Photo:フォート・キシモト
数千年の昔から、水上の移動手段として世界各地で人々に親しまれてきたカヌー。スポーツとしてのカヌーは19世紀にイギリスで発祥しました。カヌーには、流れのない直線コースで一斉にスタートし、着順を競うスプリントと、激流を下りながら吊されたゲートを順に通過してタイムと技術を競うスラロームがあります。
川や湖、またそれに似た屋外の人工のコースで行われるので、大自然と一体となる爽快感が最大の魅力。風を感じながら水上を疾走する気持ち良さを、観戦者もともに味わうことができます。
競技で使われるカヌーのタイプは2種類あり、ブレード(水かき)が片端だけについているパドルで行うカナディアンと、両端についているパドルで行うカヤックです。さらにスプリントはシングル(1人乗り)、ペア(2人乗り)、フォア(4人乗り)の区別があり、距離も200m、500m、1000mの3種類あります。
これらを組み合わせて男女でスプリントが計12種目、スラロームが4種目行われます。2016年リオデジャネイロ大会までは、女子はカヤックのみで、男子より種目数も少なかったのですが、東京2020大会では女子にカナディアンが加わり、種目数も男女同数になりました。
Photo:アフロスポーツ
スプリントは、少し前までフラットウォーターレーシングと呼ばれていました。まさに平らで静かな水面で、8つのレーンが張られ、一斉にスタートしてゴールまでまっすぐ進んでいくレース。ボート競技に似ていますが、漕ぎ手の向きがカヌーは前向きで、後ろ向きのボートとは逆です。またボートの漕ぐ道具であるオールと異なり、カヌーの道具のパドルは艇に固定されていないので、細かな操作ができるのも特徴の一つ。距離もボートが2000mであるのに対し、カヌーのスプリントは200m〜1000m。200mは30〜50秒で終わってしまいます。スプリントの名の通り、短距離を全速力で漕ぎ抜ける競技で、スタートでの素早い飛び出しがポイントとなります。
スタートダッシュの後、水しぶきを上げながら猛スピードで水上を滑るように突き進んでいく様は迫力があり、見ていても爽快です。選手たちのリズミカルで無駄のない動きも格好がよく、とくにペア、フォーの息の合った動きは美しく、見る者を魅了します。
最後はスパート力も重要。白熱した戦いは、最後まで目を離せません。
カナディアンとカヤックでも注目点は異なります。カナディアンは片側しか漕がないので、ふつうに右で漕いでいると左方向に傾いてきます。そこで、方向をコントロールする漕ぎ方の技術がものを言うことになります。膝を立てた独特のスタイルとともにカナディアンの見どころです。
カヤックは両側で漕げるため、カナディアンより速く進みます。よりダイナミックなスピード感が醍醐味です。
一方、スラロームは変化に富んだ流れのある川に、2本のポールをぶら下げたゲートを20前後設け、これに触れないように通過しながら上流から下流へと下るワイルドなタイムレース。ゲートに触れたり、ゲートを通過しなかったりするとペナルティの点がタイムに加算されていきます。人が立っていられないような急流で自由自在に艇を操るテクニックが見どころで、とくにゲートを通過するときはスリリング。横に流されてゲートを通過できないと50秒もタイムが加算されてしまうので、可能な場合は漕ぎ戻って通過します。ゲートのうち6〜7個は、上流に向かって通過しなくてはならないアップストリームゲート。流れに逆らって漕ぐ選手のパワーに注目です。全体に注意深さとスピードが求められるので、見ていてもドキドキしてきます。選手のパワーやバランス感覚、敏捷性に加え、刻々と変化する川の流れや波の状況を見極める判断力も注目ポイントです。
スラロームにもカナディアンとカヤックの2種類があります。カナディアンは、より細かな技術が見どころで、カヤックは、豪快さやスピードが魅力です。
競技はタイムとペナルティの加点の合計ポイントが少ない選手が上位となります。
※東京2020大会組織委員会 公式サイトより