写真:築田純/アフロ
柔道は、白か青の柔道衣をまとった選手が、10m四方の畳上で戦います。瞬時に展開される技の応酬により、ポイントで負けていても試合終了直前に大逆転が生まれることがあるため、試合終了まで目が離せません。
柔道の勝敗を決めるパターンは大きく分けて4つあります。
一本
最も大きいポイントで「一本」が決まった瞬間、試合が終了します。「投げ」は『相手を制す』『背中を畳につける』『強さ』『速さ』の4つの要素を満たすことが一本となる条件です。「抑え込み」は寝技の展開に持ち込み、相手の背中及び両肩を畳に着けた状態で抑え込むことを指します。「抑え込み」の場合には20秒で「一本」となります。
技あり
一本に必要な4つの要素のうち2つ以上を満たすもので、「完全に一本」とは言えないまでも相手を制している状態を指します。
合わせ技一本
1つの試合で2回目の「技あり」を取ったとき、合わせ技一本となります。
反則
わざと相手と組み合わなかったり、消極的な姿勢を取った場合など「指導」が与えられますが、3回受けるとその時点で「反則負け」となります。
柔道は体重別に行われる競技です。男子の階級は「60kg級」「66kg級」「73kg級」「81kg級」「 90kg級」「100kg級」「100kg超級」の7つ。女子は「48kg級」「52kg級」「57kg級」「63kg級」「70kg級」「78kg級」「78kg超級」の7つです。
>柔道の混合団体は、男女それぞれ3階級ずつ、合わせて6階級でチームを組んで対戦する種目で、先に4勝したチームが勝ちとなります。オリンピックでは東京2020大会で初めて実施され、日本はフランスに決勝で負けて銀メダルとなりました。しかしながら世界柔道選手権大会では2023年大会まで6連覇中と、パリ2024大会での金メダルが獲得される種目です。
■日本チームの有力選手
日本代表は、全員が金メダルを獲れる可能性を持っており、全員が有力選手と言っても過言ではありません。7日間、日にちごとに日本代表選手を紹介します。
7月27日(土):男子60㎏級=永山 竜樹、女子48㎏級=角田 夏実
両選手ともに金メダルの可能性は十分にありますが、とりわけ角田の金メダルはほぼ間違いないと言われています。2021年以降、世界選手権3連覇。得意の巴投、そしてそこからの腕挫十字固はわかっていても逃れることができない、まさに必殺技。さらに今年に入り新技も習得し、金メダル獲得に向けて準備万端です。
永山も世界選手権、オリンピックでの優勝こそないものの、多くの国際大会で優勝経験を持つ世界トップクラスの実力者。東京2020大会金メダリストの髙藤直寿との直接対決を制して悲願のオリンピック代表の座を手にしました。同階級の中でも小柄ですが、背負投などの担ぎ技だけでなく内股も切れ、ダイナミックな技が特徴。永山と角田でスタートダッシュを決めたいところです。
7月28日(日):男子66kg級=阿部 一二三、女子52kg級=阿部 詩
柔道競技で日本中、いや世界中で最も注目を集めている阿部兄妹が2日目に登場します。言わずと知れた東京2020大会金メダリスト兄妹。東京2020大会では、先に金メダルを獲り、祈るように決勝を見つめる妹・詩の姿がクローズアップされましたが、今回は試合順が逆。兄の一二三が先に決勝を戦い、妹の詩が、そのあとで決勝を戦うことになります。果たして、今回も同日金メダル獲得となるか。
妹の詩は、東京2020大会後に肩の手術をし一時戦線から離れましたが、順調に復活を果たしています。「コンディションが悪い中でもしっかりと戦うことをテーマに戦った」という2024年3月のグランドスラム・アンタルヤでも、不調など微塵も感じさせない、オール一本勝ちの圧勝。依然その強さが別格であることを示しました。内股、大外刈、袖釣込腰、腰車といった立ち技に加え、寝技の強さも抜群。人気実力ともに柔道界随一の選手です。
兄・一二三も東京2020大会後、負け知らず。オリンピック前最後の試合となった2024年3月のグランドスラム・アンタルヤでも、異次元の強さを見せつけて優勝を果たしました。出場している試合数が多くないため、IJFワールドランキングは1位ではないですが、その実力は誰もが認める階級ナンバー1。高いポジションから繰り出す背負投、袖釣込腰、遠い間合いから一気に飛び込む大外刈といずれも「一本」を奪う力を持ちます。「最強兄妹」を再びパリの地で証明したいところです。
7月29日(月)男子73kg級=橋本 壮市、女子57kg級=舟久保 遥香
橋本はこれまで世界選手権に5度出場しており、2017年優勝、18年2位、21年3位、22年2位、23年3位。出場した大会では常に上位進出を果たしています。オリンピック代表は今回が初。リオデジャネイロ2016大会、東京2020大会ともに金メダルに輝いた同い年の大野将平と熾烈な日本代表争いの末、惜しくも大舞台への切符を逃しました。左右の担ぎ技に体落、大外刈と多彩な技に加え、組み手、試合運びの巧さは群を抜きます。苦節の末に代表の座を手にした今回、積年の思いを実らせ金メダル獲得となるか。
