日本オリンピック委員会(JOC)は10月13日(月・祝)、スポーツ庁、日本スポーツ振興センター、日本スポーツ協会などと共催で、令和7年度「スポーツの日」中央記念行事を開催しました。スポーツの日は、1964年に開催された東京オリンピックを記念し、「スポーツを楽しみ、他者を尊重する精神を培うとともに、健康で活力のある社会の実現を願う」ことを目的に、国民の祝日として定められており、また国民がスポーツ・レクリエーションの楽しさや喜びを体験することにより日常生活の中で主体的に運動・スポーツに親しむことの重要性を広く啓発することを目的に、スポーツ祭りを毎年開催しています。
会場となった東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)イーストでは、抽選で選ばれた参加者が各プログラムを楽しんだほか、一部のプログラムではオンラインでの参加もありました。NTCウエストと国立スポーツ科学センター(JISS)では、普段一般公開されていないトップアスリートが日々トレーニングを行う施設や展示コーナーの見学、音響XR技術を活用したスポーツ観戦体験などができる当日参加のフリープログラムが行われ、多くの参加者が足を運びました。
午前の部の冒頭に開会式が行われ、ゲストアスリートとして、宇山賢さん・小林善洋さん(フェンシング)、岡田直也選手・野畑美咲選手・吉岡大選手・相澤ひかる選手(射撃/ライフル射撃)、吉田信一さん(卓球)、高野亮介選手・来海泰志選手・柿島麗選手・山本一輝選手・飯島佐和子選手・松田京子選手(バーチャルスポーツプログラム)の13名が参加しました。
はじめに主催者を代表して河合純一スポーツ庁長官から「オリンピック、パラリンピック、そして来月のデフリンピックを目指す選手たちが日常的に練習するNTCでスポーツの楽しさや素晴らしさを体感いただき、親子で楽しい一日を過ごしていただきたいと思います。今回は、6つの組織が連携し、様々なプログラムや展示を行います。楽しみながら体を動かし、充実感を持って過ごしていただき、今日一日が皆さまにとって、これからもスポーツの楽しさや喜びを感じていけるスタートとなることを願っています。どうぞ存分にお楽しみください」と挨拶がありました。
続いて、来賓を代表して山田加奈子北区区長が登壇し「北区にはNTCやJISSなど日本代表選手が利用する多くの施設がたくさんあり、スポーツ庁をはじめ関係団体の皆さまと連携し、地域のスポーツ振興に取り組んでいます。このスポーツの日のイベントが、スポーツを見る・体験する楽しさ、喜びとともに、人と人のつながりや絆をつくり、今日の体験をきっかけに、子どもたちが新しい挑戦を始めてくれたら嬉しいです。これからも北区は関係機関と協力し、地域でのスポーツ振興をしっかりと行ってまいります。本日は怪我のないよう、どうぞ存分にお楽しみください」と挨拶しました。
開会式に続き、スポーツ庁と日本レクリエーション協会による紙風船エクササイズが行われ、宇山さんと小林さんが登壇しました。子どもでも取り組める分かりやすいエクササイズである一方、普段使用しない筋肉を使うなどエクササイズの効果は高く、ゲストアスリートのアドバイスやサポートを受けながら参加者たちが一生懸命取り組みました。
その後、参加者は『スクエアステッピングエクササイズ』『オリ‧パラスポーツ体験教室』『アクティブ・チャイルド・プログラム』『レッツ‧チャレンジ!おもしろスポーツ』『バーチャルスポーツプログラム』のうち、当選したプログラムの実施会場へ移動しました。
■オリ・パラスポーツ体験教室
各専用練習場内でオリンピアンやパラリンピアン協力のもと、スポーツ体験教室が実施されました。
卓球の体験教室では、音楽に合わせたウォーミングアップを行った後、参加者は、まず球の扱いに慣れるところから始まり、6コートに分かれてフォアハンドやバックハンドでの返球練習などを行いました。車いす卓球を体験する機会もあり、ラケットの角度やタイミングなどについて丁寧に教わり、最後には試合も行いました。
アーチェリーの見学会では、日頃中々見ることのできない選手の練習風景を見学しました。午後にはナショナルチームの練習も見学することができ、訪れた参加者は目を輝かせながら見学しました。
フェンシングの体験教室では、オリンピアンの宇山さんが中心となってスマートフェンシングの体験を行いました。スマートフェンシングは柔らかい剣と導電性のあるジャケットを使用することで簡単にフェンシングの疑似体験ができるものです。宇山さんによるデモンストレーションの後、親子で試合形式のもと3点先取のゲームを行い、白熱した様子を見せました。
射撃の体験教室では、岡田選手、相澤選手のデモンストレーションの後、コツを教わりながら練習を行いました。その後、参加者同士で対戦形式の試合を行い、終了後にはアスリートとの記念撮影も行われました。参加者は「楽しかったー!いい経験になった!」と笑顔で会場を後にしました。
