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2017.12.07 選手強化

「東京2020のその先へ」をテーマに「平成29年度JOC地域タレント研修会」を開催

「東京2020のその先へ」をテーマに「平成29年度JOC地域タレント研修会」を開催
「平成29年度JOC地域タレント研修会」を開催(写真:アフロスポーツ)
「東京2020のその先へ」をテーマに「平成29年度JOC地域タレント研修会」を開催
福井烈JOC常務理事が開会のあいさつ(写真:アフロスポーツ)

 日本オリンピック委員会(JOC)は「平成29年度JOC地域タレント研修会」を12月2日、3日の2日間、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で開催しました。

 この研修会は、JOCが支援する全国各地のタレント発掘・育成事業の受講生を対象に各種プログラムを提供し、将来世界で活躍できるトップアスリートを目指す意識を醸成するとともに、中央競技団体と各タレント発掘・育成事業との連携を図ることを目的としています。今回は「東京2020のその先へ」をテーマに、JOCが支援する14事業のうち12事業から集まった小学4年生〜中学3年生の受講生65名と、指導者・引率者18名が参加。また、JOC加盟オリンピック実施競技団体(NF)の強化担当者、ナショナルコーチ、タレント発掘・育成担当者なども参加し、未来のオリンピアン候補たちに熱い視線を送りました。

 開会式では、福井烈JOC常務理事がまず「皆さんには色々な研修をしていただいて、大きな刺激を持って帰ってもらい、世界を目指す気持ちをもっと明確なものにしてもらえれば、とても嬉しいです」と述べ、本研修会の目的を説明しました。続けて、JOCが掲げている「人間力なくして競技力向上なし」というスローガンと、スキー・ジャンプの髙梨沙羅選手や現役を長く続けているJリーグの選手たち、またテニスの錦織圭選手の例を踏まえ、成功の土台となるのは「傾聴力」と「主張力」であり、それらをもとにした「リバウンドメンタリティ(へこたれない心)」であると紹介。その上で、福井常務理事は「技術力、身体能力は1日では変わりません。しかし、心は1日で変わります。ぜひ、ここで気持ちを変えていただいて、皆さんの可能性が花開いて地元に帰っていただけると、この研修会は大成功となります」と、受講生に“へこたれない心”の重要性を呼びかけました。

「東京2020のその先へ」をテーマに「平成29年度JOC地域タレント研修会」を開催
伊藤華英さんがオリンピック精神やオリンピックバリューについて説明(写真:アフロスポーツ)
「東京2020のその先へ」をテーマに「平成29年度JOC地域タレント研修会」を開催
日本スポーツ振興センター スポーツ開発部の前原千佳さんによる「オリンピアンへのアスリート育成パスウェイ」の講義(写真:アフロスポーツ)

■伊藤華英さんがオリンピックバリューについて講義

 次に「オリンピックを学ぶ」と題し、競泳で2008年北京オリンピック、2012年ロンドンオリンピックに出場した伊藤華英さんが講義を行いました。前半では、2004年アテネオリンピック出場を逃した苦い経験から学び、覚悟を決めて臨んだその後の競技人生で北京、ロンドンと2大会連続でオリンピックに出場できた経緯を語り、後半ではオリンピックの成り立ちや、オリンピック精神、オリンピックバリュー(卓越、敬意/尊重、友情)、オリンピックシンボルの意味などを説明。特にオリンピック精神、オリンピックバリューに関して伊藤さんは「皆さんにはぜひ、オリンピズムやオリンピアンとしての誇りを持ってほしいです。たとえオリンピックに行けなかったとしても、努力したことがとても大事。どれだけ自分が努力できたか、それがオリンピック精神であり、そのプロセスがスポーツにとって学ぶ瞬間なのではと思います」と述べ、受講生たちに「卓越、尊重、友情をぜひ今から実行して、将来、国際舞台に立ったとき、このことを思い出してください」とエールを送りました。

