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2021.10.19 オリンピック

【東京2020オリンピックメダリストインタビュー】四十住さくら・開心那:緊張や怖さも楽しくて、スケボーが本当に大好きです

 JOCが年1回発行している広報誌「OLYMPIAN」では、東京2020オリンピックでメダルを獲得した各アスリートにインタビューを実施しました。ここでは誌面に掲載しきれなかったアスリートの思いを詳しくお伝えします。

四十住 さくら(スケートボード)
女子パーク 金メダル

開 心那(スケートボード)
女子パーク 銀メダル

【東京2020オリンピックメダリストインタビュー】四十住さくら・開心那:緊張や怖さも楽しくて、スケボーが本当に大好きです
追加競技となったスケートボード女子パークでメダルを獲得した四十住選手、開選手(写真右より)(写真:アフロスポーツ)

■あっという間のオリンピック

――四十住選手は金メダル獲得、開選手は銀メダル獲得、それぞれおめでとうございます。

四十住 ありがとうございます。

 ありがとうございます。

――まずは、試合を拝見していて、皆さんが楽しそうに、お互いに「良かったよ!」といった感じで褒め合い、たたえ合う姿がすごくかっこよかったです。もしかすると、自分たちとしては特別なことをしている意識ではないのかもしれませんが、そう言われることをどのように感じていますか。

四十住 本当に楽しく、みんな友達とワイワイしながら、お祭りのような感じでプレーしています。それが当たり前だよね。

 敵だとかライバルだとか全然思っていません。敵ではなく仲間だから、楽しく褒め合って励まし合っています。

四十住 やはりみんなと楽しくスケボーをしたいんですよね。

――オリンピックではそれができましたか。

四十住 はい。

 できました。

――記者会見などでも、「オリンピックは特別な大会なのに、皆さん緊張していなくてすごいですね」といった質問を数多くされていたと思います。普段の大会との違いを感じることはありましたか。

四十住 普段の大会の方が緊張するよね。

 オリンピックに出られるか、出られないかを決める試合の方が緊張しました。

――オリンピックに出るという目標はすでにかなっているわけですものね。

四十住 あと、無観客だったことも逆に良かったのかなと思います。

 あ、確かに。観客がたくさんいたら、ワーッという歓声ですごく緊張しちゃうかも……。

――お客さんがいるとやはり緊張しますか。

四十住 観客の皆さんに見てもらいたいですけど、いると緊張しちゃいます。失敗した後の雰囲気が気になる。

 失敗した時……。あまり気にならないけど、たしかになんか嫌(笑)。

四十住 あまり気にならないけど……だよね。

 やっぱり、失敗するのが嫌だな。

――それは、恥ずかしいというような気持ちなのでしょうか。

四十住 私は、失敗したら次で頑張るという感じです。

 それは私も。3本あるから、正直、次で乗ればいいやって感じですね。

四十住 それで1本目で乗れたら、もう緊張感はなくなるよね。

――決勝ではまさに、1本目からしっかり乗れて結果が出て、2本目でさらに良くなり……といういい流れでしたよね。

四十住 本当は1本目にあのルーティンをするつもりではなくて、3本目に失敗したランをやる予定でした。ただ、調子が悪かったので変えたんです。1本目にファイブ―ファイブ(1回転半の技540=ファイブフォーティを2回行う技)をやりましたが、あまり練習もしていなかったですし、完成もしていなかったのですが、それを1本目に乗れたことでほっとして、すっかり緊張がとれました。

――開選手はいかがですか。

 決勝の1本目は少しレベルを上げて技を増やしたので、できるかどうか不安でした。ただ1本目から乗れたのでほっとしました。私は朝起きた時にちょっとだけ緊張したくらいで、あとは本当に全く緊張していませんでした。

――それでも朝は緊張したんですね。

 はい。

四十住 全然、喋らなかったよね(笑)。

 オリンピックも、早く来たなって。

四十住 本当にあっという間だった。この1週間くらいは本当に早かった。オリンピックもあっという間に来て、めちゃくちゃ早く終わったなと。1日で終わる大会は他にないですし。

 いつも予選と決勝で1日ずつずれるしね。

四十住 予選をやって、1日空いて決勝などというケースが多いもんね。

――これほど朝早くから滑ることはあるんですか。

四十住 大会ではあまりないですね。雨が降っているからという理由で、練習が早まったりすることはありますけど。

 もともと決まっているから、起きやすいけどね。

四十住 決まっていなければ、早く起きないし(笑)。

――今日は天気が悪いので、スタートを早くしますといきなり言われても、心の準備ができていないということですね。

 それはめちゃくちゃ緊張する大会です(笑)。

四十住 ただ、今回は朝早かったおかげで、予選の時間は暑くなかったから調子が良かったです。

 曇っていたから体力も奪われなくて良かった。でもファイナルは暑かったね。

四十住 表彰式が一番暑いけどね。

 眩しくて目が開かなかった(笑)。

四十住 太陽の日差しが急に来るしね(笑)。

――暑さ対策は何か準備されたのですか。

四十住 暑かったですが、大会でドーハに行った時の方が暑かったので、大丈夫でした。

 暑かったけど、滑るのが楽しいから滑っていました。何本か飛んで、暑さで本当にヤバそうなときは氷で冷やしていました。

【東京2020オリンピックメダリストインタビュー】四十住さくら・開心那:緊張や怖さも楽しくて、スケボーが本当に大好きです
インタビューでも息ピッタリのやり取りを見せた両選手(写真:アフロスポーツ)

