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「令和2年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催

2021.04.12  カテゴリ:選手強化

 日本オリンピック委員会(JOC)は3月21日、オンラインによるWebセミナー形式で「令和2年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催しました。

 このセミナーは、ジュニア期のトップアスリート(10歳~18歳)の保護者を対象に行われ、家庭で多くの時間を共有し、大きな影響力を持つと考えられる保護者が、ジュニアアスリートへの正しい関わり方、助言の仕方を学ぶことによって、親子がスポーツを通じて実りある人生を実現する可能性を高め、競技力の高いアスリートの育成を目指しています。

 はじめに、高橋尚子JOCアントラージュ専門部会長が挨拶し、本セミナーの主旨、目的を説明。「今回は、皆さんにとって今とても有意義なもの、そして今必要なことをなるべく多く伝えられるようにしていけたらと思います。最後に本セミナーを受けて、保護者としてどうなりたいかという決意、また意気込みを聞かせていただきたいと思いますので、ぜひ考えながら受講していただけたら嬉しいです」と述べました。

「令和2年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」が開催された ※集合写真撮影時のみマスクを外して撮影(写真:フォート・キシモト)
高橋尚子JOCアントラージュ専門部会長(写真:フォート・キシモト)

■「オリンピズムについて」

 次に本セミナーの最初のプログラムとして、「オリンピズムについて」と題し、リュージュで2002年ソルトレークシティ大会、2006年トリノ大会、2010年バンクーバー大会と3大会連続で冬季オリンピックに出場した小口貴久さんが講義を行いました。

 最初に小口さんは「オリンピックを開催する意義や、その価値はなんでしょうか?」と問いかけたうえで、IOC(国際オリンピック委員会)が目指すオリンピズムやオリンピック精神、「エクセレンス(卓越)」「リスペクト(敬意/尊重)」「フレンドシップ(友情)」の3つのオリンピックバリューを解説。また、オリンピズムに含まれている「多様性」というキーワードに触れて、自身が選手時代に相手の肩書や出身地で知らず知らずのうちにイメージを作ってしまい、学ぶ機会を逃していたことを反省しつつ「自分の中で無意識に勝手な壁やイメージを作って選択してしまう機会があるかもしれません。ぜひ保護者の皆さん、選手の皆さん、いろいろな人と話をしたり、協力したり、互いに意識しながら、少しでも新たな道、新たな取り組みに踏み出す一歩にしていただければと思います」とアドバイスを送りました。

■「アスリートと保護者が知っておくべきコンディショニング最前線」

 続いて、「アスリートと保護者が知っておくべきコンディショニング最前線」をテーマに、アントラージュ専門部会員である日本体育大学の杉田正明教授が講義を行いました。

 まず前提として、体力にはいわゆるスポーツパフォーマンスに直接影響があるとされている「行動体力」と、様々なストレスに対する抵抗力である「防衛体力」があることを説明した後、かつて医科学の面からサポートしたアスリートの現役時代の日々の体温、睡眠時間、脈拍などを記録したシートなどを用いながら、コンディショニングについての知識やスポーツパフォーマンスを構成する要素など紹介。この中で杉田教授は睡眠時間、入浴、練習後のクーリング、ビタミンDの効果など、特にセルフケアの重要性について強調しました。

 そして、これらの内容を踏まえ、まとめとして「コンディショニングには色々な要素があります。それら一つひとつのギアが絡み合って初めて土台ができ、ハイパフォーマンスは発揮されます。個人個人の選手にあったコンディショニングが重要。まず自分の目的・目標に向かって心身の状態をより好ましい方向に整えるために、どういうことをどんなふうにすればいいのかということを、対象者自身が働きかけてやっていくことが大事だと思います」と総括しました。

小口貴久さん(写真:フォート・キシモト)
日本体育大学の杉田正明教授

■「保護者も知っておきたいメンタルトレーニングの実際」

 次に、「保護者も知っておきたいメンタルトレーニングの実際」と題し、JOCアントラージュ専門部会員である大阪体育大学の土屋裕睦教授が講義を行いました。

「心技体は一体であり、切り離すことはできない。保護者ができることはたくさんあります」と述べた土屋教授は、深呼吸のコツ、やる気を高める技法である目標設定、自身を高める技法であるイメージトレーニング、また、緊張を味方につける方法などを保護者といっしょに実践。その一方で、保護者はこうした具体的なトレーニング方法を子供にただ教えるのではなく、「アスリートにとってうまくいかないのは学びの機会であり、ハウツーは学びの機会を奪ってしまう可能性もあります。できるだけ本人が自分らしく解決するのを見守りつつ、こんな方法もあるよと伝えるのが重要かなと思います。アスリート本人が主体的に取り組むことが大事。その経験が社会に出たときの課題解決のヒント、経験値になります」とアドバイスを送りました。

