、スポーツに携わる者は、そのような機会を提供するだけではなく、スポーツの有する本質的な意義を自覚し、それを尊重し、表現すること、つまりスポーツの二十一世紀的価値を具体化し、実践することによって、これらの使命を達成すべきである。その価値とは、素朴な運動の喜びを公正に分かち合い感動を共有することであり、身体的諸能力を洗練することであり、自らの尊厳を相手の尊重に委ねる相互尊敬である。遍く人々がこのスポーツの二十一世紀的価値を享受するとき、本宣言に言うスポーツの使命は達成されよう。

 スポーツに携わる人々は、これからの複雑で多難な時代において、このような崇高な価値と大いなる可能性を有するスポーツの継承者であることを誇りとし、その誇りの下にスポーツの二十一世紀的価値の伝道者となることが求められる。

平成二十三年七月十五日
日本体育協会・日本オリンピック委員会
創立百周年記念事業実行委員会

会長 森 喜朗


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