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未来のメダリストを目指し「平成29年度オリンピック有望選手研修会」を開催

カテゴリ:選手強化
2017.12.15
未来のメダリストを目指し「平成29年度オリンピック有望選手研修会」を開催
「平成29年度オリンピック有望選手研修会」を開催(写真:フォート・キシモト)

 日本オリンピック委員会(JOC)は、選手強化事業ジュニア対策の一環として、JOCが認定したオリンピック有望選手およびその指導者を対象とした「平成29年度オリンピック有望選手研修会」を11月25、26日の2日間にわたって味の素ナショナルトレーニングセンターで開催しました。

 本プログラムは他競技選手との交流を通じ、世界に通用するアスリートを育成するとともに、指導者向けプログラムを実施することで、指導者のコーチングスキルを高め、さらなる競技力向上につなげることを目指すものです。過去には水泳・競泳の北島康介選手、同じく萩野公介選手、体操の内村航平選手、卓球の福原愛選手ら後のオリンピックメダリストも参加。今回はオリンピック有望選手、指導者ら合わせて104名が参加しました。


未来のメダリストを目指し「平成29年度オリンピック有望選手研修会」を開催
チームビルディングで選手、指導者が交流(写真:フォート・キシモト)
未来のメダリストを目指し「平成29年度オリンピック有望選手研修会」を開催
荒木田裕子JOC選手強化副本部長(写真:フォート・キシモト)

■チームビルディングで交流

 25日の午後からスタートした第1日目では、初対面の選手同士が交流を深め、本研修会全体の効果を高めることを目的とする「チームビルディング」が最初のプログラムとして行われました。まず前半は選手、指導者がいっしょになり、手拍子を叩いた数と同じ人数や同じ誕生月、また同じ血液型などでグループを作り、自己紹介やジャンケンゲームを実施。後半は2日間の研修で行動を共にする10班に分かれ、選手同士が手を繋いで円になり、そのままフープをくぐるフープリレーなどを行いました。プログラムの最初は緊張の面持ちだった選手たちも、ゲームが進むにつれて意気投合。最後は各チームの選手、指導者が協力し合い、チャレンジに成功したときには大きな歓声が上がるなど、大いに交流が深まっていました。

 チームビルディングが終わると研修室に場所を移し、荒木田裕子JOC選手強化副本部長から選手、指導者に向けてメッセージが送られました。JOC選手強化本部が掲げる『人間力なくして競技力向上なし』のスローガンのもと、東京2020大会や2022年の北京冬季オリンピック、さらに2024年パリ大会、2026年ロサンゼルス大会での活躍を期待されるアスリートとして「スキルやチーム力の強化はもちろんですが、自分を律し、人間として大きく成長してください」と激励。そして、同世代のアスリート同士、異なる競技間で大いに刺激し合ってほしいと述べた荒木田副本部長は「この研修を通じて学んだことを持ち帰って、皆さんのチームメートにも共有していただければと思います」と呼びかけました。

■メディアトレーニング、外国語講座

 続いて、朝日学生新聞社による「メディアトレーニング」。ここでは最初に、スポーツ報道の種類、取材の答え方、取材を受けるメリットなどについての講義が行われ、その後、中学生・高校生の特派員記者が実際に選手を取材する模擬インタビューが行われました。同世代の特派員記者から「競技を始めたきっかけ」「どのような指導を受けているか」「競技の中での失敗談」「オリンピックへの思い」といった質問を受けた選手たちは、最初こそぎこちない受け答えでしたが、朝日学生新聞社の記者からのアドバイスをもとに、最後には自分の思いをしっかりと言葉で伝えられるようになっていました。


未来のメダリストを目指し「平成29年度オリンピック有望選手研修会」を開催
(上)朝日学生新聞社による「メディアトレーニング」、(下)運動で学ぶ外国語講座(写真:フォート・キシモト)
未来のメダリストを目指し「平成29年度オリンピック有望選手研修会」を開催
オリンピックバリューへの選手の思いが込められた個性豊かなオリンピックシンボル(写真:フォート・キシモト)