■かっこいい仲間たちとともに

――お互いがお互いを見ていて、ここが良かったという点はありましたか。

四十住 心那は緊張していると全然喋らないんですが、朝は全然喋らなかったんです。でも、滑り出したら普通に喋っていたので、今日は絶好調だなと思いながら見ていました。

 さくらは、絶対大会で緊張しなくてノーミスで滑るんですよね。しかも最初からファイブ-ファイブ。本当にすごいなと思って見ていました。練習で1回乗れたか乗れていないかくらいの組み合わせだったのに、それを一発で乗るからすごいと思いました。本当に練習してきたんだよね。本当に尊敬!(笑)

四十住 心那もでしょ?

 うん。

――では、自分自身のことを客観的にスケートボーダーとして見たときに、自分のどこが一番強みだと思いますか。

四十住 私の強みはテクニカルな部分もあるのですが、最近エアーもよくなってきて、バランスがいいと思っています。

 私はグラインドが得意だけど、最近はエアーも練習しています。

――普段の練習も、そして試合も楽しんでいる感じが伝わってきます。

四十住 緊張したこともありますが、それがいいんです。緊張や怖さも楽しくて、スケボーが本当に大好きです。

 滑るのが楽しい。乗っているだけで楽しい。緊張したとしても、結果を考えて楽しんでいます。

四十住 結果だけではなく、自分にとってベストの滑りができれば満足ですね。

――お二人の話は息がぴったりですね。

四十住 私もライバルと思っていないですし。

 スカイ・ブラウン選手(英国)とも仲良いもんね。

四十住 スカイとも一緒に喋ります。みんな普通に会話しているよね。

 年齢も関係ないし、みんな同じです。

――スカイ選手も最後の最後に素晴らしい滑りで逆転しての銅メダルでした。

四十住 スカイは1本目と2本目を失敗していて、ちょっと緊張しているなと思ったので、「絶対いけるよ」と声をかけて。3番目はしっかり乗ったので良かったです。

 スカイはメンタルが強いからいけると思っていた。

四十住 メンタルは強いけど、昨日は緊張していたよね。

 うん、ファイナルの時。

四十住 以前の試合で、私が緊張していた時に、スカイに「大丈夫だよ」と言ってもらったから今回は逆だった。

 そうだったんだ。

四十住 そう。スカイも1本目が終わってちょっと泣いていたからね。「あと2本あるから絶対いける」って励まして。

 絶対乗れたもんね。

四十住 そして、本当に乗れて。スカイが泣くから、我慢していたのに私も泣いちゃった。

 急に泣くから、私も泣いちゃった(笑)。

――岡本碧優選手もすごく調子が良かったように見えました。スカイ選手が3位になったことで、銅メダルには届かず4位入賞ということになりました。最後のチャレンジを終えて彼女が悲しがっているところに、皆さんが慰めに迎えに行った姿が印象的でした、あの時、お二人はどのような気持ちだったのでしょうか。

四十住 最後まで本当に攻めていく。だから攻めて、攻めて、乗れなかったけど、それでも3本目も攻めて。本当にかっこよかったです。

 本当にそれだよね。同じ気持ちです。

四十住 逆の立場だったら、多分攻めることができていないだろうなと。

 本当にメダルに近かったから、ちょっとレベルを落としてでも、決められるラインを選んでいたかもしれない。失敗するより確実に乗れるやつでいこうって。

四十住 自分だったらノーミス1本作っておこうと思っただろうな。

 私が逆の立場だったら、最初から攻めるというよりは、最初は落として、まずは乗れるラインを滑っておいて、だんだんレベルを上げて攻めて挑戦していく感じにしたと思う。でも、碧優は最後の最後まであの同じラインを攻め続けていたのがすごくかっこよかった。

四十住 私も本当にそう思う。

――しびれる話ですね、お二人とも、しっかり努力をされてきた、しっかり練習をしてきたとおっしゃっていました。そんなスケボー以外で、努力できることは他にあるのでしょうか。

四十住 努力ではないけど、ずっとできるのは折り紙です。

 折り紙、いつもやっているもんね。

――どんなきっかけで折り紙にハマったのでしょうか。

四十住 小さな時におばあちゃんの家にいて、そこで折り紙をやっていたのがきっかけだと思います。

 私は絵を描いたり、ミサンガを作ったり、あとは音楽を聞いたりしている。

――お二人はどんな音楽が好きなのでしょうか。

四十住 心那はBTSでしょ?

