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2023.04.06 選手強化

「令和4年度第3回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催

「令和4年度第3回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
高橋尚子JOCアントラージュ専門部会長

 日本オリンピック委員会(JOC)は3月18日、オンラインによるWebセミナー形式で「令和4年度第3回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催しました。
 このセミナーは、ジュニア期のトップアスリート(10歳~18歳)の保護者を対象に行われ、家庭で多くの時間を共有し、大きな影響力を持つと考えられる保護者が、ジュニアアスリートへの正しい関わり方、助言の仕方を学ぶことによって、親子がスポーツを通じて実りある人生を実現する可能性を高め、競技力の高いアスリートの育成を目指しています。
 はじめに、高橋尚子JOCアントラージュ専門部会長が挨拶し、本セミナーの主旨、目的を説明。「昨今のスポーツ界は若年層の活躍が目立っている。ジュニアアスリートに最も影響を与える存在は保護者だと答えるケースは非常に多い。著しく成長するジュニア期に子ども達が悩んだり、苦しんだりしている中、保護者の皆さんがそばで寄り添い、支える存在になっていただけるようなプログラムをご用意している。セミナーを受け、これからどのような保護者になっていきたいか、どのような保護者を目指すのかという意気込みを最後に聞いていきたい。是非、どんな答えを最後に出そうか考えながら受講いただきたい」と述べました。

「令和4年度第3回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
上田大介JOCアントラージュ専門部会員

■「保護者が知っておきたいSNSの危険性と有効性」について

 最初のプログラムは「保護者が知っておきたいSNSの危険性と有効性」と題し、上田大介JOCアントラージュ専門部会部会員が講義を行いました。
 まず、上田部会員は「ソーシャルメディアは夢につながる履歴書」とした上で、過去にSNSでの発信がもとになって不祥事に発展した事例を挙げました。そして、自分の価値と将来を守るために、ソーシャルメディアを正しく理解し、正しく向き合うことが求められていることを説明。「スマホには少なからず自分にとって不利益な情報が入っている。もしそんな情報が流出してしまったらどうするか」と問いかけ、SNSの使い方について注意喚起を促しました。
 そして、これからのSNSとの向き合い方として『今できる3つの見直し(過去の情報を見直す、つながりを見直す、パスワードを見直す)』と、『未来に向けた3つの良い習慣(危険な時間帯を意識する、送信直前にいったん冷静になる、常にファクトチェックする)』を紹介しました。
 最後に「SNSには怖い面もあるが、たくさんの人と繋がることができ、良い面もたくさんある。また、トップ選手たちはSNSを通じてスポーツの価値をたくさんの人に届けている。自分の価値と将来を守り、より良いキャリアを築くためにソーシャルメディアを正しく理解し、正しく向き合うための行動をお願いしたい」と述べました。
 講義の内容を受けて高橋部会長は「普段の生活の中で携帯の使い方やSNSの考え方についてお子さんと話し合うような時間をぜひ作っていただきたい」と呼びかけて最初のプログラムが終了しました。

「令和4年度第3回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
オリンピアンの荒木絵里香氏(バレーボール)
「令和4年度第3回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
JOCアントラージュ専門部会 杉田正明教授

■「オリンピズムについて」荒木絵里香氏が解説

 次のプログラムは「オリンピズムについて」。北京オリンピックから四大会連続でオリンピックに出場したバレーボール元日本代表の荒木絵里香氏が講義を行いました。
 はじめに、オリンピックのシンボルマークに込められた意味を説明し、国際オリンピック委員会(IOC)が目指すオリンピズム=オリンピック精神について解説。荒木氏がジュニア期に両親からかけてもらった言葉や経験をまじえて「エクセレンス(卓越)」「リスペクト(敬意/尊重)」「フレンドシップ(友情)」の3つのオリンピックバリューについて説明しました。
 最後に「私は『スポーツは人生を豊かにするものである』というのがスポーツの在り方だと考えている。オリンピックを目指す選手はもちろんだが、選手をサポートするすべての方がオリンピズムを理解し、努力する過程を大事にし、心身ともに調和のとれた生き方ができるようにすることが大切。私は競技者としての挑戦は終わったが、次の世代にオリンピズムを繋いでいけるような活動を行っていくと共に、これからも学び続けていきたい」と次世代のアスリートへオリンピズムを継承していくことを述べてこのプログラムを締めくくりました。

■「ジュニアアスリートのためのコンディショニングの最前線」について

 続いて、アントラージュ専門部会員である日本体育大学の杉田正明教授が「ジュニアアスリートのためのコンディショニングの最前線」と題した講義を行いました。
 前提として『体力』とは、筋力や持久力など体を使って起こす能力である『行動体力』と、外からの刺激・ストレスに対する抵抗力や適応力である『防衛体力』の2種類があり、「この行動体力と防衛体力が合わさって、スポーツパフォーマンスが発揮される」と説明。特に防衛体力に着目し、これを高めるためには規則正しい生活習慣や十分な睡眠、栄養バランスのとれた食事など日々の積み重ねが重要だということを述べた。
 次に、かつて医科学の面からコンディショニングをサポートしたマラソンの元日本記録保持者・高岡寿成さんの事例からリカバリーの重要性を説明し、日々の体温、睡眠時間、脈拍などを記録したシートなどを用いてコンディショニングの知識やスポーツパフォーマンスを構成する要素を紹介しました。この中で杉田教授は睡眠時間、入浴、練習後のクーリングなど、特にセルフケアの重要性について強調しました。
 本講義のまとめとして「コンディショニングとはアスリートが自分の身体の調子を知り、体調にあったトレーニングの実施、栄養摂取、休養のバランスを取り、怪我をしない身体作りを目指すこと。そのために規則正しい生活習慣、そして、身体の正しい使い方を身に着けることに他ならない」と総括しました。