 次にハンドボールコートに移動し、「外国語講座〜体を動かしながら、英語を学ぶ〜」を実施。このプログラムでは日本語禁止のルールのもと、講師も英語で指示を出し、選手たちも英語でコミュニケーションをとりながらスポーツやゲームに挑戦しました。
 プログラムの前半では、照れや自信のなさからか、英語での掛け声や選手同士のコミュニケーションでも小さい声しか出ませんでしたが、テニスボールやバレーボールを使った運動などで体がほぐれてくると、次第に英語での会話も活発に弾むようになりました。最後に行われたリレーでは、各班ごとについた担当の外国人講師ともすっかり打ち解け、また、講師による英語でのインタビューでも照れることなく、自分が話せる範囲の英語とボディランゲージを使って会話。この姿勢に講師が拍手を送ると、選手たちも「これからは積極的に英語を使ってみたい」と笑顔で答えるなど、プログラムの最初とは打って変わって、英語に対する苦手意識が薄れたようでした。

■オリンピックについて学ぶ

 夕食の後は、1日目最後のプログラムとして「オリンピックについて知ろう・考えよう」が行われました。

 まず前半はJOCオリンピック・ムーブメント専門部会員/アントラージュ専門部会員でもある中京大学の來田享子教授がオリンピックの価値、意義について講義をしました。この座学では、近代オリンピックの始祖と言われるピエール・ド・クーベルタンが古代オリンピックをもとにスポーツの祭典を復活させた理由や、オリンピックの意義・目的などを説明。また、5つの輪からなるオリンピックシンボルの意味、そこに込められた思い、さらに「エクセレンス(卓越性)」、「フレンドシップ(友情)」、「リスペクト(敬意/尊敬)」という3つの「オリンピックバリュー」を解説しました。

 座学で学んだこと、特に3つのオリンピックバリューをもとに、後半ではゲストオリンピアンの小口貴久さん(リュージュ)、澤野大地選手(陸上競技)、室伏由佳さん(陸上競技)、千田健太さん(フェンシング)も参加し、10班に分かれて「グループアクティビティ:オリンピック旗を飾ろう!」を実施。ここではJOCオリンピック・ムーブメント専門部会員でもある国士舘大学の田原淳子教授が講師を務め、選手たちはオリンピックバリューや東京2020大会のコンセプトである「多様性」から受けるイメージをふくらませ、各班それぞれが担当するオリンピックシンボルの1つの輪を自由に飾り付けていきました。そして、飾り付けられた輪の意味について各班が発表し、5つの輪をつなぎ合わせると、オリンピックバリューや多様性への選手の思いが込められた個性豊かなオリンピックシンボルが2つ完成しました。

 最後に、選手たちといっしょにオリンピックバリューについて意見を出し合い、輪の作成を見守ったゲストオリンピアンたちが感想を述べ、室伏さんは「今後皆さんがさらに高いレベルを目指すときに、今日体験したような、人との調和・友情を大切にしてください」、千田さんは「競技結果だけを考えるよりも、スポーツを通じて色々なことを考えることによって、自分の競技人生が濃くなっていくと思います。今後もっともっと、たくさんのことを経験してください」、澤野選手は「日々の自分に挑戦して、オリンピックという夢・目標に向かって毎日突き進み続ける、継続すること、これがすごく大事。そして今日得た縁を大事に、明日からの練習を頑張ってください」、小口さんは「今日皆さんはオリンピックシンボルに込められた思いを学びました。日本代表としてこのマークを背負って戦うときには、ぜひ今日学んだシンボルの意味を心に入れながら戦ってほしいと思いますし、皆さんもこの意味を広めていってほしいと思います」と、エールやメッセージを送りました。


