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2022.04.11 その他活動

持続可能な開発目標SDGsを主要テーマに「令和3年度JOC/NF国際フォーラム」を開催

持続可能な開発目標SDGsを主要テーマに「令和3年度JOC/NF国際フォーラム」を開催
山下泰裕JOC会長/IOC委員
持続可能な開発目標SDGsを主要テーマに「令和3年度JOC/NF国際フォーラム」を開催
横井裕JOC常務理事・国際委員長が開会の挨拶

 日本オリンピック委員会(JOC)は3月14日、オンラインで「令和3年度JOC/NF国際フォーラム」を開催しました。

 本フォーラムは、国際スポーツ界における日本の国際力及びプレゼンスの更なる向上を目指すために毎年開催しています。本年度はIOCが2021年に発表したオリンピック・アジェンダ2020+5で、「国連の持続可能な開発目標(SDGs)の重要な実現手段としてのスポーツの役割を強化する」と提言したことを受け、スポーツ界がより積極的に関与し、日本スポーツ界が果たすべき役割を検証し、関連活動の一助とすることをテーマに、本会役員・国際委員会委員、本会加盟団体専務理事・国際担当理事、令和 3年度国際人養成アカデミー受講者・修了生など、221名が参加しました。

 開催に先立ち、山下泰裕JOC会長/IOC委員より昨今のウクライナ情勢について「一刻も早く紛争が終わり、これ以上の被害がウクライナの人々に生じないことを願うばかりです。我々スポーツ界にはこの紛争を止める力はありませんが、ウクライナの人々に寄り添うことは出来ると思います。JOCは、このような状況下でも出来ることがないか、具体的に検討を重ねています。ご参加の皆様、各競技団体の皆様にもご協力頂き、是非一緒に行動していければと思います」と呼びかけました。

 次に、横井裕JOC常務理事・国際委員会委員長が開会の挨拶に立ち、「IOCは昨年発表した『オリンピック・アジェンダ2020+5』で国連の持続可能な開発目標(SDGs)の重要な実現手段としてスポーツの役割を強化すると提言し、スポーツ界がより積極的に関与することを推奨しています。SDGsが昨今のグローバルビジネスおよびスポーツ界では不可欠な考え方となることから、本フォーラムでは、国内外の実践例を共有し、日本スポーツ界がSDGsに積極的に関与、貢献するための一助となればと考えております。そして、その活動や取り組みが、結果として国際スポーツ界における日本のプレゼンス、影響力のさらなる向上となることを願っております」と述べ、本フォーラムの主旨や、”JOC Vison2064” や”JOC中期計画2022-2024”などの取り組みについて説明しました。

持続可能な開発目標SDGsを主要テーマに「令和3年度JOC/NF国際フォーラム」を開催
太田雄貴委員が基調講演

■基調講演:北京2022冬季オリンピックで感じたこと

 続いて、太田雄貴JOC国際委員会副委員長/IOC委員が、「北京2022冬季オリンピックで感じたこと」をテーマに基調講演を行いました。

 太田IOC委員はまず、開会式の会場演出についての感想やIOCが公表しているオリンピックのサマリーについて説明。今大会の特筆すべき点として、参加国・地域が増え、現在は91のNOCが参加していることや新種目が7種目加わったこと、中国総人口の約14億人のうち約3億人がウィンタースポーツに触れたことにも着目しました。さらに、北京2022大会の開催が決定してから7年間でスキーリゾート・スケートリンクが計2000箇所オープンされたことを説明し、「雪がほとんど降らない中国で7年間に1000箇所以上のスキー場がオープンする凄さは中国の経済発展と非常にマッチしていると思っています」と述べました。

 一方で、地元住民から反対運動がありながらも国立公園を開発し、延慶のアルペンスキー会場が建設されたことについて、今回のテーマであるSDGsとは真逆の対応であったことを指摘。「今後、先進国で同じことを行うと反対運動及び、スポーツのアンチを増やしていくことにつながりかねないと思います。スポーツは目立つ存在ですので、いかに自然に優しい形でアスリートたちが率先して環境負荷の少ない活動に努めていくということが、応援するファンの方々、市民の方々のSDGsへの意識を更に高めていくことにつながるのではないかと思っております」と述べました。

