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2021.02.22 その他活動

スポーツを通した国際貢献の重要性「令和2年度JOC/NF国際フォーラム」を開催

スポーツを通した国際貢献の重要性「令和2年度JOC/NF国際フォーラム」を開催
オンラインで「令和2年度JOC/NF国際フォーラム」を開催
スポーツを通した国際貢献の重要性「令和2年度JOC/NF国際フォーラム」を開催
小谷実可子JOC理事・国際専門部会長が開会の挨拶

 日本オリンピック委員会(JOC)は1月28日、オンラインで「令和2年度JOC/NF国際フォーラム」を開催しました。

 本フォーラムは、国際スポーツ界における日本の国際力及びプレゼンスの更なる向上を目指すとともに、スポーツの力を活用した国際貢献・国際協力の重要性について考えることを目的に行われ、本会役員・国際専門部会員、本会加盟団体専務理事・国際担当理事、また令和 2年度国際人養成アカデミー受講者・修了生など、240名が参加しました。

 はじめに、小谷実可子JOC理事・国際専門部会長が開会の挨拶に立ち、「2020年は予期せぬ東京2020大会の延期という未曽有の年となりましたが、だからこそスポーツの意義、価値、力を考えた人も多いのではないでしょうか。私自身もその一人です。まだまだ困難は続きますが、JOCとしては、このような時だからこそさらなる強い意志と連携をもって、その使命を果たしてまいりたいと思います」と決意を述べるとともに、本フォーラムの主旨を説明。また、今年度のJOC国際人養成アカデミー修了生に向けて激励メッセージを送りました。

スポーツを通した国際貢献の重要性「令和2年度JOC/NF国際フォーラム」を開催
山下泰裕JOC会長が基調講演

■山下会長が柔道を通じた国際交流について基調講演

 次に、本フォーラム最初のプログラムとして、山下泰裕JOC会長/IOC委員が「スポーツ(柔道)を通じた国際交流について~柔道・友情・平和~」と題し、基調講演を行いました。

 山下会長はまず、自身の人生の師であり、スポーツによる国際交流・友好親善・世界平和の重要性を早くから掲げていた東海大学創立者の松前重義氏とのエピソード、託された思いなどを紹介。特に山下会長にとって転機となったのが、日本が参加できなかった1980年モスクワオリンピック。当時、国際柔道連盟の会長だった松前氏に誘われて観戦に訪れた会場での、他国の選手たちとの交流をきっかけに「スポーツを通した国際交流・友好親善は言葉では分かっていましたが、その時初めて実感したのは『我々は畳を下りれば仲間なんだ。同じ目標に向かって頑張っているから分かりあえるんだ』ということ。これが私の国際交流の原点でした」と振り返りました。
 さらに、1984年ロサンゼルスオリンピックで金メダルを争ったモハメド・ラシュワン選手や、怪我を負った2回戦の対戦相手であるアルトゥール・シュナーベル選手らとの友情秘話なども披露。これら自身の現役時代の体験を踏まえ、山下会長は「オリンピック、アジア競技大会など国際競技大会は勝ち負けを競う場だけではない。東京2020大会でも心温まる友情、交流がたくさん芽生えるのではないかと思っています。JOCの会長としても、日本代表選手団の皆さんにはスポーツを通した国際交流、国際親善、相互理解をぜひ大事にしていただきたいと思っています」と呼びかけました。

 また、山下会長は現役選手を引退した後も、「目からうろこが落ちるような非常に大きな経験でした」という1年間のイギリス留学で得た知見や思い、築いてきた人脈をもとに、国際交流を活発に展開。その体験から「各競技団体におかれましても、将来を担うような人材は現役を引退した直後にぜひ海外へ出かけるように、働きかけてほしいと思っています」と述べました。
 そして、柔道日本代表監督時代には戦う相手へのリスペクトと交流を深めることを選手、コーチ、スタッフに求めたことや、全日本柔道連盟の副会長就任後に実施した数々の国際交流活動、また、国際柔道連盟理事としての奮闘、自身が立ち上げたNPO法人を通しての国際親善、並びにその活動が現在は井上康生柔道男子日本代表監督のNPO法人に引き継がれていることなどを紹介。JOC会長に就任後の2020年7月には独立行政法人国際協力機構(JICA)とスポーツを通じた国際貢献及び国際協力の推進に関する連携協定を締結し、今後の展望として「JICAの青年海外協力隊や様々な活動と、JOCや各NFがスクラムを組むと、もっともっと色々な活動を意欲的にできるのではないか。関心があるNF等とはぜひ活動を進めていきたい」と述べました。