体験会を終えた岡田選手は「初めてやる子どもたちにとって難しい競技だったと思いますが、うまく当てて、楽しんでいただけて嬉しかったです。射撃という競技は、座禅に似たようなものだと思っており、対戦競技ではないので日々鍛錬し、試合結果として自分の成長が表れるというところが面白みかなと思っています。こういう体験会を行うことは、普及や認知を高める方法の1つだと思うので、今後射撃選手の成績や試合のことを気にかけたり、体験された方自身が将来の1つの選択肢として、この競技に取り組んだり、携わるということに繋がれば嬉しいなと思います」と感想を述べました。
続いて、野畑選手は「開会式で参加者と交流した際、ライフル射撃を希望していたが抽選に落ちて残念だという声を多く聞き、大変嬉しく思いました。日本国内の競技人口はまだ少なく、競技人口が増えればより上手い選手が現れ、自分も負けないように頑張れるため、体験会を増やすこと、そして近くに始められる場所がないという小学生の声があったように、射撃施設を増やすことが必要だと感じました。射撃は対人ではなく点数競技であり、自分と向き合うスポーツです。特にメンタルが点数に直結する点は、他の競技にはあまり見られない特徴です。試合ごとに異なる雰囲気の中、どんな場面でも集中力が求められるのが、射撃の魅力の一つです。今日の体験を通じて、皆さんがもっと射撃を好きになってくれたら嬉しいです」と語りました。
吉岡選手は「今回、開会式のある大規模な体験会に参加し、戸惑いもありましたが、紙風船を使った交流などをしていくうちに、楽しむ心があれば誰とでも繋がれると感じました。体験会も同様に、参加者と一緒に喜びや悔しさを共有し、寄り添った形で楽しく活動できました。射撃は奥深い競技であり、満点が決まっているため、その最高点を目指して自分と深く向き合うことができます。また、射撃は老若男女楽しむことができる競技です。私自身、一般的には引退する年齢ですが、競技においてはまだ現役で点数が上がっており、常に全盛期だと感じ、まだまだ競技を続けられると確信しています。直接お会いできなくても、私の雰囲気や、文章・トレーニングへの姿勢などから私という人間のパッションを感じていただけたら幸いです。スポーツの日に限らず、マイナー競技である射撃を知ってもらい、将来のアスリートに憧れてもらえれば嬉しいです。現役アスリートとして教えられることは多くあるので、今後もこのような体験会があれば、ぜひ参加させていただきたいです」と述べました。
■「勝ち飯®」教室
ゲストアスリートとしてオリンピアンの寺川綾さん(水泳/競泳)が参加し、アスリートを支える「勝ち飯®」についての勉強会が行われました。「勝ち飯®」とは「何のために食べるか」をベースに、1日3回の栄養補給のベースである「食事」と、目的に応じた栄養素を必要なときに摂取する「補食」を考える食事プログラムのことです。
本プログラムでは、オンサイトだけでなく北海道中川町、福岡県福岡市、三重県志摩市の会場からもリモートでの参加がありました。
まず寺川さんが日頃気をつけていることについて、「基本の食事のバランスが崩れないように、子どものおやつの量を制限している」と話がありました。これを踏まえて「栄養・休養・練習」の理想的なバランスや「勝ち飯®」における食事の基本形などが紹介され、すべてバランスよく向き合うことが大事であることを学びました。栄養をバランスよく摂るためのテクニックとして「5つの輪作戦」や「汁物作戦」が紹介され、ワークシートを使う時間では、参加者の昨日の食事を振り返り、様々な食事を摂るためのキーワード「ま・ご・に・わ・や・さ・し・い」をどれだけ満たしているかを一緒に確認していきました。その後、目的に応じて必要な栄養を必要なタイミングで摂るための「補食」について説明がありました。エネルギーやたんぱく質の補給を目的とした際に推奨される補食の例などが紹介されました。同時に、補食を摂る計画をあらかじめ立てておく「プランニング」が重要であると説明がありました。最後に寺川さんは「普段の食事を文字にすると、自分が気づいていないところに気づかされ、これをきっかけに家でも定期的にやってみたいなと思いました。『ま・ご・に・わ・や・さ・し・い』も意識して、1日ですべて摂るのは大変なので、3日から1週間かけて、ちゃんと摂れるように気をつけたいと思います』と感想を述べ、本プログラムが締めくくられました。
また、時間帯によって東京2020オリンピックマスコットの「ミライトワ」、パラリンピックマスコットの「ソメイティ」がセットになって登場し、多くの参加者と交流しました。当日の参加者は最終的に約2,400名近くとなり、スポーツ庁が提唱するスポーツ参画を拡大する3つの視点「する・みる・ささえる」を満喫する1日となりました。
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