 最後に、太田IOC委員は、今大会を契機に生まれた約3億人のウィンタースポーツ愛好家たちをどのように日本に呼び込み、SDGsも踏まえた経済の発展に繋げていくかが重要だという見解を述べ、「決して指をくわえて見ているのではなく、ぜひ行動していきたいと思っています」と締めくくりました。

持続可能な開発目標SDGsを主要テーマに「令和3年度JOC/NF国際フォーラム」を開催
ボストンコンサルティンググループ 折茂美保Managing Director & Partnerが講演

■講演:「なぜ今SDGsなのか?何が自分にできるのか?」

 次に、ボストンコンサルティンググループの折茂美保が「なぜ今SDGsなのか?何が自分にできるのか?」というテーマで講演。現在、世界が直面している環境問題について紹介し、大気中のCO2濃度が1.5℃に届きつつあるところまで上昇していることを共有。「今後も上昇が続き、仮に5℃高くなってしまうと永久凍土層が融解してしまい住める地域が減ることはもちろん、閉じ込められている細菌・バクテリアなどが出てきてしまい、新型コロナウイルス感染症のようなものがもっと起きてしまうのではないかと言われています」と今後のリスクについて述べました。

 このような状況を踏まえて、日本におけるSDGsに関する消費者調査の結果を説明。SDGsに対する認知・興味は拡大されており、性・年代別でも全ての属性で認知率が80%を超えたことを紹介。また、認知拡大に伴って行動を変えた人の割合も徐々に増加してきていることが共有されました。

 続いて、企業がSDGsに取り組むメリットについて紹介し、「新しい市場、顧客を開拓できる」「自社の差別化ができる」「優秀な人材を惹きつけ、保持することができる」と説明。SDGsに取り組まないリスクとしては「サプライチェーン上にリスクを抱えてしまう」「事業継続が難しくなることがありえる」「SDGsに積極的に取り組む企業と比べ、競合優位性が図りづらくなる」という3点について事例を交えて述べました。また、SDGsをテーマとした具体的な活動として「国際的なスポーツ団体によるSDGsの取り組み」でUEFA、「企業によるSDGsの取り組み」で味の素グループ、「地域のスポーツ団体による取り組み」でJリーグの福島ユナイテッドの事例を紹介しました。

 最後に、「地球規模の課題となっており、大きな取組みでなければダメなのではないかと思う方もいらっしゃるかもしれません。ただ、小さな一歩からでも、一人ひとり、組織、企業それぞれができるところから継続的に取り組んでいくことが2030年のSDGs達成に向けて必要だと考えております。その重要な一つのピースというのがスポーツの力ではないかと思います」とまとめました。

持続可能な開発目標SDGsを主要テーマに「令和3年度JOC/NF国際フォーラム」を開催
左から中村英正JOC国際委員会委員/東京2020組織委員会ゲームズデリバリーオフィサー、パナソニック株式会社コーポレート戦略・技術部門 事業開発室 BTCイノベーション室 中村雄志室長
持続可能な開発目標SDGsを主要テーマに「令和3年度JOC/NF国際フォーラム」を開催
左から小谷実可子JOC常務理事/オリンピック・ムーブメント事業本部長、大塚眞一郎JOC国際委員会委員/日本トライアスロン連合専務理事

■パネルディスカッション:「スポーツを通じたSDGsの実践」

 次に、「スポーツを通じたSDGsの実践」をテーマにパネルディスカッションが行われました。中村英正JOC国際委員会委員/東京2020大会組織委員会ゲームズデリバリーオフィサーがモデレーターを務め、パネリストとしてパナソニック株式会社コーポレート戦略・技術部門 事業開発室 BTCイノベーション室 中村雄志室長、小谷実可子JOC常務理事/オリンピック・ムーブメント事業本部長、大塚眞一郎JOC国際委員会委員/日本トライアスロン連合専務理事が参加。それぞれテーマに沿った内容をもとに議論を深めました。

 はじめに中村雄志室長がパナソニックグループのSDGsへの取り組みについて「まち全体でより良いくらしを提供する『サスティナブル・スマートタウン』」「ガンバ大阪SDGsプロジェクト」「スポーツ、ホームタウンでの新しい取り組み」の3つの事例を紹介。そのなかでも、自身が参画している事例として、プロスポーツチームをハブとして地域全体に対して課題解決や価値提供をしていく取り組み「ホームタウンDX」について詳細を説明しました。このような取り組みについて中村さんは「パナソニックがいるからできるというわけではなく、その活動自体が打ち上げ花火のように終わらず、地域の企業に参画していただき継続できるように模索しています」と述べました。