舟久保も目指すはもちろん金メダル。世界選手権は2022年、23年とともに準優勝。あと一歩のところで頂点に立てていません。舟久保の一番の強みは粘り強さと寝技。高校時代から磨いてきた寝技の技術は、社会人となってさらにその精度を増し進化を続けています。さらに、足技を中心に立ち技においても進捗著しいです。クリスタ・デグチ(カナダ)、地元フランスのサラ=レオニー・シジクといった強豪ライバルを破り金メダリストになることができるか期待です。
7月30日(火)男子81㎏級=永瀬 貴規、女子63㎏級=高市 未来
永瀬は今回が3度目のオリンピック。リオデジャネイロ2016大会は銅メダルで、東京2020大会は金メダル。今大会は連覇への挑戦です。永瀬の強さの秘訣は総合力の高さ。立って良し寝て良し、受けも強くて攻撃力もある、『オールラウンダー』という表現がもっとも相応しい選手と言っていいでしょう。闘志を内に秘め気負わず飄々と、今大会も頂点を目指します。
髙市も今回が3度目のオリンピック。リオデジャネイロ2016大会は5位、そして東京2020大会は2回戦敗退。世界選手権では優勝こそないものの、準優勝2回、3位2回と世界トップクラスの実力を持つことは明らかながら、オリンピックのメダルには今まで縁がありません。巧みな足技と、そこからの寝技。派手さはないが安定感は群を抜くベテランです。三度目の正直、目指すはもちろん金メダル以外にありません。
8月1日(水)男子90㎏級=村尾 三四郎、女子70㎏級=新添 左季
強いフィジカルと破壊力のある投げ技を持つ強者がひしめく男子90㎏級。しかし、この2~3年で飛躍的な成長を遂げた村尾も、いまやトップグループの一人と言っていいでしょう。組むまでの速さ、組んでから技を出すスピード、タイミングも格段に進化。縺れた際の強靭さも強豪たちに引けを取りません。内股、大外刈の切れ味は鋭く、今大会で頂点に立つ可能性も十分に秘めています。
控えめで、ともするとネガティブな言動で周囲を心配させる新添ですが、ひとたび畳に立ち、気持ちが入った瞬間、思い切りのいいファイターに変わります。強気に奥襟を叩いての内股、遠い間合いを一気に踏み込んで放つ大外刈。苦手と言われていた寝技も成長著しく、立ち技から寝技への移行は格段にスムーズとなり、代表に内定してからの1年で最も成長した選手との評価も高いです。ドーハ世界選手権優勝に続き、オリンピックでの金メダル。新添は、そんな快挙をさらりとやってしまいそうです。
8月2日(木)男子100㎏級=ウルフ アロン、女子78㎏級=髙山 莉加
東京2020大会の金メダリストながら、ケガなどもあり調子が上がらずに苦しい状況が続き、代表に内定したのは代表選手の中で最も遅い今年の2月14日。しかし、最後の追い上げはすさまじく、内定を確定させたグランドスラム・パリ、そして5月に出場したグランドスラム・アスタナでは見事な優勝。大内刈や内股の技の切れは全盛期を彷彿させるものでした。メディアでも大人気のウルフだけに、オリンピック連覇への期待は大きいです。
世界大会(世界選手権、オリンピック)初挑戦の髙山ですが、金メダルも決して夢ではありません。以前は、無の強さで国内外の強豪を連破して優勝する時もあれば、1~2回戦で足元を掬われてしまうこともあり、安定感に難ありとの評価でしたが、この1年の戦いぶりを見る限り、一段上のステージに上がった印象です。髙山の最大の強みは寝技。立技で崩し素早く寝技に仕留めるのが必勝パターン。金メダルを獲って満面の笑顔を見せられるか注目です。
8月3日(金)男子100㎏超級=斉藤 立、女子78㎏超級=素根 輝
今回の日本チームの中で最年少(22歳)の斉藤。身長191㎝で体重は約170㎏。最大の特徴はこの身体の大きさで、外国人相手に体格で見劣りしない数少ない日本人選手です。しかも、柔軟性があり受けも技も柔らかい。大外刈、内股、体落とダイナミックな投げ技に加え、寝技も日々進歩しています。まだまだ発展途上の選手ですが、そのポテンシャルは計り知れません。斉藤の豪快な投げ技でパリを熱狂させてほしいところです。
2度目のオリンピック挑戦となる、東京2020大会金メダリストの素根輝。ヒザの負傷により調整が遅れ、一時はオリンピック出場の危機も騒がれましたが、5月のグランドスラム・アスタナで3位に入りオリンピック出場枠を確保。以後は、パリに向けて着々と準備を進め、調子を上げてきています。162㎝と身長は小柄ながら安定感は抜群。オリンピックでの完全復活に期待です。
競技初回実施大会 | 東京1964大会 |
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TEAM JAPAN初出場大会 | 東京1964大会 |
競技別累計メダル数 |
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2024年8月21日時点
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