日本オリンピック委員会(JOC)は3月1日、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で「2025年度JOCエリートアカデミー修了式」を開催しました。JOCエリートアカデミーは、選手がオリンピックで活躍するとともに充実した人生を歩み、社会課題解決にも貢献しながら、憧れの存在となるアスリートの土台を築くことを事業理念に実施され、今年度で18年目。各競技団体から推薦された有望なジュニア選手が集まり、味の素トレセンを拠点にして集中的な指導の下で育成・強化が行われており、2025年度は6競技22名の選手が所属していました。
今年度は4競技5名が修了を迎えました。式には修了生をはじめ、その家族や関係者、エリートアカデミー在校生らが参列しました。司会より修了生が紹介されると、世界での活躍を目指して4月から次のステップへ向かう修了生たちが温かな拍手で迎えられながら会場に入場しました。
国歌斉唱の後、JOC選手強化本部副本部長でもある水鳥寿思JOC理事が主催者を代表して式辞の挨拶に立ち、「入校されてから今日まで、先輩や後輩、そして同期の仲間たちと共に数多くの経験をされてきたことと思います。競技面では国内外の大会に出場して厳しい練習の成果を発揮して喜びや感動を得たり、一方で思うような成果が出せず悩んだり、怪我に苦しんだこともあったかもしれません。また、学校やアスリートヴィレッジでの生活では、時間を効率的に使いながら学業を充実させるとともに他競技の仲間とも分け隔てなく接して、TEAM JAPANとして人間力を高めてこられたと思います」と修了生を祝福。そして、ロサンゼルス2028大会やブリスベン2032大会などに向けた修了生の今後への期待にも触れ、「さらなる競技力向上に励むとともに、相手に対する感謝や敬意の気持ちを忘れずに、人間力を高めて『憧れられるアスリート』を目指してください」と激励の言葉を送りました。
続いて、来賓代表としてスポーツ庁の田中秀和競技スポーツ課長が挨拶。「ここに至るまでには予想を上回る厳しいトレーニングや、親元を離れた集団生活への不安、時には壁にぶつかることもあり、苦しく辛いことも少なからずあったと思います。しかしながら、仲間と切磋琢磨し、時には助け合い励ましあいながらそれを乗り越えてこられました。また練習だけでなく、食事や生活など環境面でのサポートも受けながら、トップアスリートとして必要な競技力、そして人間力を身に付けた立派なアスリートとなられました。どんな時もここで頑張ったことを大切にし、修了生としての自信と誇りを持ち、これまで温かく見守ってくださった保護者の方をはじめ、多くの方々に支えられてきたということを忘れずに、今後もより一層励んでいただけたらと思います。先日行われたミラノ・コルティナ2026冬季大会でのTEAM JAPANの活躍は、国民に夢や希望、たくさんの感動を届け、活力を与えてくれました。皆さんも世界に向けて羽ばたく『憧れられるアスリート』となることを期待しています」と祝辞を述べ、エールを送りました。
水鳥JOC理事が修了生に修了証を授与したのち、JOCエリートアカデミー在校生を代表して、新キャプテンの大井梨世さん(アーチェリー)が登壇。修了生一人ひとりに向けて、一緒に過ごした日々の思い出や感謝の言葉を語ると、「これからは私たちが後を継ぎ、先輩たちが誇りに思えるようなJOCエリートアカデミーを目指して、人間力、競技力ともに精進していきます。先輩方、大好きです。大学でも先輩方らしく頑張ってください」と送別の言葉を述べました。
次に修了生が1人ずつ決意表明を行い、JOCエリートアカデミーで過ごした日々を振り返りながら、お世話になった方への感謝と新たな道へと進む意気込みを語りました。
■吉川 華奈(よしかわ・はな)
競技:レスリング
学校:帝京高等学校
進路:東洋大学 スポーツ科学部
主な競技成績:2025年U20アジア選手権大会 女子62kg級3位など
「私は5年前、オリンピックで金メダルを取るという目標を胸にJOCエリートアカデミーに入校しました。しかし、その目標がどれだけ厳しく険しい道なのか、思い知らされました。入校当初は競技も生活も全てが厳しく、ただがむしゃらに先輩方についていくことに必死でした。楽しいことも多いアカデミー生活でしたが、私にとってはつらい時間の方が多かった5年間でした。思うように結果が出ないこと、そして何より怪我に苦しみました。中学3年生のときに肩を怪我して手術をしました。なかなか痛みが取れることがなく、病院に通う日々。あのときはレスリング人生で一番つらい時間でした。練習ができない焦りや周りがどんどん強くなっていく不安。痛みがなくなってレスリングできることはもうないのかなと思うことがありました。それでも乗り越えることができたのは、たくさんの方々の支えがあったからです。