 続いて、小谷常務理事が東京2020大会組織委員会のSDGsの取り組みについて説明。「Be better , together」という持続可能性コンセプトの元、5つの主要テーマを掲げて取組みが行われていたことについて「スポーツの大会というだけではなく、社会の発展に寄与出来るイベントだと思ったと同時に、これを東京2020大会で終わらすのではなく、自分なりに続けていかなければならない」と述べ、アスリートやJOC職員などと一緒にビーチクリーン活動を始めたことを報告。このような経験から、「アスリートの中でもSDGsの活動を行いたいと思っている人はすごく多いと思うし、誘えばみんなに響くと思います。それは義務だけではなく、トレーニングなどを通して身につけていく人間としての根本の感謝みたいなものが、自然とSDGsに関わりたいということに繋がっていくのではないかなと想像しています」と自身の思いを述べました。

 最後に大塚委員が2021世界トライアスロン・パラトライアスロンシリーズ横浜大会の取り組みを紹介。特筆すべき点として、障がいを持ったアスリートが86名参加し、年齢別では83歳から16歳、女性の最高齢は68歳と多様性あふれる大会であったことを強調。また、文化の取り組みの成果として水質改善についても言及。SDGsという言葉が現れた2016年よりも前から水質改善に着手し、事業を継続してきたことに対して「横浜はSDGsが始まる前から海を改善し、温暖化対策を始め、様々な事業を繰り広げて、2030年に繋げていこうとしています。これが小さいながらも継続するということの重要性としてぜひ関係者の皆様にわかっていただければと思います」と述べました。また、今後のビジョンについてSDGsと照らし合わせて紹介し、「こうしてみるとSDGsって難しくないな、普段やっていることの継続じゃないかということが判ってきます。地方自治体の方々には、このようなセグメントしたものを作り、わかりやすくしていくことが大事だと思います」とアドバイスを送りました。

 最後に、モデレーターの中村国際委員会委員から「企業の立場からSDGsについてNFやアスリートと組むとどの様な相乗効果が期待できるのか?」「アスリートにどの様なサポートがあるとSDGsに取り組みやすいのか?」という問いかけに対し、中村雄志室長は企業の観点から、大塚委員は地方自治体からの観点から、小谷常務理事はアスリートの観点からディスカッションが行われました。中村委員は総括として、「スポーツも社会の一員として、社会とコミュニケートをすることでNFも力強くなると思います。また、アスリート一人一人も競技能力を高めることも大事だと思いますが、社会の関わりを持つことでさらに強くなっていくのだと思います」と述べ、今後行われる競技大会について「具体的な大会のイメージをJOCの中で示し、その中でSDGsをどう考えていくのか、ということも取り組んでいきたいと思っております」とまとめました。

持続可能な開発目標SDGsを主要テーマに「令和3年度JOC/NF国際フォーラム」を開催
令和3年度JOC国際人養成アカデミー修了生を代表して日本卓球協会スポーツ医・科学委員会 通信委員の寺岡英晋さんに修了証が授与された
持続可能な開発目標SDGsを主要テーマに「令和3年度JOC/NF国際フォーラム」を開催
鈴木大地JOC国際委員会副委員長が閉会の挨拶

■JOC国際人養成アカデミー、修了式

 次に、令和3年度JOC国際人養成アカデミーの修了式が行われました。各NFから推薦を受けてアカデミーを受講し、本年度修了した20名を代表して、日本卓球協会スポーツ医・科学委員会 通信委員の寺岡英晋さんへ、大塚眞一郎スクールマスターから修了証が贈られました。授与後、寺岡英晋さんからは、アカデミーでの約4か月間の内容や学びが報告されました。

 すべてのプログラムが終了し、最後に閉会の挨拶として鈴木大地JOC国際委員会副委員長が登壇者とパネリストへの感謝を述べた後に各プログラムを振り返り、「SDGsに取り組まない競技は取り残されていくと危惧しています。出来るところから行い、スポーツ界の持つ行動力や発信力、動員力も活かして様々なSDGsに取り組んでいくべきと考えます」と述べ、「国際問題としてSDGsに取り組み、JOCとしてもさらなる存在感を示し、スポーツ界における役割を果たしていければ」と総括し、本年度の国際フォーラムを締めくくりました。

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