 一方で「JOCの会長になり、国際的なリーダー養成の必要性を改めて痛感しております」と、これを喫緊の課題として挙げた山下会長。2026年には愛知県でアジア競技大会が開催されることから「大会成功に向けて、アジアのNOC(国内オリンピック委員会)との連携強化は非常に大きなチャンス。NFとともにアジアの国々との相互理解、国際交流、異文化交流を積極的に進めていければと思います」と述べるとともに、2030年札幌冬季オリンピックの招致に関しても「スポーツ界の力を注いでいきたいと思っておりますので、NFの皆さんのお力添えをいただければと思います」と呼びかけました。

 最後に、山下会長はピエール・ド・クーベルタン男爵、嘉納治五郎氏のオリンピックに対する理念や思いを紹介。それらを踏まえて「JOCとしては、トップアスリートの育成やオリンピックでの活躍に関しては決して手を緩めません。しかし、それだけでいいのではない。オリンピズムの原点を忘れずに、見失わずに、各競技団体の皆さんと一緒になって『スポーツ・友情・平和』を推進していきたいと思います」と締めくくりました。

スポーツを通した国際貢献の重要性「令和2年度JOC/NF国際フォーラム」を開催
有森裕子JOC国際専門部会員
スポーツを通した国際貢献の重要性「令和2年度JOC/NF国際フォーラム」を開催
左から大塚眞一郎JOC理事・国際専門部会員、釘宮宗大オリンピック・ソリダリティ東京2020特別プログラムコーチ(体操)

■「スポーツによる国際貢献によって得られるもの」

 次に、「スポーツによる国際貢献によって得られるもの」をテーマにパネルディスカッションが行われました。田中ウルヴェ京JOC国際専門部会員/IOCマーケティング委員がモデレーターを務め、パネリストとして有森裕子JOC国際専門部会員/JICAオフィシャルサポーター、大塚眞一郎JOC理事・国際専門部会員/日本トライアスロン連合専務理事、釘宮宗大オリンピック・ソリダリティ東京2020特別プログラムコーチ(体操)が参加。それぞれテーマに沿った内容をもとに議論を深めました。

 はじめに釘宮コーチが、スリランカ、フィリピンでそれぞれ1年間ナショナルコーチを務めた経歴をもとに、両国における組織・指導体制や環境・文化の違いで当初は苦労した点、そこから中長期目標を立てて現地の選手・スタッフと一緒に改革を進めた経験談を紹介。さらに、フィリピンから日本に招き入れた教え子のカルロス・ユーロ選手が2019年10月に開催された体操の世界選手権・男子種目別ゆかで同国初となる金メダルを獲得し、現在は「IOCオリンピックソリダリティ 東京2020特別プログラム」を活用して引き続き日本でトレーニングを続けていること、また、スリランカからも選手を招へいした経緯などを共有しました。

 これを受けて有森国際専門部会員、大塚理事もそれぞれ自身がマラソン、トライアスロンを通じて行ってきた国際貢献について言及。そして、それらの活動から得られたものとして、有森国際専門部会員は「スポーツがどれだけの社会的な意義や意味を持っているか、どれだけ人間にとって大事なことを育めるか。スポーツはその要素、可能性を非常に多く持っており、その可能性を知り、発見できることが私にとっての国際貢献というものだったと思います」と振り返りました。一方で、大塚理事は組織、ビジネス、マーケットなどの視点から「スポーツの成長とともに国際貢献の意味も変わってきました。選手強化や指導者育成だけではなく、マーケットを開く、イベントを開催する、新しい機材を開発するなど、ビジネス的なフィールドでも国際貢献ができるということを、実際に我々がやってきたことですので、ぜひとも参考にしていただければと思います」と、フォーラム参加者にアドバイスを送りました。