寮に帰るとおかえりと温かく迎えてくださったRAさん。身の回りのことをサポートしてくださったエームサービスの方々。毎日の食事で身体をサポートしてくださったサクラダイニングの方々。ありがとうございました。いつも相談に乗ってくれ、一緒に笑い合い、唯一の息抜きの場所を作ってくれた同期のみんな。みんながいたから楽しいアカデミー生活を送れました、このような素晴らしい環境にお誘いいただき、毎日厳しくご指導してくださった菅さん。優しい言葉で励まし続けてくださった江藤コーチ。そして何もできない私を見捨てずに厳しく指導し何度も考え方から変えてくださった吉村コーチ。この厳しさがあったからこそ、自分と向き合い成長することができました。そしてどんなときでも一番に信じて応援し、一番支えてくれたお父さん、お母さん、お姉ちゃん。結果が出なくても怪我に苦しんでいても、変わらずに味方でいてくれました。感謝してもしきれません。本当にありがとう。この5年間で学んだことは競技力だけではありません。人間力の面でも大きく成長させていただきました。当たり前のことを当たり前にやることの大切さ、感謝を忘れないこと、支えてくださる方の存在を決して当たり前にしないこと。アスリートとしてだけでなく、人としてどうあるべきかを学んだ5年間でした。オリンピックで金メダルを獲るという目標は今も変わっていません。ここで学んだすべてを胸にこれからも挑戦を続けます。そして、支えてくださった皆様に必ず恩返しをします。5年間本当にありがとうございました」
■江坂 萌那(えざか・もな)
競技:レスリング
学校:帝京高等学校
進路:日本体育大学 体育学部
主な競技成績:2023年第2回東アジアユース競技大会 女子43kg級優勝など
「私は3年前の春、JOCエリートアカデミーに入校しました。エリートアカデミーでの3年間は、入校前に思い描いていたような順風満帆な競技生活ではありませんでした。何度も怪我を繰り返し、思うように練習ができない苦しい日々を過ごしました。怪我する度に焦りが募り、周りが成長していく姿を見ると自分だけが取り残されているような気持ちになりました。練習をしたいのに身体がついてこない悔しさ、復帰してはまた怪我をしてしまう連鎖から抜け出せない悔しさもありました。それでもこの時間があったからこそ、私は大切なことに気付くことができました。競技ができることは当たり前ではないということ。伝えてくれる人がいるからこそ、私はマットに立てていること。そして結果だけでなく、人としてどうあるかが大切だということです。つらいときアカデミーの皆が朝から夜まで練習に打ち込み、試合で活躍する姿を見て、自分も頑張ろうと何度も奮い立たされました。どんなときでも前向きな言葉をかけてくれた家族、そしていつまでも未熟な私と向き合い続けてくださったコーチの存在があったからこそ、私はここまで来ることができました。毎日、栄養管理のされた食事を提供してくださったサクラダイニングの方々、寮生活を支え日々の生活をサポートしてくださったRAさん。ベッドメイキングやランドリーを清掃してくださったエームサービスの方々。ここには挙げきれないほど多くの方に支えられて、私はこの3年間を過ごすことができました。怪我に苦しんだ3年間でしたが、この経験があったからこそ私は大切なことに気づくことができ、肉体的にも精神的にも強くなることができました。ここで学んだことを胸に、オリンピックで金メダルを獲得し、支えてくださったすべての方に恩返しができるよう、これからも努力を続けます。3年間本当にありがとうございました」
■野元 麻央(のもと・まお)
競技:フェンシング
学校:星槎国際高等学校
進路:日本大学 スポーツ科学部
主な競技成績:2025年ジュニアワールドカップ韓国大会 女子団体3位など
「私は3年前、オリンピックでメダルを獲得するという目標を持ってJOCエリートアカデミーに入校しました。入校当初はアカデミーに同じ競技の先輩がいないことがとても不安で、コーチやシニアの先輩方に頼ってばかりの日々でした。練習では全く点が取れずトップレベルの強さに圧倒され、生活面では慣れないことばかりで、正直つらいことの方が多かったです。焦りや不安が募り、自分自身を責めてしまうこともありました。しかし、先輩方の背中を必死に追いかけ、目の前のやるべきことに集中し、努力を続けてきました。それが結果につながり、嬉しさを感じることもありましたが、思うようにいかず苦しい時間もありました。そんなとき支えてくれたコーチや同期、応援してくれた家族の存在に何度も助けられ、ここまで乗り越えてくることができました。コーチの方々とは練習中や試合中に意見がぶつかることもありましたが、どんなときも私を信じ、ご指導くださったことに心から感謝しています。私はこの3年間を通して、競技面だけでなく人としても成長できたと思います。ここにいたからこそ見られた景色や経験があり、多くの方々に支えていただいた日々があったからこそ今の自分があります。この場所で出会えた全ての方々とのご縁はこれから先の私にとって大きな支えであり、かけがえのない大切な存在です。これからも困難なことがあると思いますが、自分を信じ、目標に向かって進んでいきます。3年間、本当にありがとうございました」
