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2023.05.23 イベント

日本オリンピックミュージアム企画展スペシャルイベント「オリンピック・ムーブメントセミナー」を開催

日本オリンピックミュージアム企画展スペシャルイベント「オリンピック・ムーブメントセミナー」を開催
「オリンピック・ムーブメントセミナー」を開催(写真:アフロスポーツ)

 日本オリンピック委員会(JOC)は4月22日、日本オリンピックミュージアム(JOM)を会場としてオンライン併用のハイブリット形式で「オリンピック・ムーブメントセミナー」を開催しました。
 本イベントは、特定非営利活動法人日本オリンピック・アカデミー(JOA)の協力のもと、オリンピック・ムーブメントの考え方やその推進の歴史について振り返り、これからのオリンピック・ムーブメントについて考える内容で開催しました。

日本オリンピックミュージアム企画展スペシャルイベント「オリンピック・ムーブメントセミナー」を開催
JOA理事でアサンプション国際小学校教諭の和田浩一氏(写真:アフロスポーツ)
日本オリンピックミュージアム企画展スペシャルイベント「オリンピック・ムーブメントセミナー」を開催
JOA理事で中京大学スポーツ科学部教授の來田享子氏(写真:アフロスポーツ)

■第一部 JOAセッション

 第一部では、『オリンピック・ムーブメントとは何か?』をテーマに、日本オリンピックアカデミー(JOA)の理事でアサンプション国際小学校教諭の和田浩一氏と、同じくJOA理事で中京大学スポーツ科学部教授の來田享子氏が登壇しました。
 はじめに、和田氏が近代オリンピックを創設したピエール・ド・クーベルタンの思想と行動について解説しました。クーベルタンがオリンピック・ムーブメントを作り上げた要因として「戦争の体験」「古代オリンピックへの関心」「パブリックスクールへの注目」の3つを掲げ、それぞれの内容を説明し、近代オリンピックの創設には明確に『平和』が意識されていた、と語りました。平和を意識する背景にはクーベルタンが「人類誰もが自らの無知を認識せずに自己に満足しながら自らの論理に基づいて進んできた」と、無知こそが戦争に繋がると考えていたのではないかと推察し、「オリンピズムはスポーツだけではない。物事を俯瞰する態度、全体的に物事を見つめる力、これがオリンピズムの考えになっていくと考えています」と述べました。
 そして、「クーベルタンの時代から100年たった今、オリンピズムについて考え、行動することをクーベルタンは期待しているということです。無知の克服に繋がるPDCAサイクルのチェックとアクションを絶え間なく続けてほしい。これが彼のメッセージではないかと考えています」と話しました。
 次に、來田氏からは「オリンピックの現在、将来」というテーマでオリンピックに求められることは何かということが解説されました。 オリンピック憲章に記載されている「スポーツを通じた、あるいはスポーツによる教育を国境を越えて若者に提供し、人間らしさを高めることによって平和な社会を目指す」という内容を紹介し、オリンピックは世界の平和に向けた対話をするための場所として4年に1回の開催が位置付けられるべきであると語りました。また、オリンピック競技大会に出場したアスリート(オリンピアン)は、平和を担う理想的な人間のモデルになることが求められているのではないかと自身の意見を述べました。
 最後に「東京2020大会、パリ2024大会など一つひとつの大会ではなく、すべての大会を通じて私たちは何ができるかということを対話することが、オリンピック・ムーブメントだと考えています」と述べ、第一部が締めくくられました。

日本オリンピックミュージアム企画展スペシャルイベント「オリンピック・ムーブメントセミナー」を開催
スキー・ノルディック複合で1998年長野冬季オリンピックに出場した荻原次晴氏(写真:アフロスポーツ)
日本オリンピックミュージアム企画展スペシャルイベント「オリンピック・ムーブメントセミナー」を開催
水泳・競泳 で2008年北京オリンピック、2012年ロンドンオリンピックに出場した伊藤華英氏(写真:アフロスポーツ)