 うん。BTSだね。

四十住 私は嵐の曲と、ゆずの『栄光の架橋』。ちょっと乗れなくなった時に、この曲を聞くと落ち着くというか、もっと頑張ろうと思える。

 私は、BTSの曲を聞いて、「BTSに会いたいから頑張ろう」と思う。

四十住 私は嵐全員に会いたいです(笑)。試合が終わった後に、櫻井翔くんが待っていてくれてびっくりしてしまいました。お話をして、写真も撮って、握手もしてもらいました。

 BTSは来ないよ。絶対来ない(笑)。サインをもらって、写真が撮れればうれしいけど。

■ポジティブな気持ちで

――ちなみに、ストリートの選手たちとは交流があるのですか。

四十住 椛(西矢椛選手)ですね。私は最初ストリートをやっていたので、当時から一緒に戦っていて、顔から落ちても次にまたチャレンジできる子で、本当にすごいなと思っています。

 私は(西村)碧莉ちゃんとか、堀米(雄斗)くんとよく喋ります。

――ストリートの選手が男女でメダルを獲得して、刺激になりましたか。

四十住 椛に「おめでとう」と伝えたら、「ありがとう。次、さくらちゃんも頑張ってね」と返事が来たので頑張ろうと思いました。

 私も堀米くんにインスタのストーリーで「優勝おめでとう」と伝えたら、「ありがとう。頑張って」と返事をもらいました。

――お二人にもすごい数のメッセージが届いているのではないですか。

四十住 ヤバいくらい来ています。

 めちゃくちゃ来ます。返すのがちょっと大変……。

四十住 でも、うれしい。

 フォロワーの数も、他の大会だったら1,000人、2,000人くらいだけど、1万人以上増えたしね。

四十住 ヤバいよね。

 オリンピックにまだ出場していないうちからだんだん増えていきました。椛ちゃんが優勝したことでまた増えて。

四十住 予選に出ただけでも増えているし……(笑)。

――開選手は、学校のお友達など、夏休み中に少し会うことはあるのでしょうか。何か言葉をもらうことはありました。

 夏休み中は多分学校に行かないと思います。オリンピックの前には、国旗にメッセージが寄せ書きされたものと、クラスメート全員からの手紙をもらいました。

――力になりますね。今回のオリンピックは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあって、1年延期になり、今年になってからも開催できるかわからない状況になっていました。お二人はどのように受け止めていたのでしょうか。

四十住 延期になったと決まった時は、1年間、練習時間ができた、もっと頑張ろうと思いました。1年延期になったことで、さくらパークができて練習できましたし、全部の技のメイク率が上がったので本当によかったと思っています。

 1年延期していなかったら、私はオリンピックに出られていなかっただろうなと思います。ずっと大会続きで、練習する時間がなかったので、1年延期になったことで全ての技のレベルを上げられたことは本当に良かったと思っています。

――お二人ともネガティブに考えず、プラスに捉えて、全部ポジティブに変えていくのですね。

四十住 へこんでもいいことないですし。

 へこむ理由もないです。

――最後にお二人を見ていて、スケボーをやりたいと思うお友達が増えてくるのではないかと思います。何かアドバイスはありますか。

四十住 まずは、1回乗ってみてください(笑)。絶対楽しいから。

 遊び程度にやるのでいいです。道端でプッシュするだけでいいです。面白いと思います。

――かっこいい演技を見せていただき、スケートボードの良さをどんどん広めて、世界中にお友達を増やしてください。応援しています。

四十住 ありがとうございます。

 ありがとうございます。

■プロフィール
四十住さくら(よそずみ・さくら)
2002年3月15日生まれ。和歌山県出身。小学6年の時に、兄の影響でスケートボードを始める。18年には日本選手権やアジア競技大会で優勝、世界最高峰の大会「Xゲーム」では銅メダルを獲得する。同年11月の世界選手権で優勝。21年の国際大会でも優勝し、その勢いのまま東京2020オリンピックのスケートボード女子パークで初代女王に輝いた。ベンヌ所属。

開心那(ひらき・ここな)
2008年8月26日生まれ。北海道出身。5歳でスケートボードを始める。当時小学5年で出場した19年の日本選手権女子パークで初優勝を果たす。同年アメリカの国際大会では3位に入賞した。21年、12歳11カ月と夏季オリンピックで日本人史上最年少出場となった東京2020オリンピックでは、女子パークで銀メダルを獲得。WHYDAH GROUP所属。

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