 続いて、日本スポーツ振興センター スポーツ開発部の前原千佳さんによる「オリンピアンへのアスリート育成パスウェイ」の講義が行われました。アスリート育成パスウェイとは、競技スポーツにおいて国際舞台を目指すアスリートが歩んでいく道すじのこと。「まずは“自分がオリンピアンになる”イメージを持つことが大事」と説明した前原さんは、ロンドン、リオデジャネイロオリンピックのメダリストの平均年齢、競技開始の平均年齢などのデータから、競技を始めてからメダリストになるまでに平均10年以上かかっていること、また10000時間以上のトレーニングが必要であることを紹介。そして、これらのデータをもとに、「オリンピアン、メダリストになるために、皆さんは競技を本格的に取り組むには良い時期です。そして競技が好きという気持ちを忘れずに、“目指す”という段階から“決める”という段階へワンランクアップしてください。今回の研修会がその第一歩となることを期待しています」と述べました。

「東京2020のその先へ」をテーマに「平成29年度JOC地域タレント研修会」を開催
2人のオリンピックメダリストに学びながらレスリングに挑戦(写真:アフロスポーツ)
「東京2020のその先へ」をテーマに「平成29年度JOC地域タレント研修会」を開催
最初はなかなか的に当たらなかった射撃体験だったが、プログラム後半になると上手に的に当てる受講生も続々と出てきた(写真:アフロスポーツ)

■レスリング、近代五種に挑戦

 講義が終わると、受講生たちは2グループに分かれ、レスリング場とバレーボール場へ移動。「競技プログラム」としてレスリング、近代五種を体験しました。

 レスリングではロンドンオリンピック男子フリースタイル66キロ級金メダリストの米満達弘さん、ロンドンオリンピック男子グレコローマン60キロ級銅メダリストの松本隆太郎さん、2009年全日本選手権大会男子フリースタイル55キロ級3位の冨田和秀さんを講師に迎え、前転、後転、受け身、倒立やハンドスプリングなどのマット運動から始まり、本格的なタックルの練習、ロープのぼりの補強練習などを実施。また、足につけたテープを取り合うゲームで米満さんに挑戦するなど、受講生にとってはレスリングの基礎を学ぶと同時にオリンピックメダリストと直接触れ合う貴重な体験となりました。「レスリングは全身を使い、スピードもパワーも鍛えられるので、色々なスポーツにつながります。ぜひ、これからも良かったらレスリングをやってみてください」と米満さん。受講生からも「レスリングに興味を持った」、「これからもやってみたい」という声が多く挙がりました。

 一方、近代五種では日本近代五種協会の泉川寛晃理事、ロンドンオリンピックに出場した黒須成美選手らが講師となり、受講生はレーザーピストルでの射撃を体験しました。その後、練習の成果を生かし、実際の近代五種の競技であるレーザーラン(射撃+ランニング)でのリレー対決を8グループに分かれて実施。黒須選手や手塚賢二ナショナルチームトレーナーらも加わり、白熱のレースが繰り広げられました。この体験でも近代五種という競技に触れ、オリンピアンと直接交流する貴重な機会となったことで、「今後も近代五種をやってみたい」と多くの受講生が手を挙げていました。

 夕食、入浴の後は、1日目最後のプログラムとして「SNS研修」が行われました。講師を務めた株式会社トレンシスの上田大介さんは「皆さんが目指す世界はリスクとの戦いの世界でもあります」と伝えると、リスクマネジメントの第一歩としてソーシャルメディアの意味をはじめ、SNSの良い面、悪い面、周囲に与える影響などを実例で紹介。その上で「将来の自分のためにできること」として、今後SNSを使用する際に見直すべき行動、身につけてほしい習慣などを説明しました。また、判断に迷うような出来事が起こったときには「絶対に一人ですぐに答えを出すのではなく、友達、家族、信頼できる人や機関に相談してください」と呼びかけました。

