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2019.01.08 選手強化

「平成30年度JOC情報・医・科学合同ミーティング」を開催

「平成30年度JOC情報・医・科学合同ミーティング」を開催
JOC情報・医・科学専門部会の川原貴部会長(写真:フォート・キシモト)
「平成30年度JOC情報・医・科学合同ミーティング」を開催
JOC情報・科学サポート部門の杉田正明部門長(写真:フォート・キシモト)

 日本オリンピック委員会(JOC)は12月4日、「平成30年度JOC情報・医・科学合同ミーティング」を味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で開催しました。

 本ミーティングは東京2020大会、2022年北京オリンピックに向けて、各競技現場とそれを支える企業の最新の取り組み事例、JOCが行っている調査報告を、各競技のコーチ、情報医科学スタッフらと共有することを目的としたもので、国内競技団体(NF)の代表など142名が参加しました。

  最初に主催者を代表して挨拶に立ったJOC情報・医・科学専門部会の川原貴部会長は「本日行われる様々な情報提供の内容を、各競技団体に持ち帰っていただき、最高のパフォーマンスを発揮できる環境作りに活用していただければと思います」と語りました。

 本ミーティングは5部構成で行われ、第1部ではJOC情報・科学サポート部門の杉田正明部門長より、リオデジャネイロオリンピック、平昌オリンピックの出場選手を対象にしたアンケート調査の結果が共有されました。

 JOC情報・科学サポート部門では2010年のシンガポールでのユースオリンピックから、出場したアスリートを対象にアンケートを行い、ジュニア競技者の競技力向上を目指した調査を行ってきました。そして2016年からはアンケート対象を拡大し、リオデジャネイロ、平昌に出場したアスリートにも実施。報告内では競技を始めた年齢、オリンピック出場に至るまでの年数や、1日の練習時間、年間の怪我の発生件数などについて、男女別、メダリスト・非メダリスト別の詳細な統計が紹介されました。
 また今後について「夏季と冬季で出場した選手間の違いや、競技別、メダリストに絞った分析などを行います。これまで培ったジュニア競技者のデータとも照らし合わせて、ジュニア競技者からシニア競技者に向けて望ましい育成強化の方向性を検討していく予定です」とさらなる分析の実施について報告しました。

「平成30年度JOC情報・医・科学合同ミーティング」を開催
(左)東京経済大学経済学部特任講師の小林海氏、(右)日本スポーツ振興センター、ハイパフォーマンスサポート事業(映像・分析)の平野加奈子氏(写真:フォート・キシモト)

 続く第2部ではNFの取り組みとして、陸上競技とバドミントンの映像・データ分析の事例が報告されました。

 まず日本陸上競技連盟の科学委員も務める東京経済大学経済学部特任講師の小林海氏から、陸上競技の男子4×100mリレーにおける科学的支援として、バトンパスに関するデータ分析の取り組みが紹介されました。
 小林氏は「1992年から実施されている科学サポートですが、現在は昔より機材など簡易的になっており、撮影したデータはその日のうちに分析、当日中に選手に伝えています。昨年の世界選手権のように同日に予選と決勝が行われる場合もあるので、予選終了後に競技場内で集まり、その場で対応することもあります」と、フィードバックまでの時間の重要性が語られました。
 また分析により得られた結果として、リオデジャネイロオリンピックを例に、「4人トータル37.60秒で2位の日本は、トータル37.64秒で3位のカナダに対し、バトンパスで1回当たり0.02秒速く、トータル0.06秒の優位性がありました。もしバトンパスが上手く行っていなかったら、メダルの色が変わっていたかも知れません」と大きな影響があったことをアピール。
 東京2020大会での金メダル獲得に向けては、各選手の走力の向上が必要とした上で、「速いスピードで最適なバトンパスを行うのに必要なことを提案していかなければならない」と課題を挙げました。

 次に日本スポーツ振興センター(JSC)のハイパフォーマンスサポート事業(映像・分析)の平野加奈子氏より、バドミントン日本代表における映像分析支援について共有がありました。
 現在はA代表の全ての国際大会と合宿、B代表の国際大会10試合と合宿のほかに、U-19の国際大会2大会に帯同しており、日本人選手や対戦相手を中心に撮影、分析。主に選手、コーチがその映像を元に分析を行っているのに加え、必要に応じて種目別や各選手の課題に応じたアドバイスを送っているという現状が報告されました。
 また2018年の3月から変更されたサービスに関するルールに対して、ショットを打った3秒後に、そのショットをタブレットPCで確認できる新たな機能が導入されたことなどが紹介されました。
 リオデジャネイロオリンピック以降、選手、コーチから、映像・データ分析への需要が増えているという中、2020年以降に向けて「分析時間を増やして行く必要がある。今後に向けて人材育成が必要である」と課題を示しました。