■第二部 JOCセッション「JOCオリンピック教室校外編」

 第二部では、JOCオリンピック教室校外編と題し、オリンピアンが、これまでのさまざまな経験を通して感じた「オリンピズム」や「オリンピックバリュー」について、水泳・競泳で2008年北京オリンピック、2012年ロンドンオリンピックに出場した伊藤華英氏、バスケットボールで1996年アトランタオリンピックに出場した岡里明美氏、スキー・ノルディック複合で1998年長野冬季オリンピックに出場した荻原次晴氏の3名によるトークセッションが行われました。
 はじめに、総合司会の小口貴久氏(リュージュ/2002年ソルトレークシティー・2006年トリノ・2010年バンクーバーの各冬季オリンピックに出場)から、JOCオリンピック教室について、全国の中学校2年生を対象にJOCが実施していること、2011年4月から2023年3月までにJOCパートナー都市を中心に日本全国413校で実施してきたことを紹介しました。
 そして、荻原氏からオリンピック教室がどのように行われているか紹介。また、自身が先生として、競技であるスキーヤーらしいものを子どもたちと一緒に体を動かして楽しめるようにしていると述べ、体育館で楽しめる方法や工夫している点を語りました。
 次に、オリンピック教室の座学で子どもたちへ教えている「エクセレンス(卓越)」「フレンドシップ(友情)」「リスペクト(敬意/尊敬)」の3つのオリンピックバリューについて、3名のオリンピアンがそれぞれの意見や体験談を交えて説明しました。中でもオリンピックバリューには「勝つこと」が含まれていないことに着目し、伊藤氏は「オリンピックは、他の大会と同じように自分の成績が出ることはもちろん大切ですが、ライバルに勝利をするためだけに目指す場所ではない」ということが大事だと述べました。 
 最後にそれぞれがセッションの感想を述べ、岡里氏は「私たちオリンピアンが学校に出向いて、オリンピックを身近に感じることも一つ。身近にやっていることをオリンピックバリューと照らし合わせて身近に感じてもらうという二つの方向性で、少しでもオリンピックに興味を持ってもらうことやオリンピックバリューを感じてもらうことを増やせていければと思います」と述べました。
 荻原氏は「世界一を決める大会は他にもいっぱいあります。その中でオリンピックは、このエクセレンス(卓越)・フレンドシップ(友情)・リスペクト(敬意/尊敬)。このオリンピックバリューを世界中の人に身近に考えてもらえるきっかけになればということを子どもたちに伝えてきました。強いアスリートというのはメダルを取った人じゃない。強いのは、オリンピックバリューをいつも大事に心の中に持っている人です。ですので、皆さんにとって学校や家族の中で強い人はどんな人だろうと考えるきっかけにオリンピック教室がなればいいなと思います」と述べました。
 伊藤氏は「生徒の皆さんに日頃の授業と違った感動や新たな気づきが生まれることをこのオリンピック教室を通して期待しております」と述べ、第二部が終了しました。

日本オリンピックミュージアム企画展スペシャルイベント「オリンピック・ムーブメントセミナー」を開催
バスケットボールで1996年アトランタオリンピックに出場した岡里明美氏(写真:アフロスポーツ)

■第三部 パネルディスカッション

 第一、二部を踏まえて、次世代を担う十代の若者に向けてオリンピック・ムーブメントをより理解してもらうためにはどうしていくべきかというテーマで、第一部に登壇した和田氏、來田氏、第二部に登壇した伊藤氏、岡里氏、荻原氏、総合司会の小口氏が参加。オリンピックや競技活動を通じての経験談を交えながら議論を深めました。
 はじめに、「若者にオリンピック・ムーブメントを知ってもらうためには」という題では、現在の課題として「オリンピック=メダルのイメージが強く、オリンピックバリューについてはほとんど知られていないこと」「2013年の東京2020大会招致決定後に学習指導要領の改定等が行われたが、教育する側がオリンピックの意義について理解できていないこと」「子どもたちに教える側としてアスリート自身もムーブメントについてしっかり理解していかないといけない」といった意見が出されました。
 次に「オリンピック・ムーブメントを推進していくため、日本オリンピックミュージアム(JOM)を活用してできること」という題ではJOM自体の認知を高めるためにSNS映えするスポットを用意して注目されるようにすること、ショップでメダルを再現したチョコなど、面白さのあるものを販売するなど、まずは一度足を運んでもらうことを目的とした施策が必要という意見が出されました。
 そして、「日本全国でオリンピック・ムーブメントを推進していくためにすべきこと」という題では、テーマを持たせたキャンペーンを実施すること、TEAM JAPANパートナーやJOCパートナー都市、競技団体など様々なステークホルダーと連携して同時多発的にキャンペーンを展開したり、それをオリンピアンが主体的にアクションする、などの意見が出されました。
 最後に、パネルディスカッションのまとめとして登壇者から感想が述べられ、來田氏から「日本オリンピックミュージアムがオリンピック・ムーブメント推進のために何をやっているのか市民に知らせる場所として動くことが大事です。例えばIOCが出した文書を日本語で紹介するとか、あるいは取り組みがどういう方向に向かっているのかということを紹介するなど、そういう場所としても使えるといいと思います」と述べました。
 和田氏から「いろいろな方にオリンピックはこういう世界だったんだなということを知ってほしい。そのためにこれからもオリンピアンの支えを継続していきたいと思います」と自身の思いを述べました。
 伊藤氏から「ディスカッションが重要だと改めて感じました。今後は拝聴されている方も参加できるような場所が必要なのかなと思いますが、とても時間がかかることだと思います。しかし、オリンピアンが引き継いでやるべきことだと思うので、みんなで話をする場所を作っていけたらと思います」と述べました。
 岡里氏から「今は現役の選手たちやオリンピアンも、競技だけではなく社会貢献などを意識しながら、スポーツしているように思います。私もまだ知識が足りないと思いましたし、オリンピック・ムーブメントを現役の選手たち、引退した選手たちがもっと深く掘り下げて知ることで、もっと伝えられることが多くなると実感したので、オリンピアンたちにも知るべき内容が多いことを感じた時間でした」と述べました。
 荻原氏から「オリンピズムは決して答えが出るわけではなく、常に考え続けることが大切だと感じました。オリンピックに対してポジティブな意見もあれば、逆の意見もあります。そういった現実をきちんと理解しておくことも、オリンピアンとしては必要だと思いました」と述べました。 
 最後に小口氏から「オリンピアンの一人として多くの方々に支えられて、オリンピックに出られたと思いますし、全力を尽くすことができたと思います。オリンピック・ムーブメントも同様に、一人ではなかなか広げることができません。皆様とともにオリンピック・ムーブメントを推進していければと思います」と述べてセミナーが締めくくられました。

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