 最後に、田中国際専門部会員からの「なぜ世界の子供たちにスポーツが必要なのか?」という問いかけに対し、3名のパネリストはそれぞれ「ハッピーになれる心だと思います」(釘宮コーチ)、「自身の存在意義、そして人間が生きる上で一番大事なエネルギーを、ものすごく分かりやすく生み、感じ、相手にも感じさせるもの」(有森国際専門部会員)、「スポーツにはPlay、すなわち遊びの要素がルーツとしてある。子供たちが成功したり失敗したりすることで成長していくことが、最もスポーツで得られる果実なのではないかと思います」(大塚理事)と回答。田中国際専門部会員は総括として、「人によって違う役割を見つけ、能力を磨く。そして、お互いで連携することが結果的に『人間みんなハッピーになれたらいいね』ということだと思います。また、今できることをそれぞれがすることによって、大塚理事からご提示いただいたように、では組織としては何ができるかを考えることが重要だということを、改めて学ばせていただきました」とまとめました。

スポーツを通した国際貢献の重要性「令和2年度JOC/NF国際フォーラム」を開催
スポーツを通したJICAの事業について勝又晋JICA青年海外協力隊事務局専任参事が説明
スポーツを通した国際貢献の重要性「令和2年度JOC/NF国際フォーラム」を開催
令和2年度JOC国際人養成アカデミー修了生を代表して日本セーリング連盟の萩原由紀子さん(右)に修了証が授与された

■JICAの事業説明、JOCとの連携協定に関して

 次に、「国際協力・開発とスポーツ ~JOC・JICA連携で目指すもの~」と題し、 勝又晋JICA青年海外協力隊事務局専任参事がJICAの事業説明を行いました。
 ここでは主に「なぜ国際協力なのか」「なぜスポーツと開発か」を説明した後、これまでJICAが行なってきた海外協力隊を中心としたスポーツによる事業事例について紹介。また、JOCとの連携協定に関して、山下会長によるJICAでの講演、JOCを通じたNFとの連携を実績として説明するとともに、今後の予定として、JOCから隊員任国のNOC宛てにサポートレターを送付することを採り上げました。同時に各NFに向けて、寄贈品を世界各地へ届ける「世界の笑顔のために」プログラムへの参加を呼びかけました。

■JOC国際人養成アカデミー、令和2年度は34名が修了

 続いて、令和2年度JOC国際人養成アカデミーの修了式が行われました。今年度の修了生34名を代表して日本セーリング連盟の萩原由紀子さんが、国際人養成アカデミーのスクールマスターでもある大塚理事から修了証を授与されました。
 萩原さんは、アカデミーを運営した事務局、講師、ともに受講した仲間たちに感謝を述べるとともに「世界で日本がプレゼンスを発揮するために、どのような戦略的コミュニケーションが必要なのか。そういうツールを手にする機会をいただいたと思っています。今回、国際人であろうとすればするほど、足元の日本の環境も良くしていかなければという思いに駆られています。今後、しっかりと貢献してまいりたいと思います」と抱負を述べました。

スポーツを通した国際貢献の重要性「令和2年度JOC/NF国際フォーラム」を開催
藤原庸介JOC国際専門部会副部会長が閉会の挨拶

 すべてのプログラムが終了し、最後に閉会の挨拶として藤原庸介JOC国際専門部会副部会長が登壇。各プログラムを振り返りながら「国際情勢というもの自体が今、非常に大きく、そして素早く変わっている時代です。上から目線の国際貢献というものはもう終わらなければいけない時代なのかもしれません」と述べた上で、「新型コロナウイルスは忌むべきものですが、スポーツという窓を通じて世界の情勢を知り、自らを省みる機会を作ってくれたのだと前向きに捉えたいと思います」と総括しました。そして、国際人養成アカデミー修了生に向けて「若い人が活躍できる素地は日本、世界に昔からありました。だから遠慮せずに、どんどん活躍してほしい」と期待の言葉を送り、本年度の国際フォーラムを締めくくりました。

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