■阿部 暁梨沙(あべ・ありさ)
競技:ライフル射撃
学校:成立学園高等学校
進路:明治大学 商学部
主な競技成績:2025年第79回国民スポーツ大会 AR30WJ10位など
「私は3年前、JOCエリートアカデミーに入校しました。大きな夢を抱いてこの場所に来ましたが、現実は決して甘くありませんでした。慣れない寮生活、結果が出ない焦り、思うようにいかず自分の未熟さに涙した日もあります。そんなときそっと声をかけてくださったコーチ、何も言わず隣で支えてくれた仲間の存在に何度も救われました。周りを見れば代表として活躍する選手や、高い志を持つ仲間ばかりでした。憧れと同時に、自分と比べてしまい自信を失いかけることもあります。この3年間は自分と向き合い、悩み続けた時間でもありました。それでも、前を向き続けることができたのは、支えてくださる方々の存在があったからです。基礎から丁寧に教えてくださり、何度言われてもできない私に根気強く向き合ってくださったコーチ。共に切磋琢磨した仲間。寮に帰ればつらいことも忘れるぐらい笑い合い、苦しいときも嬉しいときも一緒に乗り越えてきた同期。同期の存在は、私にとって本当に心の支えでした。どんなときも一番の味方でいてくれた家族。心から感謝しています。そして、私たちの生活のサポートしてくださったRAさん、エームサービスの皆さん、そしていつも明るく声をかけてくださったサクラダイニングの皆さん、本当にありがとうございました。皆さんの存在に支えられ、私はここまで歩んでくることができました。4月からは大学に進学します。これから先、壁にぶつかることはあると思います。しかし、ここで過ごした3年間が私の支えです。ここで学んだ努力する姿勢、挑戦し続ける強さ、感謝を忘れない心を胸に、どんな困難も乗り越えていきます。そして、ブリスベン2032大会で結果を残し、成長した姿で恩返しできるよう、日々努力していきます。競技力だけではなく、人として成長できるように、温かい選手になれるように努力します。3年間、支えてくださった全ての皆さん、ありがとうございました」
■古庄 千陽子(ふるしょう・ちよこ)
競技:アーチェリー
学校:都立足立新田高等学校
進路:早稲田大学 スポーツ科学部
主な競技成績:2025年 2026年度U21ナショナルチーム選出(1位通過)など
「JOCエリートアカデミーでの生活の中で、特に最後の1年間はとても濃い1年間でした。生活面では余裕が出てきて競技面では少しずつレベルアップしているはずなのに、満足できる結果が出ないことも多々ありました。その度に悔しさや期待に応えることができない不甲斐なさを感じました。またアーチェリー競技のキャプテンとして責任の重さを強く感じると共に、チームを作って引っ張っていけるのだろうかという不安を強く感じ、挫けそうになることもありました。しかしこの経験は自分自身の覚悟を見つめ直すきっかけとなり、自分を変えようと努力しました。そして自分のことだけでなく、周りの人やチームのメンバーをより理解するための時間にもなりました。この時間があったからこそ、大きく成長することができたと思います。また私がここまで頑張ることができたのは、本当に多くの方々に支えられてきたからだと気付きました。いつも私を気にかけてくださったRAさん、サクラダイニングの皆さん、エームサービスの皆さん。リフレッシュする時間を共に過ごしてくれた同期。ずっと近くで一番頼りになった可愛い後輩の梨世。どんなときも前を向かせてくれた家族。苦しいときも常に隣には仲間がいました。そして何よりも監督やコーチをはじめ、先輩方や後輩たちと築いてきた家族のような温かいチームに出会うことができました。このような方々に支えられパワーをもらい、心が折れそうなときも踏ん張ることができました。このような存在に出会うことができた私は幸せです、ありがとうございます。オリンピックで金メダルを獲得し、社会に貢献できる選手になるという目標に向けて、最後まで諦めずに全力で私らしく進みます。これからも応援していただけると嬉しいです。最後になりますが、最高の環境であるJOCエリートアカデミーで、競技力、人間力共に磨くことができた3年間はかけがえのない時間で宝物です。本当にありがとうございました」
最後に修了生にむけた応援メッセージ動画が流れ、修了式は締めくくられました。
お気に入りに追加
関連リンク
CATEGORIES & TAGS