 そして、総括として「保護者の方もこれを機会に一緒にメンタルトレーニングをしてみてはいかがでしょうか。子供たちと一緒に成長する保護者がいると、子供たちにとってもいい環境になります」と述べました。

 ここで本セミナーの前半パートを終え、高橋部会長、田辺陽子JOCアントラージュ専門部会副部会長が振り返りを行いました。特にコンディショニングに関しては田辺副部会長が冬から春になるこの時期に適した練習方法や心構え、またリラックスと緊張の切り替えなどについて言及。また、高橋部会長は脈拍を毎日測ることで自身の体調を知るバロメーターにしていたなど、オリンピアンとしての経験談を伝えました。

大阪体育大学の土屋裕睦教授
田辺陽子JOCアントラージュ専門部会副部会長(写真:フォート・キシモト)

■「トップジュニアコーチからのアドバイス」

 休憩を挟んだ後、後半のプログラムとして「トップジュニアコーチからのアドバイス」と題したトークセッションが行われました。ジュニア世代の日本代表で指導しているテニスの櫻井準人コーチ、バレーボールの三枝大地コーチ、バスケットボールの萩原美樹子コーチが参加。中村裕樹JOCアントラージュ専門部会員による進行のもと、「その後活躍するアスリートのジュニア時代はどのような選手だったか」「そこから学ぶジュニア年代の選手が心がけるべきこと(行動や心構え)」「保護者がジュニア選手の成長のために協力できること」をテーマに、3人のコーチの経験談が語られました。

 活躍するアスリートのジュニア時代に関しては、錦織圭選手や西岡良仁選手の例を挙げて「すごく素直な選手だった」と櫻井コーチ。この意見に同調した三枝コーチは付け加えて「素直で、しかも負けず嫌い。また、ただ素直なだけではなく、こちらから与えられたものよりさらに一歩先を考える選手が大人になっても活躍した」と振り返りました。

櫻井準人コーチ(写真:フォート・キシモト)
三枝大地コーチ(写真:フォート・キシモト)

 さらに、親と子供の関係については、「子供が今、どのような立ち位置にいてどう感じているのかを理解すること」「子供が最後に帰る拠り所であってほしい」「子供がどの年齢になっても、親として変わらない役割がある」といった意見が出る一方、女子選手を指導している立場から萩原コーチは「10代の女子選手は疲労骨折がすごく多いのですが、栄養面の偏りに原因がある場合が多い。特に女子選手は自身の身体面について男性コーチには話しにくいことも多いので、保護者の方がしっかりケアしていただければ」と述べました。

 また、これらコーチ陣の意見をもとに保護者からも質問が多数寄せられ、活発な意見交換が行われました。そして、まとめとして中村部会員は「コーチの皆さんからは、選手自らが考えて、自ら行動することが大事だというメッセージをいただきました。保護者は関与し過ぎず、見守ってあげることが重要だと思います」と述べました。

 全てのプログラムを終えて、高橋部会長、田辺副部会長が再び登壇し、本セミナー全体を総括しました。田辺副部会長は「前半のプログラムであった睡眠、コンディショニングの基礎を学ぶことはもちろん重要ですが、今回のセミナーではコーチ、親子など人間関係の難しさも見えたかと思います。ただ、普通の保護者と子の関係であればいいのかなと思いますし、私が選手のころは普通にしてもらうのが一番リラックスできました」とコメント。高橋部会長は自身の両親から競技を続けることに反対されていた経緯を振り返りながら「保護者の方がこうしてセミナーに参加してくれる意欲を持ってもらえるだけで、子供は嬉しいと思います。私も小出義雄監督に褒められ、認められたことでそう思いましたが、自分の味方がいるのはすごく嬉しいことなんです」と述べると、「ぜひ皆さんでいっしょに成長して、夢をかなえてもらいたい。スポーツを通じて人生が豊かになることを願っています」と話し、本セミナーを締めくくりました。

萩原美樹子コーチ(写真:フォート・キシモト)
最後に高橋部会長(右)、田辺副部会長がセミナー全体を振り返って総括した(写真:フォート・キシモト)
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