 第3部では「気象への対策と活用事例」をテーマに暑熱対策と気象情報の利用法についてプレゼンテーションがありました。
 
 今夏のジャカルタ・パレンバンアジア大会のコーチら関係者を対象にJOCとJSCが共同で実施したアンケートから、東京2020大会でも懸念されている暑熱対策への提案が、JOC情報・科学サポート部門員も務めるJSCスポーツ科学部の尾崎宏樹研究員から語られました。
 報告の中では、大会中、各競技団体で取り組まれた水分補給、身体冷却の対策について共有があり、暑熱対策に使われたアイテムなどが紹介されました。
 また、普段とは違う状況下で想定した暑熱対策が上手く行かなかったケースが見られたことに加え、東京2020大会では暑熱対策を行うスタッフが帯同できないケースもあるので、選手、コーチ自身に個別に対応してもらう必要があると、事前の準備の徹底を呼びかけました。

 次に天気、気温対策について、株式会社ウエザーニューズのスポーツ気象チームの浅田佳津雄氏から、過去のデータを参考にした大会当日へ向けた準備方法や、各競技での取り組みが話されました。
 天気予報を利用することによる当日のコンディションを予想しての準備、試合当日に定点ライブカメラやドローンを活用して風向きなどを把握するという気象状況への対応。また、マラソンや競歩など長時間の屋外競技において、いかに日陰部分でレースをできるかについて、大会当日を想定し、事前にコースを車で走り、レースプランを提案しているなどのアジア大会での事例が紹介されました。
 東京2020大会の期間には32度〜34度の高温や、突然の大雨も予想されるとし、「過去の同時期の気象状況を分析することで、当日の天候を想定した練習をすることができます。準備の質を高めることでパフォーマンスの最大化が期待できます」と情報利用の有用性を呼びかけました。

「平成30年度JOC情報・医・科学合同ミーティング」を開催
富士通株式会社執行役員常務、東京オリンピック・パラリンピック推進本部長、スポーツ・文化イベントビジネス推進本部長の阪井洋之氏(写真:フォート・キシモト)

 第4部では富士通株式会社執行役員常務、東京オリンピック・パラリンピック推進本部長、スポーツ・文化イベントビジネス推進本部長の阪井洋之氏から、体操、プロ野球のパ・リーグ、バスケットボールやトライアスロンなど様々な競技団体に対する情報通信技術(ICT)の活用事例が報告されました。
 11月20日に発表された国際体操連盟との採点支援システムでの連携に関して、体操では技が非常に高度化しており、デジタル技術を使うことで高さなど定量的に評価できるようにと導入の経緯が明かされ、今後のICT活用についての期待が述べられました。

「平成30年度JOC情報・医・科学合同ミーティング」を開催
(左)JOC医学サポート部門の赤間高雄部門長、(中央)JOC医学サポートの石田浩之部門員、(右)JOC医学サポートの近藤尚知部門員(写真:フォート・キシモト)
「平成30年度JOC情報・医・科学合同ミーティング」を開催
JOC理事で情報・医・科学専門部会の南和文副部会長(写真:フォート・キシモト)

 第5部は「医学サポート部門からの情報提供」とし、まずJOC医学サポート部門長の赤間高雄氏から東京2020大会時の医療体制について、選手村や競技場毎の医療体制の準備状況が説明されました。
 またマラソン、競歩など屋外競技の開催時間に関して、「東京2020大会が開催される7月24日〜8月9日の昨年、今年の気象状況を参考に検討している」と課題への取り組みが語られました。

 次に石田浩之部門員より、平昌オリンピックでスケート選手へのドーピング検査で陽性反応が出た件に関して、当時の現地での対応状況が話されました。
 また、最近問題となっている海外製サプリメントの摂取に関して「薬には使用して問題ない製品が紹介されているサイトがあるが、サプリメントにはありません。ラベルに表示されている成分以外の違法物質が、製造過程や原料物質の保管の問題から含まれてしまう可能性がある」と注意点が述べられました。
 一方、選手からサプリメントの利用に関して、現実的に需要があることを認識しているとし、今後の対応課題であると話しました。

 続いて歯科の近藤尚知部門員から、日頃の歯のケアの重要性に関する話がありました。むし歯を放置した場合について、遠征先で痛みが出た選手や治療に長期間かかった事例が紹介され、早期治療の大切さが訴えられました。

 最後にJOC理事で情報・医・科学専門部会の南和文副部会長が閉会の挨拶に立ち、「東京2020大会が近づいてきています。JOC選手強化本部は最低でも金メダル30個という大きな目標を掲げています。この目標に向け引き続きJOCへのご指導、ご鞭撻ならびにご協力をお願いします」と参加者に呼びかけて、本ミーティングを締めくくりました。

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