「令和4年度第3回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
「アスリートと保護者・指導者の関係性」をテーマにしたトークセッションを実施
「令和4年度第3回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
オリンピアンの乙黒拓斗選手(レスリング)

■「アスリートと保護者・指導者の関係性」をテーマにトークセッション

 次に、本セミナーの最後のプログラムとして「アスリートと保護者・指導者の関係性」をテーマにしたトークセッションを実施。このトークセッションでは、JOCアントラージュ専門部会員の土屋裕睦教授がモデレーターを務め、東京2020大会 レスリング代表 乙黒拓斗選手、北京オリンピックから四大会連続出場のバレーボール元日本代表 荒木絵里香氏、競泳 元日本代表として北京オリンピック・ロンドンオリンピックに出場した伊藤華英氏がゲストで参加しました。
 このプログラムでは「競技を始めたころ」「達成感のあったこと」「心が折れかけた時」をテーマにトークセッションが行われ、三者三様の意見が交換されました。
 最初のテーマ「競技を始めたころ」では、競技を始めたきっかけを振り返りながらトークを展開。乙黒選手は家族、兄弟の影響で始め、兄と競争をする中で競技にのめり込んでいったとし、その後、親元を離れエリートアカデミーに入校後の家族とのコミュニケーションについて話しました。荒木氏は小学四年生の頃に身長が170cmに成長したことからバレーボールを始めたと話し、ジュニア期に両親の薦めで所属チームを変えたことを話したうえで、両親が子どもの成長に関する知識を持つことの必要性を説きました。伊藤氏は生まれつき身体が弱かったこともあり、生後6か月から母親と一緒にベビースイミングでプールに入り、中学時代の部活動で水泳を再開したと話し、ジュニア期の勉学と競技との両立について話しました。
 次に「達成感のあったこと」について質問が及ぶと、乙黒選手は東京2020大会で金メダルをとったことを挙げ、コロナ禍での競技との向き合い方について振り返りました。荒木氏は高校時代に全国優勝し、自分が設定した目標を初めて達成できた喜びを知った時と答え、伊藤氏はじっくり考えたうえで、競技をやめた時とし、競技人生を共に過ごしたコーチからかけてもらった言葉を振り返りました。
 続いて「心が折れかけた時」のエピソードでは、乙黒選手は高校3年生の頃、世界ジュニアの前に怪我を負い、コーチから励まされた思い出や家族から受けたサポートについて振り返り、荒木氏は初めて日本代表のキャプテンに命じられた時を挙げ、当時抱いた葛藤について話しました。伊藤氏は、周りの選手がオリンピックを目指す中で自分の目標が定まらず自分の気持ちとギャップが生じたジュニア期を振り返り、周囲から期待される中、アテネオリンピックに出場できなかった時に抱いた悔しさについて話しました。

「令和4年度第3回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
オリンピアンの荒木絵里香氏(バレーボール)
「令和4年度第3回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
オリンピアンの伊藤華英氏(競泳)

 最後に保護者やコーチに伝えたいこととして、乙黒選手は「両親が一緒に喜んでくれている姿を見るとモチベーションに繋がる。自分自身はコーチから褒められるともっとできるんじゃないかという気持ちになるので、たくさん褒めてあげてほしい」と話し、続いて荒木氏は「私は自分を認めてくれて、肯定してくれる家族の存在が支えになったので、そういう安心感を選手に対して与えてあげてほしい」と話しました。伊藤氏は「みんな、結果を出すために頑張ってはいるのだけど、今できることを考え、ベストを尽くした選手を褒めてあげてほしい」と話しました。
 すべてのプログラム終了後、セミナー参加者は「これからどのような・何ができる保護者を目指しますか?」という質問に対する答えや決意をコメント欄に記入。そして、保護者の声が画面を通じて紹介、共有されました。
 最後に高橋部会長がセミナー全体や保護者から寄せられたコメントを紹介し、ラップアップとして自身のジュニア期の両親と競技との関わり方を話しながら小出監督の指導や周りを支えてくれたスタッフとの思い出を振り返り、「私の初めての全国大会は都道府県対抗女子駅伝で高校二年生の頃だった。タイムは都道府県対抗女子駅伝の二区で47人中45番だったが、その大会に出続けてようやく8年目に区間賞をとることができた。一気に強くはならなかったが、少しずつ少しずつ頑張れば必ず夢に近づいてくると思う。まだまだ子どもの未来には大きな可能性は残されているので、是非一緒に支えて励ましあっていってほしい」と話し、セミナーを締めくくりました。

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