未来のメダリストを目指し「平成29年度オリンピック有望選手研修会」を開催
SNS研修を行ったTRENSYSの上田大介さん
未来のメダリストを目指し「平成29年度オリンピック有望選手研修会」を開催
グループごとにワークシートを記入

■ソーシャルメディアに関するリスクマネジメントとは

 第2日目のプログラムは、スポーツ界を中心にソーシャルメディア(SNS)の研修プログラムを手がけるTRENSYSの上田大介さんによる「選手とソーシャルメディア」の講義からスタートしました。

 上田さんはまず、著名人の周りに存在している様々なリスクを挙げ、自分自身の価値を守るためにトップアスリートとしての判断基準をしっかりと身につけ、リスクマネジメントを徹底しておくことの重要性を強調。「トップアスリートにふさわしい判断基準になるように、今日の研修でアップデートしましょう」と、受講の心構えを示しました。
 今回は「ソーシャルメディアってなんだろう」「皆さんが置かれている状況」「明日の自分のために出来ること」「これからのSNSの使い方」「良いチームを作るために」「こんなときどうする?」という6つのテーマに従い、自分の考えをワークシート記入したり、グループのメンバーと共有し合いながら、SNSの良い面と悪い面、周りに与える影響の大きさ、普段から意識をしておくべき注意点などを学習。上田さんは「自分の行動の先に、自分の将来に、何が起こるのかを冷静に考えて行動して下さい。判断に迷うことがあったら、すぐ周りに相談して下さい」と呼びかけました。


未来のメダリストを目指し「平成29年度オリンピック有望選手研修会」を開催
アイマスクをした相手にボールの場所を伝える
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ゲーム形式の練習では白熱したプレーが展開された

■パラリンピック実施競技から学ぶ

 座学の後はハンドボールコートに移動しての「異競技トレーニング」。パラリンピック競技のブラインドサッカーとシッティングバレーボールを体験しました。
 ブラインドサッカーでは、元日本代表で自転車競技や陸上競技でパラリンピックのメダルを複数獲得している葭原滋男選手を講師に迎え、アイマスクを着用した人としていない人がペアになって声だけでボールが置かれた場所に誘導したり、音を出して蹴る方向を指示するなどの基礎練習を実施。見えない状態で動くことや、見えていない相手に的確に説明をすることの難しさを学びました。
 シッティングバレーボールには日本パラバレーボール協会の真野嘉久代表理事をはじめ、女子の代表選手6名とコーチらが参加し、まずはルール説明やデモンストレーションを行いました。座ったまま前後左右にすばやく動く練習や輪になってラリーをつなぐウォーミングアップに続き、複数のチームに分かれてゲーム形式の練習を実施。選手達はお尻を床につけた状態でトスやレシーブ、アタックをする難しさに四苦八苦しながらも、必死にボールを追いかけていました。

 クロージングセッションには選手強化副本部長を務める福井烈JOC常務理事が登壇。2日間のプログラムを振り返りながら、「皆さんはこの2日間、色々な競技の方と時間を共有して交流を深めていただけたと思います。是非今回の出会いを大切にして、時に刺激し合い、時に助け合いながら、お互いを高めていって下さい」と今後の成長に期待を込めました。
 またあらためて『人間力なくして競技力向上なし』のスローガンに触れ、「競技に打ち込むと同時に、人間力も高めて下さい。人間力って何なんだと考えるだけでも結構です。皆さんにとっての『人間力』を是非考えて、それを高めていただければと思います」と訴えた福井常務理事。約80万人が銀座に集まったリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックのパレードを例にスポーツの素晴らしさを説き、「皆さんはそのスポーツの素晴らしさをお届けできる方々です。素晴らしいアスリートになるために、一日一日、ベストを尽くして最高の日にして下さい。選手の皆さん、指導者の皆さん、これからも素晴らしいスポーツ界を作っていきましょう!」と呼びかけて、研修を締めくくりました。





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