「東京2020のその先へ」をテーマに「平成29年度JOC地域タレント研修会」を開催
普段の過ごし方から意識をすることの重要性を強調した米満達弘さん(写真:アフロスポーツ)
「東京2020のその先へ」をテーマに「平成29年度JOC地域タレント研修会」を開催
松本隆太郎さんは練習に臨む姿勢についてアドバイス(写真:アフロスポーツ)

■米満さん、松本さんの「オリンピアン講話」

 2日目最初のプログラムでは、1日目の「競技プログラム」でレスリングを指導した松本さんと米満さんの2人のオリンピアンが登壇。JOC強化第二部(NTC管理)キャリアアカデミー事業の所由紀アシスタントディレクターがコーディネート役となり、「オリンピアン講話」の時間が設けられました。

 2人がメダルを獲得したロンドンオリンピックの振り返りでは、メダルを獲得したときの気持ちや選手村での過ごし方などのエピソードを披露。会場の盛り上がりのすごさや食事面の苦労話をはじめ、様々な裏話が飛び出しました。
 現在は指導者として活躍する2人ですが、小中学生の頃はどのような子供だったか、レスリングとの出会いや競技の魅力、オリンピックを目指すようになったきっかけ、他競技の経験など、これまでの競技人生を色々な側面から語る姿に、受講生達は興味津々。すべての話を聞き逃すまいと、真剣に聞き入っていました。

 米満さんは「大事なのはけがをしないこと。自分の一番の敵はけがと病気でした。それを防ぐには、普段の食事や睡眠など私生活からしっかりとすることが必要。自分は24時間すべて練習だと思って過ごしていましたが、24時間の過ごし方は全て結果につながるし、そうすると無駄なことをしなくなっておのずと人間力が高まると思います」と、普段の過ごし方から意識をすることの重要性を強調。松本さんは「漠然と練習するだけでなく、目標を達成するために何が必要なのか、もっと頭を使って考えてみて下さい。しっかりと準備をしておけば、もし本番でうまくいかなくても次の方法を探しやすくなります」と、練習に臨む姿勢についてアドバイスしました。

「東京2020のその先へ」をテーマに「平成29年度JOC地域タレント研修会」を開催
近代五種の競技プログラムについて日本近代五種協会の立野宏幸強化委員長がフィードバック(写真:アフロスポーツ)
「東京2020のその先へ」をテーマに「平成29年度JOC地域タレント研修会」を開催
JOC強化第二部(NTC管理)の中森康弘部長が閉会のあいさつ(写真:アフロスポーツ)

■競技プログラムをフィードバック

 続いて、初日に実施した競技プログラムのフィードバックが行われ、レスリングは米満さんと松本さんが、近代五種は日本近代五種協会の立野宏幸強化委員長が発表。レスリングでは腕の力だけで素早くロープのぼりが出来ていた選手や、タックルの入り方、構えがしっかりしていた選手の名前が挙がり、米満さんは「レスリング自体が筋トレのような感じでナチュラルな筋肉がつくので、他の種目のトレーニングとしても生かしてみてください」とコメントしました。
 立野強化委員長は近代五種の導入になるものとして、水泳、ランニング、射撃の3種目で行う「3種大会」を紹介。「昨日皆さんが走っている姿を見て、活発だなと思う選手がたくさんいました。まずは色々なスポーツに親しんで、興味のある人は是非来年3種大会に参加してみて下さい。小さい頃に陸上と水泳のベースがあると、近代五種でも上位にいけます」と呼びかけました。

 全てのプログラムを終え、2日間の振り返りをそれぞれワークシートに書いた受講生達は、「自分の地域に帰って実践しようと思うこと」を思い思いに発表。研修で得られた様々な気付きを共有し合いました。

 最後に、JOC強化第二部(NTC管理)の中森康弘部長があいさつを行い、「全国から皆さんのような選手が一堂に会するという機会はなかなかありません。今回出会った友達を本当に大切にして下さい。一期一会と言いますが、皆さんは偶然ではなく必然的にここに集まっていると思います。この中から1人でも多くのオリンピックチャンピオンが生まれるようJOCがサポートしますので、是非トップ選手となって戻ってきてください」とメッセージを送りました。

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